パパと呼ばないで

再婚した時、パパと呼ばないでくれと懇願した夫(←おとうさんと呼んで欲しい)を、娘(27)「おやじ」と呼ぶ。良かったのか?

カチッとパズルがハマった朝

2016年07月18日 | 本・マンガ・テレビ・映画
7月18日(月)海の日 晴れ

朝日新聞土曜日beはおもしろい。
『なやみのるつぼ』という相談コーナーでは回答者の答えの巧みさに唸る。
そんなことをわざわざ相談するなよっ!と思うようなくだらない内容にも「ををっ!そういう対応があったか!」と目からウロコ的回答に感心させられて自分の心の狭さを少し恥じたり。
『いわせてもらお』という小ネタの投稿欄は、可愛い子供のつぶやきや中年夫婦の丁々発止のやりとり、老夫婦のボケ会話に反抗期子供とのバトル等々、おもしろく拝見しておる。
一面使ってのパズル3種類、好きなのが必ず1種類はあるのでそれをやるのが休日の朝の恒例。
そんな中で、今一番のお気に入りは『作家の口福』というコラム。
三回か四回連続で作家が食べ物についての想い出を語る。
グルメぶる人がいて「チッ、つまんねーの!」と思ったり、「そこまであからさまにバカ舌披露しなくても・・・」という作家もいたり、文体が読みにくくて読むのを放棄したりもする。
そんな、ワタクシの中で好きと嫌いをジェットコースターのごと急上昇急降下するコラム、今、急上昇中。
先週から始まったのが「西川美和氏」
ワタクシ、彼女のことは存じ上げてない。
作家だっけ?映画の人?「ゆれる」って映画の人だっけ?どんな話?
頭の中にクエスチョンマークいっぱい浮かべながら読み始めた。
すごく好きだ。
内容も、文体もすごく好き。
久々に「この人の書いたものを読みたい!あるいは映画を見たい!」と思った。
そして、今週のコラムもすごく好き。
そうだ!目線がすごく優しいのだ。
来週図書館に行ったらこの人の本を探そう!
娘にも読ませたい!絶対好きだと思う。
と、寝ぼけ眼の娘に読ませる。
先週の話は、就活に関して娘と同調するところもあるので特に読ませたい!と思い、古新聞入れを引っ掻き回して探し出して読ませる。
娘「くーーーっ!わかるわかる。特にここ!『映画の仕事をしたいと話すと、会社の面接官にも友人にも苦笑された。同じ本を読み、同じ映画や写真や音楽に触れて来た友人が、いきなりJR!三菱商事!明治乳業!と現実感そのもののような会社に内定を決めてくる。自分だけが青臭さにしがみついているようで、バカみたいだともおもっていた。』ってとこ!!!」と絶叫する。
でも、そんな西川嬢に、バイト先の居酒屋の大将だけが、何も心配いらないよと言ってくれていた。
そして、実際、彼女は、不採用になった製作会社の面接で会った是枝監督に声をかけられるのだ。
我が娘と彼女を並べるのもおこがましいが、現実を見据えてキチンと就職するもよし、でも、夢をあきらめないで追い続けると何とかなるものだというのもここひと月くらいの間に密かに実感した母でもある。
秋になっても就活に身を入れない娘に業を煮やした母からドヤしつけられた我が娘は、「ぢつはあたしミニシアターをやりたいの」
母から「はぁ???何言ってるの?自分で事業をやりたいんだったらまずフツーに就職して資金を溜めなさい。
我が家には、出資してやるようなカネはないっ。
ママ達の時代、男だったら佐川急便で5年間、死に物狂いで働いて金貯めて、自分のやりたいことを始めるものだって言われてたよ。」と言われ、渋々就活再開し、
娘「金融で働けば、お金を溜めるテクニックとか憶えそうだよね!」と銀行を受けて・・・以下の経緯はコチラへと続く・・・
で、娘は寂れた、とある地方都市のとある映画館に就職が決まり、大慌てで免許合宿で運転免許を取得し、今、お引っ越し準備で大わらわ・・・のはずが、アッチで送別会、コッチで送別会、先日はなぜか猛暑の中ディズニーランドにまで行っておった・・・
母は手伝わないからねっ!荷造り!

違う違う!こういうことを書きたかったわけでなく・・・人生っておもしろい方向へと向かっていくものだなあとしみじみした話をしたかったのだ。
娘の働く映画館は、まちおこしの一角でもあるため、住む場所もなかなかおもしろいところを紹介していただけて、それも東京では考えられないくらいの破格値!
一人暮らしには異常といえるほどの広さ(庭付き二階建て)
更に、今の支配人さんはまちおこしのほうに力を入れたいので徐々に映画館は娘に託す方向へ話は進むらしく、
昨秋、母に「ミニシアターをやりたいの。」と夢のような話をぶっちゃけて、「もっと現実的に説明せよ!」と責める母に
「地方のミニシアターに修行に行って、そういうとこって大体が年寄りがやってるから・・・ごにょごにょ
後継者不足につけ込む作戦らしい・・・
ぢいさんをだまくらかして、乗っ取る気かい!そんなうまくいくかいな!と母を呆れさせたのであったが、
手段こそ違え、なんとなく夢には着実に近づけるような気がする。
娘「なんだかうまくいき過ぎてコワイっ!隣のおぢさんの雪下ろしの雪に埋もれて死なないようにしなきゃ!」とヘンな心配までする始末。

パズルがカチッとハマると言えば・・・
同じく土曜の紙面だったと思うが、数学オリンピックに出場した子が皆メダルを取ったという記事。
灘高、開成高、筑駒と、錚々たる校名が並ぶ中、都立武蔵高校のお子がおる。
都立びいきのワタクシの目を引かぬわけがない。
が、東京と言えど東のはずれに住む身、武蔵高校とは何ぞや?
西のほうでは国立高とか八王子東しか知らず、勝手に「数学だけ突出した子なのねきっと」と、サヴァン症候群的なものか?とすら、ちらっと頭をよぎったのであった。
ワタクシが、西川美和さんのことを熱く夫に語っていたら、検索好きの夫がどんどん検索し続け、しまいには是枝監督の経歴まで調べ上げ始め・・・
是枝監督が都立武蔵高校から早稲田にご進学されてたことを教えてくれる。
なんだ!フツーにすごい高校だったのね・・・と、ここでもカチッと脳内で音がいたしました・・・

