家

「家」



小さなときから
わたしは
わたしのことを
家だと思っていた

建物の一角に
不意に
雲の影や
渡り鳥が通り過ぎる
不思議な
空き部屋があった
晴天なのに稲光ったり
夜おそろしい恐竜が
吠えることがあったので
母にも内緒の部屋
だった

今では
わたしを家だと思った
あなたが
まん中で笑っている
ときどきは
吠えたり
光って見せたりね

宇宙人

「宇宙人」


地下鉄御堂筋線
の運転手も
バスの運転手も
ほんとうのところ
得体が知れない　
けれど
仕事は確かであるらしい
よって　
無事に帰宅すると
やっぱり　
得体のあまり知れない女が
湯をシュンシュン煮えたたせ
横目で待っていた
たぶん
毒の入っていないだろうお茶を
おいしく飲んで
二人
意味なく笑うのだ

地球と
その一日を