尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

詩「おもちゃの神様」

2011年05月09日 00時25分46秒 | 新詩集
どんな夜だったか覚えていない

少年は魔法のような握りこぶしを開き
かすめた銀貨をとりだし自動販売機に差し入れた
知らない闇に吸いこまれていった
小さな光は遠慮なしに
事故のような大きな音をたてた
透明な地球がころがり出てきて
中にはおもちゃの神様がいた

掌(てのひら)の上で
それはいろんな色が塗ってあるので
神様は見たこともない芋虫に見えてくる

どんな夜だったか覚えていない

青年はピアノを弾ければ
どんなにこの世が楽しくなるだろうと思いながら
妹の新しいピアノの鍵盤の一つを押してみた
指はわずかに白い傾斜を滑り
知らない闇に落ちていった
なんの音階だったかは覚えていないが
確かにおもちゃの神様は
転がり出た見えない音符にいたのである

どんな夜だったか 覚えておくことのできない夜に
おもちゃの神様は出てくる

どんな夜だったか 覚えておくことのできない夜とは
こんな夜だと 答えれらない夜である



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