今日の1枚は・・・
「作家の口福」ならぬ「n家の幸福」の源、焼肉。
クーポン握りしめてセール中の焼肉屋さんへ。
幸せぇ〜〜〜
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街結君と太郎君⑥

2016年07月16日 | 野望
「スマート」での勉強会は、見事に功を奏し、オレは7割の男に昇格した。
太郎が「オレって法学部志望やめて教育学部に変えようかな」などどほざいている。
確かに、この点数の変化は、太郎の、詐欺まがいの計画のおかげだが、
テストの点数が上がった直接の理由は、周囲の女子の目をシャットアウトする勢いでオレがひたすら勉強したというだけのことだ。
とはいえ、たかがテストの点数が上がったというだけなのに、「人間、やればできるもんだな」なんてことを考えたりもした。
ママ猿の機嫌もよく、「今度、太郎君をうちに連れてきてよ。
会ってみたいわ~」と、頼まれたりなんかもした。
しかし、誘ったところ、太郎の返事はいまひとつ乗り気のない感じだった。
「まちゆいんち、遠いんだろ?オレ、電車酔いするんだよなあ。」と、ホントなんだかウソなんだか、子供じみた理由でやんわり断られた。
そんな太郎だったくせに、ひょんなことからうちに来ることになる。

夏休み初日、その日はちょうどオレの両親の結婚記念日で、両親が朝からデートに出掛けるから
オレは「適当に何か食え!」と言われてて、でも、オレは一人で食べ物やに入るのが嫌だから弁当でも買おうと思っていたが
終業式の日に、太郎に聞いてみたのだった。
太郎は、食べ物屋の候補としてあげた「回転寿司」に異常に反応した。
「うちのかあちゃんもじいちゃんもばあちゃんも、ナマモノ食わないから、回転寿司って行かないんだよ。
スマートの常連の、ほら、カコイさんっているだろ、あの人に、ずいぶん前に一度連れて行ってもらったことがあるんだ、回転寿司に。
感動したよ、オレ、あまりに旨くて!
まちゆいんちの近くにも回転寿司あるのか?
ここらへん、ないだろ、回転寿司。いいなあ。
だったら、オレ、付き合うよ。電車酔いは、寿司のためなら耐えられると思う。」
そして、普通なら一回乗り換えで二時間くらいの道のりを、途中で数回降りて休憩しながらやっとたどりいた太郎を、オレは回転寿司にご案内した。
電車酔いしたすぐ後に、飯食えるのかと聞くと、とにかく乗り物から降りさえすればけろりと治るらしい。
電車だけダメなのかと聞くと、車もバスもダメ、飛行機はまだ乗ったことがないからわからんがおそらくダメだろう。
自転車やゴーカートは大丈夫だという。
二人で、ものすごい勢いで寿司の皿を積み上げながら、食べる食べる食べる。
太郎が、「これ、何?」
指差す先には、注文用のタッチパネル。
「回転寿司って進化してるんだなあ。」と言いながら、うに、いくら、中トロ、生タコをタッチタッチタッチ。
「まちゆいが食ってる、その肉みたいなのは何なんだ?」
「牛塩カルビ」と言いながら、次の皿を取ると、また太郎が「なんじゃそりゃ?」
「チャーシューねぎまみれ」
「まちゆい、さっきはサーモンばっかり食ってたよな。」
「いやいや、太郎さん、同じものではないのだよ。
最初に食ったのがノーマルなサーモン、次に炙りサーモンを食い、期間限定バジルチーズのせサーモンを食ったのだ。
もし、生サーモンが回ってきたら、それを〆にとっておく。」
太郎が、あきれ顔で「スシと言ったらマグロだろ?
そして、回転寿司なら手が出るうに、いくらを食うべきじゃないのか?
せいぜい妥協してウナギまでだろ。
なんで、酢飯にカルビなんだ?
エビアボカド?ここはカリフォルニアか?
スシを食えスシを!」と言いながらも
「いや、まてよ。ということは、刺身の食えないかーちゃんも全然オッケーだよな。
あとで、どこに店があるが調べてみよう。
なるべく近くにあればいいけどなあ。せめて電車で5駅。
そしたら、じいちゃんばあちゃんも連れてきて、梅しそキュウリ巻きとか、納豆巻きとか食ってもらって、
オレはスシをがんがん食う。
え?うどんもあるの?ケーキも?
そういえば、さっき、メロンが回ってたな。
すげーな。もうファミレスじゃん。いや、オレはファミレスより好きだ。」
大興奮である。
喜んでもらえたようで良かったよ。
だが、果たしてママ猿にもらった金で足りるかなあ。
やっと、皿を取る手が止まり、お茶を飲みながら
太郎が「実はさぁ、まちゆいに話したいことがあったんだよね、二つばかし」と
少し神妙な顔で言う。
夏休み初日の回転寿司やはどんどん混んできたので、じゃあ、うちに帰って話そうぜということで、店を出て、自転車に二人乗りして帰る。
なぜかオレが後ろの荷台だ。
太郎は、自分が運転しないと酔うと言い張る。
こうなると、単に三半規管が弱いということじゃなさそうだな。
うちに到着して、玄関の鍵を開けると、バタバタとママ猿が出てきた。
「え?なんでうちにいるの?おやじとデートじゃないの?」と驚くオレを無視して、
ママ猿が叫ぶ。
「えっ?あれ?ケンちゃん?ケンちゃんだよね。えーーーーっ、あーーーーっ、
大きくなったねえ~
ケンちゃんママ、お元気?」
オレが「何言ってるんだよ、こいつは太郎、オレがよく話してるだろ?
同じ高校の太郎だよ。」と言いながら、苦笑いして太郎の方を見ると、
太郎もオレを無視して
「ご無沙汰してます、まちゅママは全然おかわりなくて、いや、幼稚園の頃より
ますますお若くなったみたい。」
呆然としてるオレを玄関に置き去りにして、二人はリビングへと入っていく。
ママ猿が「ケンちゃん、すっごく大きくなったけど、顔は幼稚園の頃と変わんないわ。
特に、その眉毛。尻尾がくるんってなってるのよねえ~」
やっと靴を脱いでリビングに入ったオレを見て太郎が
「まちゆいは、オレのこと、全然気づいてないんですよ、幼稚園が一緒だったってこと。」
いや、だから、意味が分かりませんってば。
お前は太郎だろ。
ママ猿は、ケンちゃんだって言ってて、太郎は太郎で、昔ケンちゃんがママ猿を呼んでた時みたいに「まちゅママ」って呼んで・・・
っつーか、何で知ってんだよ、その呼び方。
つか、お前はだれなんだよ。
太郎が、いや、ケンちゃんが、いや、太郎が・・・と混乱してるオレにイスをすすめながら
「おれんち、母子家庭だって言ったろ?
幼稚園を卒園する時に、親が離婚したんだ。
そりゃもうどろっどろの離婚でさぁ。
母親が、オレの名前の健太郎の健の字を見るのも嫌だって。
オレのオヤジが健作って名前で、そこから一文字とって健太郎だったんだけどさ。
で、名字を自分の旧姓に戻して、それでも怒り治まらずで、オレの名前の健の字を取っ払って改名したんだ。
で、実家の近くのアパートに引っ越して、今に至るってわけ。
オレはさ、すぐわかったよ。入学式の時に、まちゆいのこと。
でも、お前、少し雰囲気変わったよな、幼稚園の時とは。
幼稚園の時のおまえって、もう、ヒーローだったもんな。
みんなお前のことが大好きで。」
オレは、テーブルを叩いて立ち上がり、勢い余ってイスは後ろに倒れた。
「おもしろがってたのかよ。こいつ、にぶいなあ~いつ気づくのかなあって。
なんか地味になったなあ。オレがこいつを変えてやるとでも思ってたのかよ。」
太郎は太郎で「おもしろがってなんかいないよ!
自分がニブちんで気付かなかったくせに、何怒ってんだよっ。
怒りたいのはこっちだよ。
まちゅママ!知ってます?
こいつ、わざと勉強もしないし、オシャレもしないし、目立たないように目立たないようにしてるんですよ。
やれば、何でもオレより出来るくせに、人生なめちゃってますよ。
好きでもない女の子と付き合って、でも、そんなこと女の子にはバレバレだから女の子もかわいそうですよ。」
何言ってんだ、こいつ。オレはもう、なんだかわからんがめちゃくちゃ腹が立って、
わぁわぁ好きなだけわめいてから自分の部屋へこもった。
だいぶ経ってから、玄関で太郎がママ猿に挨拶して帰っていくのが聞こえた。



