OSQZSS

オープンソース準天頂衛星(QZSS)受信機

MOMO3号機の飛行安全

2019-05-04 19:00:35 | ロケット
MOMO3号機の打ち上げ成功,おめでとうございます!
今回,高度100kmのカーマンラインを超え,宇宙に到達したわけですが,
この高度を計測したのが,MOMOに搭載されたFirefly GNSS受信機です.



これまでの大型ロケットの打ち上げでは,ロケットが計画通りの
コースを飛行しているのか監視する飛行安全業務のために,
専用の地上観測レーダを用いていました.

しかし,維持のためのコストが膨大なレーダ局を廃止して,
代わりにGPS/GNSSを利用するのが世界的な流れになっています.

また,小型ロケットを開発しているベンチャー企業が自前の
レーダ局を持つことも難しいため,ロケット搭載用GNSS受信機は
MOMOなどの小型ロケットを安全に飛行させるために必須の技術となります.

MOMOには,2台のFireflyが搭載されているようです.エンジンの動画や
写真に比べると,ほとんど情報のないMOMOのアビオニクスですが,

@katogomaさんのtwitterに1号機の写真が投稿されています.



Fireflyが提供するロケットの位置情報は,テレメトリとして地上局に
送られます.地上局では,この情報をもとに,「いまエンジンを停止した
ときにロケットが落下する位置」をリアルタイムで計算します.

この落下位置予測のことをIIP(Instantaneous Impact Point)と呼びます.
地上局では,このIIPが飛行安全区域内であることを常に監視しています.
IIPが飛行安全区域外に出るようなことがあれば,エンジンを緊急停止し,
強制的に安全区域内にロケットを落下させます.

Qiita: ロケットの瞬間落下点の計算(OpenVerne)

何事もなく,無事にエンジンの燃焼が終われば,観測ロケットであるMOMOは
自由落下になります.そうなれば,もう飛行経路を制御することはできませんので,
飛行安全の役目も終わりです.

しかし,地球周回の衛星打ち上げを目指すZEROでは,さらにペイロードを
希望する軌道に投入するために,最上段の誘導制御が必要になります.
当然,このときにもロケットの位置情報は必須となります.

MOMOの飛行安全に加えて,ZEROの誘導制御でもFirefly GNSS受信機が
活躍してくれることを期待しています.

【追記】アビオニクスの情報が少ないと書いたら,超電磁Pに叱られた.
トランジスタ技術2019年1月号を読もう!


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MOMO2のGPSデータ

2018-08-17 11:13:43 | ロケット
MOMO2号機のテレメトリがOpenMOMOで公開されています.

OpenMOMO: MOMO_TF2 / telemetry_csv / UHF

Firefly GNSS受信機の測位情報も含まれているので,プロットしてみました.
CSVファイルの測位情報はECEF座標系のため,測地系に変換し高度をプロットします.
高度の計算では,リフトオフまでの測位情報の平均値を基準点としています.

(クリックで拡大)

冗長系として3台の受信機を搭載しているのでしょうか?
それぞれ異なる測位結果ですが,傾向は一致しています.

リフトオフ前,射点で静止しているときも,高度が緩やかに変動しています.
これは主に地表やランチャなどからのマルチパスの影響かと思われます.
また,Fireflyは高加速度での信号追尾のために,追尾ループの帯域を
広くしています.そのため,測位結果のノイズは大きくなる傾向があります.

リフトオフ後,15mほど上昇してから落下している様子が捉えられています.
高度の基準は,射点で直立した状態でのフェアリング部に搭載されたFireflyの位置です.
落下後のフェアリング部は地表まで落ちるため,高度がマイナスの値を示しています.
MOMO2号機の全長が10mですので,落下後の高度が-10m程度なのは妥当な値です.

MOMO2号機のトラブルは残念でしたが,Firelyもテレメトリシステムも
墜落炎上の直前まで正常に動作していたようです.

MOMO3号機では,Fireflyが高度100kmの到達を知らせてくれることを期待しています.

【追記】ささやかながら3号機の支援.

CAMPFIRE: 続ける。宇宙への挑戦。みんなの力でMOMO3号機を飛ばそう!

【追記2】水平方向の測位結果もプロット.落下時は北西方向に倒れ込んでいる?

(クリックで拡大)

【追記3】墜落後の写真を見つけた.



スカイヒルズや工場が写っていないし,影が落ちる方向から考えると,
ランチャは東向き?そうであれば,ロケットが倒れ込んだ方向も
測位結果と一致する.
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飛行安全用航法センサ

2017-11-02 08:02:32 | ロケット
なかなか情報が出てこないJAXAの新しい飛行安全用航法システムの
RINA(Radio and Inertial NAvigation)ですが,先日開催された
第61回宇宙科学技術連合講演会で,いくつかの発表がありました.

2C01 飛行安全用航法センサの実用化と新しい飛行安全管制システム技術の実用化
2C02 飛行安全用航法センサ(RINA)のロケット搭載飛行実証の結果報告
2C03 飛行安全用航法センサ(RINA)の複合航法機能とその効果

RINAはこれまでにH-IIA 29号機,H-IIB 6号機,イプシロン2号機の3機で
飛行検証実験が行われ,実運用に適応可能であることが確認されたようです.

今年12月に打ち上げ予定のH-IIAF 37号機以降は,RINAによる
実運用が開始され,これまでのレーダ局は順次廃止となります.
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MOMOのテレメトリ

2017-09-02 10:39:05 | ロケット
MOMOのテレメトリが公開されている.

