もう直ぐだ。俺は苦しみばかりと並んで歩いて来たが、それももう終る。今夜、俺は君を見るだろう。君の声を聞く。手に触れる。思い出す。そう、失われたもののすべてを、今夜取り戻すだろう。
もう直ぐだからね。もう五分だけ、休ませてくれ。それから行く。必ず今夜のうちに帰り着くからね。
梶は宵闇に音もなく舞い降りる雪のまにまに遥かな灯を眺めやって、幸福そうに幾度もほほえんだ。とうとう、さようならを云わずに済んだのだ。見果てぬ夢だったものが、そこにある。安らかに、瞬いて、待っている。あとは、体を休めて、元気そうに帰って行くだけである。美千子よ、君と俺の生活は、今夜からほんとうにはじまるだろう。
梶は、そこが柔かいしとねであるかのように、背を伸ばして切株の間に寝た。美千子が戸を開けて、狂喜するに違いないその瞬間の顔と、奥でパチパチとはぜているであろう暖かい火の他は、何も考えなかった。〔人間の条件のラストシーン)
ジンちゃんに見せてもらった。
高校時代、夏休みにむさぶるように、読みふけた思い出の本の映画だ。
あまりの感動に、読んだあと余韻を確かめたくて毎晩本を抱いて寝た。梶!梶!と・・・
戦争映画における重苦しい残虐なシーンばかりだが(ある意味プライベートライアンよりリアル)梶の虐げられた人間扱いされてない人たちに対する清冽なまでの真情が、全編に流れていて、思わず、頑張れ梶!と叫んでしまう。
そして、妻、美千子に対する純真な愛情と共にロマンを描き素晴らしい壮大なラブストリーになっている。
二巻の梶が戦地まで逢いに来てくれた美千子に「お願いがある、寒くて悪いけど窓の所に立って裸になってくれないか?この目に君の姿をしっかりと焼き付けておきたいんだ。」
も~梶!たまらん・・可哀想で・・・涙ポロポロ。鼻水だらだら・・
やはり、極限下で生きると言うことの厳しさと人間としての本質を考えさせられる映画ではある。
見てよかった。
高校生時代の、あの感動も思い出したし・・
☆☆☆☆☆です。
この前同時代の「ヒトラー最後の12日間」を見たばかりで、戦争による悲惨さを思い描いたばかり・・の見終わった後少ししんみりの私です。