街結君と太郎君①
街結君と太郎君②
街結君と太郎君③
街結君と太郎君④
街結君と太郎君⑤
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街結君と太郎君⑤

2016年07月15日 | 野望
高校男子とはいえ、今までが今までだったせいで、ママ猿は「遅かったわねえ~」と玄関に走ってお出迎え。
もう12時前なので、このまま寝たかったのだが、それはママ猿が許さない。
「どこで何を食べたの?
太郎君とどんなことしゃべったの?」
この人のなかでは、オレはいまだに小学生男児だ。
「勉強のやり方とか教えてもらった?もう少しあなたも成績を上げないと、行きたい大学には入れないわよ。」
だんだん矛先がヤバい方へ向かいそうになったので
「すごいんだよ、太郎は!一日8時間くらい勉強してるんだ。
オレも一緒に勉強してたらついついはかどっちゃって、こんなに遅くなったんだ。
期末まで太郎と一緒に勉強しようかなあと思ってるんだ。」と、少しずつ方向転換。
「太郎君のおうちで勉強会?ご飯はどうしたの?おうちの方、いらした?
あら、お礼のお電話差し上げなくて良かったかしら。って言っても、もうこんな時間だしねえ。」
太郎んちじゃないが、まあ、家みたいにくつろいでたし、「喫茶店で勉強した」なんていうとイコール不良に繋がる人だから、そのまま流す。
こういうところが、基本「田舎育ち」な人なのだ。
ま、ママ猿の実家あたりでは「喫茶店=夜はスナック」ってパターンだからね。
「太郎んち、母子家庭でさ、おかあさん昼も夜も働いてるんだって。
だから、会わなかった。ご飯は太郎が作ってくれたよ。」と、ホントの話と少しばかり創作した話をして、やっとお役御免となり部屋に戻る。
太郎から聞いたところによると、太郎の両親は太郎が小学校に上がる前に離婚して、
それ以来太郎は母親と二人暮らし。
と言っても、すぐ近くに母親の実家があり、小学生の頃はランドセルを背負ってばあちゃんちに帰り、飯食って、風呂入って、宿題して、テレビ見て、
仕事帰りの母親が迎えにきてアパートに帰るという生活パターンだったらしい。
中学生になったら、中学校とアパートとばあちゃんちの位置関係の問題もあり、
太郎は放課後まっすぐアパートに帰るようになった。
母親が帰ってくるまで、菓子パンをかじったり、おにぎりを握って食べたりしてたら
ある日、母親が太郎を喫茶スマートに連れて行った。
そして、マスターに
「この子がきたら、好きなものを食べさせてくれない?支払いはつけといて!」
マスターは大喜びで引き受け、太郎が行くとフルコースを作る勢いでいろんなものを食べさせてくれた。
太郎の、人見知りしないというか、人懐っこいところは今も昔も変わらず、といってもたかだか3、4年前の話だけど、
太郎はマスターや常連さんに可愛がられて、スマートに入り浸る。
「オレはじいちゃんばあちゃんとマスターに育てられたようなものだ」と言ってる。
かといって、母親と仲が悪いというわけでもなく、昼夜働いてる母親には、尊敬と感謝の気持ちを持ってるってのが話のあちこちから染みだしていた。
ただ、どこのうちも、母親っていうのは不思議な生き物で、太郎の母親も例外ではないようだった。
太郎が「母性ってのは、オレたちのばあちゃん世代くらいで消えたんじゃないかと思う。
今、オレとかあちゃんは、親子っていうより同志というか、いや、そんな重いものでもないな。
友達みたいなところがある。
オレとばあちゃんとの関係の方が親子を意識するっていうか、守られてるって感覚を持ちやすいっていうか。」
確かにその感覚はよくわかるなあ。
そのうち太郎は、毎晩晩ご飯をスマートで食べるようになり、宿題もカウンターでやり、
ナイターを見たり、常連さんとしゃべったりして過ごし、マスターの手伝いをして閉店まで過ごすようになった。
太郎の、オヤジギャクやエロ課長っぽい発言は、ここで培われたものらしい。
オレは、今まで知らなかった太郎の一面を知り、なんだかくすぐったいようなうれしいような気持ちになった。
何なんだ?これじゃまるで、付き合い始めたばっかのカップル、それも女子のほうじゃないか。
全くもって気持ち悪いぞ、オレ!
この勢いで行けば、今夜太郎の夢まで見ちゃうんじゃないか?

