「誇」-URAWA REDS-
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不思議なくらい落ち着いていて。
それなのに、なんだか胸が高鳴っていて。
国立への向かう道。
今日が特別な日だと、
2年前もその前もずっと、同じような光景だったことを思い出して。
ナビスコ杯決勝。
タイトルを手中に収めて、新しい時代を切り開きたい。

GK山岸
DF森脇・那須・槙野
MF平川・阿部勇樹・啓太・柏木・原口・宇賀神
FW興梠
リザーブ加藤・坪井・永田充・暢久・梅崎・関口・マルシオ
ここまで戦ってきた中で、
監督が最も信頼する選手たちで構成されたメンバー。
主力を5人欠く柏よりも優位なはず。
一発勝負。
いつも以上に集中して、戦わなければ。

「慎重だな」
カップ戦独特の手堅い立ち上がり。
リスクを負わず、丁寧にパスを選択する。
「向こうはカウンター狙いだな」
ブラジル人監督らしい、勝つためのサッカー。
「ウチはウチのやり方しか出来ないからな」
勝負に徹することが出来る相手が恨めしい。

阿部勇樹がGKからのボールをカット、
柏木から縦にパスが抜ける。
「オフサイドか…」
興梠が飛び出す、副審の旗が上がる。
「汚いな、10番」
手を出す、挑発する。
審判からの注意はない。
「こういうのでリズム崩さなきゃいいけど…」
しっかり裁いて欲しい、主審は扇谷氏。

右に展開する、左から刳る、中盤の底からチャンスを伺う。
「サイドが全然出て来ないんだよな」
崩せない浦和、一発を狙う柏。
「あれ、雨だ…」
青空が広がると思いこんでいた上空から、雫が落ちる。
「すぐに止むんじゃない?」
ピッチが濡れていた方がウチにとって有利なはず。
「丁度いいんだ、これで」
森脇が倒される。
「何なんだよ…」
30分、森脇に警告。
「逆だよ、そりゃないよ…」
じわりじわりと柏に流れが傾いてしまうのか。

原口が突っ掛ける、宇賀神が仕掛ける。
「柏木がイマイチかも…」
PAエリア内で勝負させてもらえない。
「前半はこのままでいい、しっかり守ろう」
アディショナルタイム1分。
右からクロスを入れられる。
「やっちまったか…」
90+2分、柏先制0-1。
「どっちも付いてなかったか…」
サイドも中央も、相手選手のマークを外す。
「勿体ない、勿体ないって…」

前半終了、浦和1-0柏。

「返せるよ、絶対に」
信じること、阿呆みたいに信じて戦うこと。
捲土重来を期すために、タイトルという切欠が欲しい。
「勝って浦和に還るんだ」
強い気持ちを、ピッチに届けよう。

槙野が上がる、クロスが入る。
「そうだ、そうだよ」
阿部勇樹のシュートはDFがブロック。
「引いて来たか、やっぱり」
10人で守る柏、口を突いて出そうになる雑言を胸に押し込む。
「破る チャンスは必ずある、焦らずに行こう」
止んだかと思えば激しく振り出す雨。
「帽子くらい持って来れば良かったかな」
雨に視界が遮られる、寒さは感じない。
「雨だよな、雨の国立だよな」
思い出の詰まった雨の国立、ウチが勝つはずなんだ。

柏木のFKに那須が合わせる。
「惜しい!」
シュートは枠の外。
「セットプレーも可能性あるぞ」
背の高い選手を揃える柏DF、
今のウチなら壁を破ることが出来る。
69分、平川out関口in。
「いよいよ勝負か」
リスクを負って浦和が勝負を懸ける。
原口が壁を突破する、スピードに乗る。
「あっ!」
阿部勇樹が突っ込む、足を伸ばす。
GKを越えたボールはクロスバーを掠めていく。
「ツキがないのか…」
絶好機を逸する浦和。

77分、啓太outマルシオin。
「仕方ない、もうそれしかないもんな」
柏木が1枚下がる、攻撃の層を厚くする。
「大宮みたいだな…」
自陣に籠る柏。
外国人選手が、GKが露骨に時間を稼ぐ。
「チクショウ、こんなサッカーに負けたくないんだ」
関口がライン際を駆ける、
何度も何度も左サイドからチャンスを演出する。

「危ない!」
攻め続ける、裏を取られる。
「足りない、戻れ!」
那須が追い付く、侵入を許さない。
「!」
山岸がストップする。

「打て、打て!」
原口が強引にシュートを放つ。
「まだだ、打て、打て!」
跳ね返ったボールを押し込む、ネットが揺れる。
「どうだ、どうなんだ!?」
副審の旗は上がらない。
「入った?どっちなの!?」
ベンチに駆けだす浦和イレブン。
「オフサイド…、じゃないかな」
主審と副審が協議する。
「やっぱりそうか…」
得点は認められない。
「もう1回、もう1回あるよ」
これ以上の決定機があるのか。
信じよう、信じなければ。

アディショナルタイム4分。
「追い付こう、延長に持ち込めば勝てるよ」
ボールをキープする柏、奪えない浦和。
「もう時間ないぞ、早く!」
放り込む、跳ね返される。
それじゃ決まらないのは分かってる、
分かっているけれど。
「早く、早く!」

無常の笛が鳴る。
試合終了、浦和0-1柏。
タイトル獲得ならず。
降り続く雨、号泣する原口、蹲る槙野。
「甘いのかな、ウチは」
もっともっと強くなれ、胸を張れ。

ACL、天皇杯、ナビスコ杯が終わった。
それでもまだ、僕らには
タイトルへの挑戦権があることに、幸せを感じよう。
残り4試合。
全てが決勝戦、懸けて戦おう。


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