「誇」-URAWA REDS-
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誰も諦めてなんかいない。
処分、契約更新。
1週間のインターバルの間に、クラブは揺れた。
首位との勝ち点差は1。
直接対決を残していない以上、
もう負ける訳にはいかない。

GK山岸
DF森脇・那須・槙野
MF平川・阿部勇樹・啓太・原口・柏木・宇賀神
FW興梠
リザーブ加藤・坪井・永田充・暢久・直輝・梅崎・関口
所謂“ベストメンバー”。
序列が決まってしまったり、
組織的な守備を構築しなかったりと、
期待した部分の成果が出ると、
弱点も気になりだしてしまう。
「暢久のために」
そんなことは思わない。

そろそろタイトルが欲しい。
それだけだ。

「気合入ってるなぁ」
果敢にプレスを掛ける浦和。
「良く動いてる、いいぞ」
この試合に懸ける意気込みを感じる。
柏木がボールに触れる、前を向く。
「今のうちに点取ろうよ」
川崎の前線が網を張る。
「そんなに追い掛けて90分持つのか?」
中2日の川崎、休養十分の浦和。

中村憲剛のCK。
「何でだよ…」
甘いマーク、安い失点。
12分、川崎先制0-1。
簡単に得点を許す悪い癖。
あの気合は、空回りだったのか。
ジェシがゴール裏を挑発する。
「チクショウ…」
あんな奴に負けたくない。
「じっくりやろう、そうするしかなんだから」
粘り強く、根気強く。
失いかけた声を絞り出す。
「原口、行け、行け!」
奪われても奪い返す、エリア内に入る。
「打て、打てる!」
シュートはGK正面。
「洋平なんだよな…」
乗らせたら手に負えないGK。
昔から洋平は、そうだった。

右へ大きく展開、ヒラがクロスを上げる。
左はウガと槙野がコンビネーションで崩す。
「我慢して、焦るなよ」
自分たちのサッカーを貫けば、チャンスは訪れるはず。
「カウンター狙いだもんな、あっちは」
無闇にラインを上げない、浦和のミスを誘う川崎。
「やっちったか…」
高い位置でボールを奪われる。
「足りてないぞ…」
振り回されるDF。
「ダメか…」
クロスバーに救われる。
「ツイてる、まだ大丈夫だ!」

前半終了、浦和0-1川崎。

「抑え切れきれないな」
レナト、大久保の突破を許す。
「外すな、しっかり」
2点差を追い付くほどの迫力は、今のウチにはない。
丁寧にパスを繋ぐ、相手の隙を伺う。
「焦るなよ、落ち着いて」
まずは追い付いてから、試合をリセットしてからが勝負か。

原口が左サイドを駆ける。
「どうする?中は足りてるか!?」
低いボールを入れる。
「どうだ!?」
57分、浦和同点1-1。
「さあ次だ、次!」
喜ぶヤツはいない、まだ追い付いただけなんだ。
「お前らが喜んでどうする…」
センターサークルに戻らず、喜びを分かち合う選手たち。
「甘い、甘いんだよ」
「行くぞ、ほら!」
57分、平川out関口in。
「畳み掛けろ、頼むぞ、関口」

左を崩される。
「マズい…」
59分、川崎勝ち越し1-2。
苦労して奪った得点が水泡と化す。
「何でなんだ…」
行く先は坂道ばかり、キツい。
「ほら、しっかりしろ!」
優勝なんて言葉は、まだ語ってはいけないのか。

60分、川崎4番に警告。
粗いプレーに悩まされていた浦和。
「当たり前だろ」
主審は吉田氏。
陽介がニアに入れる。
「惜しいっ!」
阿部勇樹のヘッドはクロスバーを掠めていく。
「これ決めないと、ヤバいのかな…」
ナビスコ杯決勝もそうだった。
もしかしたら、今度もそうなってしまうのか。

70分、宇賀神out梅崎in。
「アウト2枚、か」
仙台戦とは異なる役割を与えられる。
「いいのかな、それで」
前掛かりになった訳ではないのに、カウンターを喰らう。
「しっかり、戻れ!」
山岸が立ち憚る、追加点を許さない。
「勝ち点1でもいい、点取ろう!」
勝ち点3以内なら、逆転も有り得る。
「もっと動かないと」
中2日の相手を振り切れない。
「走って、足元じゃなくて」
もどかしい。

84分、森脇out直輝in。
「もうちょっと早く出してくれれば…」
阿部勇樹と柏木が1枚ずつ下がる。
時間がない、あと2点は苦しいか。
「引き分けでもいい、負けちゃ駄目なんだ」
萎えそうになるココロを奮い起こす、
「負けんな!」
自分自身に、選手たちに。

アディショナルタイム4分。
「少ないよ…」
露骨に時間を稼いでいたはずなのに。
45+1分、川崎追加点1-3。
「どうして…」
天を仰ぐ、悔しさと情けなさが去来する。
「もっと普通でいいのに…」
難しいパスを選択し、ボールを奪われる。

浦和1-3川崎。
崩れ落ちる柏木。
「もっとやれることがあったんじゃ…」
あの2文字が遠くなる。

冷たい風がスタジアムを抜ける。
「ACLだけは、何としても」
追い掛けても追い掛けても届かない。
実はまだ、熟していないのだろうか。



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