学校へ行くと、太郎が早速近寄ってきて
「おふくろさんのオッケー、出たか?」
期末試験まで、太郎と一緒に太郎んちで勉強するって話だ。
うなずくと、にやっと笑い、そこらの女子に向かって親指を立てる。
放課後、太郎と並んでスマートに向かう。
カランカランというドアベルが鳴り、一歩入ってびっくりだ。
満員。
それも女子高生で。
マスターがうれしそうにチョコレートパフェを作ってる。
太郎がにやにや笑いながら「大丈夫!勉強の邪魔はしないというのが条件だから。」
なんだかビミョーに店内のレイアウトまで変わっている。
隅っこのテーブルのみ空いていて、とりあえずそこに太郎と座る。
隅っこなのに、なぜか視線を感じるのはどういうことだ?
太郎が「オレは、バイトだから、まかないとしてタダ飯食ったりするのは当たり前だけどさ、
毎日ここで勉強して、コーヒーとタダ飯食わせてもらうのは、まちゆいの気が引けるだろ?
それで考えたんだ。
コーヒーチケットを作って学校で売って、客を増やす。」
意味がわかりません。
っつーか、オレ、昨日はマスターにゴチになったけど、これからはちゃんと金払うつもりなんだけど。
すると太郎が
「バイトもしてないくせに、毎日外食するなんて何様だよ。
ちりも積もれば山となる、毎日コーヒー代と夕食代で千円だとして、テストまで二週間、14000円だぜ。
おまえのこずかい、月いくらだよ。
そこで、マスターに交渉したんだよ。
客を増やすことで、まちゆいの飯代を免除してもらう。
そんなにたくさん客に来られても困るからチケット制にする。
そうすれば大体の客足のめどがつく。
今日は10枚売ったんだ。
10人くらいなら、常連さんに迷惑かけることもないし、マスターがばたばたすることもない。
と言っても、マスター、久々にみる女子高生にウキウキしちゃって、チョコパフェをサービスでつけたりしてるけどな。
採算合うんかなあ。
ま、それはいいとして、客が増えればマスターも喜ぶ。
女子はコーヒーの値段でパフェまで食えるから喜ぶ。
お前はタダ飯食えて喜ぶ。
な!すばらしいだろ?
オレ、法学部志望から経済学部に変えようかなあ。」
オレの疑問点を聞いてもらいたいんだけど・・・と、うっとり自分の計画を語る太郎の話の腰を折る。
「客が増えてマスターが喜ぶなら、別にいいんだけどさ、それでオレの飯代をちゃらにするってのは、
ちょっと話がずれてるんじゃないか?
オレだけいいとこ取りっていうか、オレ、何にもしてないのに。」
すると太郎が、「いやいや、まちゆい君には働いてもらっているのだよ。」と言ってテーブルに出したコーヒーチケットを見てびっくりである。
幼稚園のお店屋さんごっこレベルのちゃっちいぺらっぺらなチケットに
『街結君がいる喫茶店 スマート』と印刷されている。
ご丁寧にオレの写真入りだ。
いつの間に!と驚くと
「夕べ、夜なべして作ったんだよ、マスターんちのパソコンで。
写真は、3組の亜美ちゃんからメールしてもらったやつ。
亜美ちゃんは、おまえの隠し撮り歴が長いらしくて、いろんなバージョンを送ってくれたよ。
だから、彼女には今日、一枚チケットをサービスしといた。
ほら、あそこにいる。」と太郎は、奥のテーブル席の亜美ちゃんとやらに手を振る。
チョコパフェ食べながら手を振り返す亜美ちゃんのテーブルには、すげぇごっつい望遠レンズのついたカメラがのってる。
「突貫工事にしてはよく出来てるだろ?」
呆れて物も言えないオレを見て、「よしっ!事後承諾になるから、ちょっと気になってたんだけど、
まちゆいの許可も出たことだし、オレ、ちょっとチケットを増刷してくるわ。
お前は、ちゃんと勉強しろよ。
今度の期末で、お前を7割の男にするのがオレの目標なんだからな。」
オレは、外界をシャットアウトする勢いで、ひたすら勉強するしかなかった。


街結君と太郎君①
街結君と太郎君②
街結君と太郎君③
街結君と太郎君④
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才能