GitHub: istellartech / OpenMOMO

2台搭載されたfireflyも,問題なく機能していたようです.
お役に立ててなにより.

ただし,バイナリ出力はサポート外なので,
加速中の速度情報は,信用しないでください.

広帯域な2次のPLLで搬送波追尾をしているため,
加速度に応じて速度に定常偏差が出てしまいます.
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MOMOのアビオニクス

2017-08-06 08:47:31 | ロケット
MOMOのエンジンや外観の写真は沢山あるけれど,
搭載されているアビオニクスもぜひ見たい.

Twitterで漁ってみたけれど,これとかこれくらい?

Firefly,2台積んでるのね.
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HackRF in Space

2017-04-15 10:29:41 | ロケット
Copenhagen Suborbitalsのブログを眺めていたら,ロケットに搭載される
ビデオ画像のダウンリンクに,HackRFを使っていた.

Copenhagen Suborbitals: Current affairs The onboard video on Nexø II

どこかで目にした名前だなと思ったら,@cseteさんだ.
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ミニモモ

2016-07-30 09:19:52 | ロケット
夏はロケット.久しぶりにモデルロケットで遊ぶ.



モデルロケットに貼るとモモになるステッカーが
オフィシャルグッズで欲しい.
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モモ

2016-07-27 18:44:52 | ロケット
サイン本が復活していたので,遅ればせながらポチる.

CAMPFIRE: みんなの力で宇宙にロケットを飛ばそう!

firefly GNSS受信機を搭載していただけるので,打ち上げが楽しみ.
フライトログを眺めながらニヤニヤしたい.

発射ボタンは買えないけれど,GNSS受信機とシミュレータで
サポートさせていただきます.

【追記】宇宙研の観測ロケットに搭載したfireflyは,アンテナやフィルタの
関係でGPSしか受信していない.H-IIBロケットに搭載されている受信機も
多周波対応だけど,GPSのみのような?そうなると,地味にモモのフライトが,
日本初のGNSS受信機によるロケットの測位になるのか?QZSSも受信できるよ!
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観測ロケットとfirefly

2016-07-01 07:31:16 | ロケット
宇宙研はfirefly GNSS受信機の大口ユーザだったりします.
これまでも,観測ロケットやミッションペイロードに搭載していただいていますが,
宇宙研から特にアナウンスはなく,こちらとしても公にすることは控えていました.

ところが,ペーパー出てるじゃないですか!

田中他,S520-30号機用 GPS受信システムの開発と飛翔結果
永田他,小型飛翔体実験におけるイリジウム衛星通信の活用とデータ配信システムの開発
山田他,ISSからの放出衛星(EGG)の搭載機器の動作確認及び運用確認試験(B-EGG)の報告

しかも去年だよ.全然知らなかった.

S520-30号機での飛翔結果では,真空試験,温度試験,振動試験,衝撃試験
などの環境試験にすべてパスしていると報告されています.実フライトでの
測位結果も,時折可視衛星数が低下して測位できなくっているものの,
加速度,高度に関係なく,ほぼ全パスで位置情報が得られています.

しかし,スピンしているとはいえ,衛星数が少ないような?
fireflyはGPS+GLONASSのGNSS受信機なので,もう少し可視衛星が多くても
良い気がします.GPSのみのモードでフライトさせたのかな?

いずれにせよ,これでシミュレータの結果だけではなく,高度300kmを超える
ロケットでのフライトレコードありと,堂々と宣伝できます.

【追記】アンテナについては,こちら.

川原他,GPS/イリジウム用コンフォーマル・コンパクトアンテナの開発

GPS L1のみで,GLONASSは受信できないみたい.
S520-30号機のGPS受信システムの構成図をみるとBPFも入っている.
可視衛星数が少ないのは,GPS信号しか受信していないからだろう.
折角のGNSS受信機なのに,もったいない.
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SS-520の軌道でfireflyを試す

2016-06-21 12:58:56 | ロケット
OpenTsiolkovskyでSS-520観測ロケット4号機の予測軌道が生成できたので,
これからGPS信号シミュレータ用のモーションファイルをつくります.

OpenTsiolkovskyの出力は,各段の軌道に分かれていますが,
全行程をシミュレーションできるよう,1段目から3段目までの軌道を
分離時間ごとに繋げます.

さらに,射点でGPS信号が補足できるよう,発射前の1分間は
初期位置に留まっていることにします.

この予測軌道をss520-4.csvというuser motion fileとして,
リアルタイム版のGPS信号シミュレータであるbladeGPSに入力します.

github.com / osqzss / bladeGPS

gps-sdr-simは,SDRデバイスに入力するI/Q信号のサンプリングデータが
巨大になり,長時間のシミュレーションには向いていませんでした.
しかし,bladeGPSでは,user motion fileの位置情報から,リアルタイムで
I/Q信号を計算するため,データ量を気にすることなく,長時間の連続した
シミュレーションが可能です.

シミュレータから出力されるGPS信号は,firefly GNSS受信機で受信します.



予測軌道の加速度をみてみると,3段目が20Gを超える高ダイナミクス.

 (クリックで拡大)

しかし,fireflyは,ロケット搭載も考慮して,最大25Gの加速度でも
信号を追尾できるように設計しています.シミュレーションの結果も,
打ち上げから一度も信号を失うことなく,測位できています.

 (クリックで拡大)

測位誤差をみてみると,大きな加速度の変化に関係なく,測位精度は
5m以下を維持しています.

 (クリックで拡大)

bladeGPSもfireflyも,控えめに言って最高だ!
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