2016年07月14日 | 本・マンガ・テレビ・映画
7月14日(木)曇り

今朝の朝日新聞文化文芸面。
年に一度のお楽しみ『朝日歌壇 番外地』
12首載っていて、どれもなかなかおもしろくクスッとさせてもらえるが、特に好きな3首
*顔を貸せ! 妻の言葉に振向けば 余りしUVクリーム塗らる
*壁ドンを 何のことかと訊く夫 やってみたけど胸キュンとせず
*新人に やさしき態度で接すれば 「オネエですか」と質問さるる
毎週月曜日の朝日歌壇は、楽しみのひとつであり、ボランティアでNHK短歌という雑誌を朗読していることもあり、ちょいと短歌でもひねってみるかと思ったりする今日この頃。
ところが、いざやってみるとこれがなかなかむつかしい。
先日の夜中に浮かんだ歌をご披露しよう。
*目には目を 蚊には蚊取りを イビキには殺意を抱きし 丑三つ時
お粗末・・・
入選に漏れた中からの番外地ですらこの高レベル。
まだまだですな。精進いたします。

新聞と言えば、今掲載中の沢木耕太郎著『春に散る』を読んでいる。
新聞小説の、毎日少しずつ読むというのは、簡単なようで案外むつかしい。
朝バタバタした日に読み忘れたり、後で読まなきゃと思っててそのまま古紙回収に出してしまったり。
マメな夫は、自分の好きな作家のもの(宮部みゆき氏だの筒井康隆氏だの)は切り抜いて後生大事にコレクションしているが、
未だ読んだ気配はない。
ついでにいえば「ののちゃん」も、おもしろい日は切り抜いておられる。
この切り抜くポイントがビミョーにワタクシとはずれていて「え〜〜っ!?今日のイマイチだったのに!」というのを嬉々として切り抜かれるのを見ながら
笑いのセンスというのも人それぞれですなと思う妻。
それはおいといて「春に散る」の話。
アメリカの地からのスタートだったり、ボクシングが話の中心に置かれていくことだったりで、ちょっと読みづらそうだなという感じだったが、458回の今朝の分まで欠かすことなく読んでいる。
どういうものがハードボイルドなのかイマイチ理解していないが、ワタクシの中では初のハードボイルドというジャンルと思いながら読んでいる。
少し不安なのは、ここにきて、数少ない女性の登場人物の人となりに、不思議な力を持たせるというオカルト的要素まで盛り込んできたこと。
いや、もう十分にいろんなテーマあるでしょう、まだこれ以上風呂敷広げても大丈夫なのか?
ちゃんと着地できるのか?
と小心者読者はドキドキするのである。
と同時に、こんな小心者なワタクシに「書く」という才能はないなあと痛感するのである。
今月から、週末に小説を載せることにした。
数年前から書き留めていたものだ。
野望というカテゴリーでおわかりのように、これで一発作家デビューを!と思っていたくらい結構力を込めて書いた。
が・・・久し振りに読んだ「みをつくし料理帖」シリーズで、打ちのめされる。
おもしろ過ぎる。
伏線も見事だし、時代小説ゆえに下調べとかすごく大変そう。それらの上に綴られる人間たちの悲しみ喜び。
いやぁ〜泣いたり笑ったり感心したりしながら十巻読了し、自分の才能にがっくりと肩を落としたのであった。
でも、せっかく書いたものを捨てるのは忍びなく、「そうだ!ここに遊びに来てくれるヒマな人達(失礼です)なら読んでくれるかもしれん!」と掲載に踏み切った次第。
どうぞよろしくお願いします。

そうそう!才能でもう一つ。
プレバトって知ってます?
  1つのジャンルにつき事前に4-10人の芸能人が挑戦。
  出来上がったものを専門家が判定し、その内容によって「才能アリ」「凡人」
  「才能ナシ」と判定される。(ウィキペディアより)
時々、テレビつけたらやってて、おもしろくて見続けちゃうんだけど、特に好きなのが「俳句」
俳句の査定員の「夏井いつき先生」ってのが毒舌で、解説とかもおもしろいんだけど、先生が少し手を加えるとものすごく良くなるの。
さすが!と思うね。
月刊誌「NHK短歌」にも紙上添削教室ってのがあるんだけど、こちらは先生が月替わりで担当。
「えーーーっ!この添削でこの作品が台無しになったわ!」とか
「いや、先生!そういう意味で詠んだ歌じゃないと思うけど!」ということが多々ある。
その点、この夏井いつき先生の添削は、ワタクシ、とっても好きというかストーンと納得する。
先生が「よく勉強されてますね」と褒めることもあるのを聞きながら、自分には勉強が足りないのか?とも思ったり、いや、もうこの歳になったら最後は才能の有る無しかなあと思ったり。
をっ!今日は木曜日。
よる7時から「プレバト」です。
おもしろいから観てみて!(と言いながら、自分はいつも忘れるのよね〜)

今日の1枚は・・・
近所の駐車場にいた猫ちゃんたち。
我が家では「猫を見つけだす」才能は高く評価される。
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足うら美人おやすみサポーター

2016年07月13日 | 当選品&モニター&おタメし
7月12日(水)晴れ

今回はコチラのモニターです。
足うら美人おやすみサポーター
温むすび ファンサイトファンサイト参加中

モニター歴もすっかり長くなり、商品を見きわめる力がついたと自負いたしておるワタクシ。
そのワタクシが、「これは素晴しいっ!」と思った商品のトップ3に並べて良いと思っているのがコチラの『足うら美人』です。
履いて寝るだけで、次の朝、かかとつるっつるっですからね。
がっさがさだったワタクシのかかと、コレのおかげであっという間にとぅるんとぅるんになったのです。
ウソだとお思いならコチラをごらんあれ。
と、『勝手に宣伝部長』になってことあるごとに広報活動に勤しんでおりますが、
先日、我が娘が、「足の裏がかたくなったんだよね〜」とつぶやいておる。
何ですって!?
あなたには必要ないと思ってたわ。
灯台下暗し〜とはこのことねっっっ。
これをお履きなさいっっ。
と足うら美人をあげましたら翌朝「ホントにしっとりになるねっっっ!」
はっ!モニター報告用ブログに載せたいから足の裏の写真撮っていい?
まだまだ恥じらいのある乙女、速攻断られました・・・
よって証拠写真はありませんが、今年の夏、娘は堂々とかかとを出してサンダルで闊歩するでしょう。
めでたしめでたし。
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グリーンティ

2016年07月12日 | 当選品&モニター&おタメし
7月12日(火)晴れ

暑いっすね〜〜〜
参議院選挙も済み、自分のアウェー感を痛感(あれ?これって頭痛が痛いっていうようなもの?)
日本国民は全てのことを自民党に任せておけば大丈夫って思ってるってことなのね。
戦争始まろうが、原発事故起きようが、目先の経済のほうが大事ってことね。
と、腐りかけておりますが、唯一の救いが、我が故郷鹿児島の知事選の結果。
三反園氏が選ばれたことをワタクシはとても喜んでおります。
そして次は、息つく間もなく東京都知事選。
今朝、鳥越氏出馬を聞き、うわぁ〜そう来たかっっ!と衝撃。
3度目の正直で、今回は宇都宮さんに当選してほしいと思っていたが、こりゃまた一段と厳しいなあ〜
鳥越氏が都知事になられたとして、その敏腕ぶりは大いに期待できるとは思いつつ、ついついお体のことを心配してしまう。
そうそう!今朝笑ったのが、
妻「今度くらい宇都宮さんで良くない?」
夫「宇都宮さん、88だろ?任期中に90になるぜ」
妻「えーーーっ!そんなお年なの?そう見えないのにね。お若く見えるのね、88かぁ〜となると少し厳しいなあ〜うううううっ。じゃあ小池さんかぁ???」
と唸っていると朝のニュースの画面に宇都宮さん(69歳)と字幕。
妻「69歳じゃん!」
夫「あれ?すまんすまん。老眼が進んで88に見えた。」
妻「いや、何一つ合ってないから。」
夫「両方とも○がある」
妻「・・・・・」

梅雨が明けたのかなんなのか夏休み前だというのに猛暑続きの今日この頃。
選挙のせいで一段と暑ッ苦しい。
こんな時は一息入れましょう。
・・・ふーーっ、やっと本題に入るのですね(←玉露園さん心の声)
今回はコチラのモニターです。
玉露園さんの『グリーンティー』
玉露園ファンコミュニティファンサイト参加中

おおめに作って冷蔵庫で冷やして、いつでも飲めるようにしておきました。
カーーーッと頭に血が上ったら、冷たいグリーンティー飲んで落ち着きましょう。

ほんのり甘くておいしい。
色が綺麗!
今年の夏は猛暑になるとのこと。グリーンティーで乗り切るとしましょう。
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HAPPY BIRTHDAY TO ME

2016年07月10日 | おでかけ
7月10日(日)晴れ

本日めでたく52歳を迎えました。
おめでとーーーあたし!
と、のそのそ今朝起きてみると・・・夫はすでにおでかけ。
テーブルの上に、先日入手した『夜廻り猫』の表紙裏に作者深谷かおるさんのサイン。
発刊記念イベントとして、ほぼ日のお店『TOBICHI』で展覧会が開催(本日まで)
昨日、夫が出向き、妻が明日誕生日の旨を伝え、豪華なサインをいただいて来てくれた次第。
ありがとうーーー夫よ!

なぜ、妻は行かなかったかというと。。。
朝から3時頃まで仕事関係の講演会&勉強会だったのである。
そして夕方からは、同じ誕生日友たちとのお誕生会、名付けてルビー会の開催。
腰が痛いと家事を放棄している割には、夜四時間ぶっ続けでしゃべり倒して呑み続けて食べ続けたのであった。
夫は夫で、TOBICHIを出た後は、大学時代の友人達との呑み会。
羽目を外さない夫にしては珍しく午前様。
楽しい夜だったようで何より。

娘は娘でバイト先での最後のご奉公とばかりに働いておる。
あ、そうそう、無事に運転免許も取れたのである、
合宿恐るべし!
こんな短期間に取得した奴らが公道を走るのかと思うと少し怖い気もするが・・・
そんな娘からは「タニタのスケール」

ご飯のカロリーもはかれるらしい。
この腰痛がおさまったら、まぢダイエットします。
運動もします。
この腰痛も、太り過ぎが原因な気もするし。

話を戻して夕べのルビー会。
ボランティア仲間20人ほどのメンバーの中に、偶然にも7月10日生まれがワタクシの他に2人。
SさんとMさんとnの三人プラス、7月生まれのTさんも加わりルビーの会を結成したのが去年。
今回はTさんは都合がつかず、三人でのお誕生会。
Sさんはめでたく古稀!
Mさんはワタクシはちょうど一回りちがうので64歳になられた。
この年齢差を全く気にせず楽しく過ごせるということは、ワタクシの持論「人間40過ぎたら皆同じ」を裏付けるものである。
それにしても、Sさんのお若さには驚きを隠せない。
常々、おひいさまかっ!と言いたくなる言動もおもしろい。
お嬢様育ちが歳をとるとこうなるのねという見本のようなお方。
ひきかえMさんは、何でもそつなくこなす常識人で、ハープ演奏を趣味に持ち、三人のご子息の母上。
しゅっとしたスーパーレディ然とされてるが、しゃべると気取らず飾らずおもしろい方。
ワタクシとSさんが娘の話をするのを羨ましそうに聞き「娘が欲しくて三人も産んだのにみんな男!」
ご子息の話をする母とはなぜにこんなにおもしろいのであろうか。
Mさんのご主人は海外勤務が長く、時々彼女も出かけて行くという生活。
海外から帰ってみたら平日なのに息子が家にいて「どうしたの?会社は?」
ご子息「辞めた」
Mさん「えーーーーっ!!!」
という話や、
息子さんが大学受験の時、一校しか受からず
「浪人していいかなあ、ここじゃないんだ、オレ」っていうから「頑張んなさい!」と浪人させて・・・
翌年、またも前年と同じところしか受からず「きーーーーっ!何のための一年だったのっっ!!!」
となった話。
最近では、会社の飲み会で足を折り、何とか労災になったとか、おもしろい話がてんこ盛り。
35の長男から31の三男まで誰一人結婚してないという話。
すっかりハードルが低くなっているお母様は、うちの娘もターゲットに。
「いや、うち、これから就職するとこだから。」と逃げ腰のワタクシをものともせず「なんていう映画館?
息子を見に行かせるわ!」と鼻息荒い。

プレゼント交換は・・・
そうそう!SさんもMさんも猫好き。
Mさんは長寿の白猫を買っており、Mさんは長毛種のワガママ乱暴猫を看取ってからマンションに引っ越した。
よって、今年のワタクシからのプレゼントは「夜廻り猫」
おひいさまSさんからは、「那須で見つけたのぉ〜」と星座が浮かび上がるキャンドルグラス。
グルメMさんからは、彼女の故郷のフリカケ二種。
こういうのも、その人が表れてて楽しい。
おひいさまSさん曰く「古稀っていうのは恥ずかしいけど、バスも映画も病院も安くなって、歳をとるのも悪くないわって思ったりするわ。」
ニコニコ楽しく年を重ねるとこんな仕上がりになるのかしらと羨ましい。
見習って、ワタクシも穏やかに楽しく元気にこの一年を過ごすとします。
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街結君と太郎君④

2016年07月09日 | 野望
「今日、一緒に晩飯食わないか?」と突然太郎が言った。
結構うちでも太郎のことはママ猿に話していたので、会ったこともないくせに優秀な太郎への信頼度は高い。
ましてや「太郎と勉強してから帰るから、メシ要らない」なんてメールしたら「今夜はまちゆいの好きな○○だったのに・・・orz
さて○○に入るのは何でしょうか?」
と、ご機嫌な返事。
めんどくせーなと思いながらも、「ハンバーグ」と返信してから、太郎と校門を出る。
「正解!でも明日のお弁当に入れるから大丈夫。じっくり太郎君と勉強しておいで。」と、また絵文字満載のメールが届く。
無意識に駅の方へ歩こうとするオレに「こっちなんだ!」と駅とは反対の方へ歩き出す。
急な坂道を下りながら、小さなボロアパートの二階を指差し「ちなみにオレんちはここ!」
太郎んちからさらに5分くらい歩いたところにある喫茶店に入る。
喫茶「スマート」
「太郎んちって、学校にめっちゃくちゃ近いなあ。
あそこからだったら、8時半のチャイムが鳴ってから走っても間に合いそうだな。」とうらやましがるオレに、窓際の席を指差してから、カウンターにいるマスターのほうへ歩いていき何かしゃべっている。
アイツ、高校生の分際でここの常連なのか?
マスターは、いかにもマスターという感じ。年の頃なら50くらいか。
「イケメン君!コーヒーでいいかい?」と話しかけてくる。
「はい」
いつの間にか黒いエプロンをした太郎が「お待たせ致しました。」とコーヒーを2つ運んでくる。
状況が飲み込めず、キョトン顔のオレの前に座り、ノンキにコーヒーを飲んでいる。
いつも、学校が終わると同時に、太郎はここでバイトしているのだと言う。
太郎の母親とマスターが幼なじみで、そのツテらしいのだが、太郎によると、マスターは太郎の母親のことが好きで、どうやら母親からの心証を良くしたいがために太郎を雇ってくれてるのだとか。
幸いなことに、年がら年中閑古鳥が鳴いてる店なので、一番端のカウンター席で勉強して良いということになっている。
マスターは、ここらへんの地主さんで、マンションをいくつも持ってるから、喫茶店は儲け度外視の、趣味のようなものらしい。
だから、常連になるとコーヒー代も払わなくていいというウソかホントか分からない話や
「食べたい」ものを何でも作ってくれる話、
女たらしかと思いきや意外と一途で、太郎の母親ラブのことは常連さん周知の事実だとか、そんな話をしてるうちに、カレーのいい匂いが漂ってくる。
太郎が厨房から運んできたのはドライカレーだ。
上にはぷるんとした温泉卵がのっかってる。
マスターが「初顔君には、こういうのが無難かなと思ったんだけど、どうかな?
男子でカレーが嫌いなヤツっていないだろ?
目玉焼きは好き嫌いが別れるけど、温泉卵嫌いなヤツってのは、オレはお目にかかったことないからね。
ドライカレーにはナンのほうがいいなっていうなら、すぐ焼くけど、どう?」
「いや、ご飯でいただきます。」オレはもう待ちきれずに温泉卵を崩しながら答える。
結局、コーヒー飲んで、カレー食べて、プリンアラモードを食べて、巨人阪神戦を見終わってから「スマート」を出た。
太郎はいつも12時の閉店までいるらしい。
この間に、コーヒー飲みにきたお客は8人。
そのうち6人は常連らしく、カウンターでコーヒー飲んで、そのまま帰っていく。
よって、太郎はオレとテーブル席に座ったままだ。
間違って入ってしまった感じのカップルの時だけ、太郎は立ち上がってコーヒーを運んだり、レジに立ったりした。
今日は、オレとずっと喋ってたが、いつもはこの時間ずっと勉強してるらしいから、
そりゃ、9割の男にもなるよなあ、一日8時間も勉強すれば。
そんなことを思いながら、オレは二時間かけて家に帰った。


街結君と太郎君①
街結君と太郎君②
街結君と太郎君③
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街結君と太郎君③

2016年07月08日 | 野望
碁石場高校には、どう頑張ってもドアツードアで2時間はかかる。
よって、6時半に家を出て学校の正門で8時半ジャスト、ギリギリセーフである。
登下校だけで疲れ果ててしまい、部活に入るという気力を奮い立たせられないでいるうちに夏になった。
ダサイ眼鏡をかけ、きちんと制服を着ているにもかかわらず、またもオレは女子に目をつけられはじめ、
クラスの女子だけでなく、隣のクラス、上級生までもがのぞきにくるようになった。
中学時代のように『暗黙の密約』があるわけでもなく、積極的な女子がどんどん日替わりで告ってくる。
とりあえず彼女がいれば事態は治まるかもと思い、適当に付き合ったりもしたが、
「『まちゆい君と付き合った』というだけで満足だわ」という捨て台詞を吐いて彼女達は去っていった。
要するに、オレは、「おもしろくない男」なのだろう。
何かに夢中になることもなく、あっという間に一年が過ぎ、二年で太郎と同じクラスになった。

太郎は、いつも笑っている。
キラキラした目で、何か楽しいことがないか、いつも探してるような感じだ。
幼稚園児か、お前は?と言いたくなるほど、いつも全力で笑っている。
クラス全員、太郎のことを好きだ。もちろん先生たちも。
ポジティブという言葉はアイツのためにある。
太郎をポジティブというなら、オレはネガティブだな。
こんな考え方すること自体がネガティブと言われそうだが、もし、オレにこの顔がなかったら、
このクラスでのオレの存在価値はないかもしれない。
表立ったイジメとかはないクラスだが、それでもアニメオタクの川端やガリ勉の柏木とかは、少し浮いた存在になってる。
とはいえ、彼らには目指すものがあるから、浮いていようが孤独に見えようが、
本人達は一向に気にしてる風ではない。
それに比べてオレは、何かに熱中するでもなく、かといってフレンドリーにコミュニケーションをとるでもなく、
ただただ目立たないように目立たないようにひっそり息をしている。
そんなオレなのに、ただ、「名前で苦労してる」つながりだけで、太郎がオレに絡んでくるのが理解出来なかった。
わざわざ一番後ろの席からオレの席までやってきてはお笑いネタを披露して
オレと、オレの周りを爆笑させ、チャイムが鳴っても気づかずにふざけ続け、
教室に入ってきた先生から「また太郎か!さっさと席に着け。」と怒られ、頭かきかき席に戻る。
授業が終わるとまたオレの席にきては、今の授業の先生の物真似をして笑かす。
しまいには、オレに物真似を伝授しはじめ、嫌がるオレにむりやりモスキートの真似をさせる。
あんまりしつこいので、甲高いモスキートの声真似をしたら、太郎より周りの奴らのほうがウケてくれた。
あ、モスキートってのは、小さくて細くて『蚊』みたいな、リーダーの先生のあだな。
ちなみにグラマーの先生は、小さくて小太りで『蝿』みたいだからフライ。
もちろん太郎が名付け親だ。
あだ名のセンスはイマイチだと思うが、太郎の言うことはみんなすんなり受け入れる。
太郎って、そんなヤツだ。

ゴールデンウィークが終わり、中間テストも終わる頃には、オレと太郎はすっかり仲良くなっていた。
と言っても、太郎は忙しいヤツで、学校が終わると、疾風のように去っていく。
オレはオレで通学に二時間だから、さっさと帰路に着く。
よって、もっぱら学校内で、それも短い休み時間にしゃべるだけだったが、
オレは初めて親友と思えるヤツが出来たと感じていた。
もちろんそんな照れくさいことは口にしないが。
驚いたのは、中間テストの結果だ。
うちの高校は、テスト成績一覧表がない。
クラスで何位、学年で何位、なんて意味ないだろうというのが校長の考えらしい。
学校内で争ってもしょうがないだろう?
大学受験なんて、クラスや学年というレベルで考えるものではないんだから、ということらしい。
ママ猿なんて、「成績が悪いからって、一覧表を隠してるんじゃないでしょうねっ?」とまで疑っていたが、
本当にないのだ。
軽く、平均点を言うくらいである。
たまに校長の考えに賛同しかねてる先生が、最高点やら最低点やらを言うくらい。
だから、みんな、これほど太郎が優秀だということを知らないはずだ。
何気にテストの点数を聞いたオレが驚くほど、太郎は9割の男だった。
それも、おそらく10割理解してるのだろうが、おっちょこちょいが玉にきずで
漢字をミスってたり、英単語の綴り(それも中学生レベルの)をミスってたり、
数式は合ってるのに、単純な足し算ミスしてたりでのマイナスである。
いつ勉強してるんだ?いつもさっさと帰るけど、うちで勉強してるのか?と聞くと
「う~ん、勉強してると言えばしてる。けど、うちには帰ってない。」と変な返事。
「それより、オレが9割の男なら、まちゆいは5割の男だな。」と痛いところを突く。
オレはママ猿に「勉強して、いい大学に入る」と宣言したにもかかわらず、だらだら過ごしていた。
いい大学どころか、ふつうの大学からも拒否されかねない点数が並ぶ。


街結君と太郎君①
街結君と太郎君②
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明色スキンコンディショナー

2016年07月06日 | 当選品&モニター&おタメし
7月6日(水)晴れ
今回のモニターはコチラ。

明色スキンコンディショナーです。
明色化粧品(桃谷順天館グループ)ファンサイト参加中

スキンコンディショナーとは、いつ使うものか。
毛穴、テカリ、肌荒れ、お化粧崩れなどの肌トラブルを整える化粧水ってことで、プレ化粧水としても使えるとのこと。
早速洗顔後、パフに含ませ、使ってみます。
少し懐かし匂いがする。
母が言うところの『ふきとり化粧水』の匂い。
母世代の頃の基礎化粧品って、ものすごくいろんな種類の瓶があって、憧れでした。
幼女n「今何してるの?」
母「ふきとりよ」
幼女n「これは?」
母「収斂よ」
幼女n「???」
って会話しながら、母の使い終わったコットンを足になすり付けて匂いをクンクンしてました。
あ〜、あの、線路沿いのボロアパートの二階の部屋を思い出す。
一階には、小さな男の子二人のいる家族が住んでて、ワタクシはよく遊んであげてました。
大きな犬に追いかけられた時は、その子達を連れて滑り台に逃げたら、その犬がなんと滑り台に上がってきて、
きゃーーーっと滑り台をすべりながら三人で転がるように逃げて・・・

と、そんな思い出話はどうでもいいですね。
そんな、お陽様の下で遊んでた幼女ももうすぐ52歳、光陰矢の如し、少年老いやすく学成り難しですよ。
タイムトリップしたくなる懐かしい匂いに、今、毎朝癒されております。
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