アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

「うその中にほんとを探せ」…認知症に、ほんとはあるか…

2013年04月07日 | Weblog
 浅田次郎さんは、「小説家はうそつきだ」と。フィクションを「うそ」と表現しているわけで、生活のためのうそですね。浅田さんには、どんどんうそをついて頂きたい。いいうそですから。

 企業や電力事業者のうそ…これは、止めていただきたい。「うそをつけなければ、政治家と弁護士にはなれない」こういうことを声高に言う、某党代表。どうゆうことだ!国民を騙してはいけません。悪いうそはダメ。
 マスメディアの「誤報」?これもいわば「うそ」ですね。謝罪すればいいというものではない。当然、悪いうそです。
 
 いいうそなのか、悪いうそなのか…我が家で介護している88歳の認知症の老女のうそは…
 「薬を飲んでね」
 「もう、飲んだ!」
 薬は、テーブルの上に置いたまま。飲んでやしない。簡単にすぐバレルうそをつく。そして、「のんでないでしょー!」と、うそを責めると、「ウルセエー!」と、大声で反撃してくる。88年も生きているので、口喧嘩の強いこと強いこと。「要介護4」とは、とても思えない。自分の名前が分からない、オムツに失禁し放題なのに、こういう時だけは会話に不自然さがない。もっとも、責めなければ反撃はなく普通の認知症の「暴言老女」のままなんですけどね。人の尊厳を大切にしたいからこそ、責めることもあるのですが…。自宅介護で一番難しいのがこれです。

 「(トイレから出てきたので)手を洗ってね」
 「洗った!」
 「洗ってないでしょ!」
 「洗ったってば!うそこいて、オレ(老女が興奮すると、1人称は、オレ)をいじめるのか!うそばかりこきやがって!」(注:うそをこく=うそを言う)
 全く洗っていないのに、内に顧みて反省することがない。それが認知症というものなのでしょうがぁ…。

 老女の場合、「自分のクビを締めるうそ(放置しておけば死ぬ)」ですから、止めてもらいたい。しかし、「要介護4」という高度な認知症ですから、「止めて」と、言っても止めてもらえません。

 「うそ」…その場しのぎや悪意のうそ(我が家の老女)。相手を思ってのうそ(このうその場合、陰に感動がありますよ)。本人も気づかぬうそ。楽しいうそだってある。うそも方便。きっとコミュニケーション手段なのだろう…。

あの谷川俊太郎さんも、認知症のうそにまでは言及していません。「うそとほんと」という俊太郎さんの詩がある…

 うそとほんとはよく似てる
 ほんとはうそによく似てる
 うそとほんとは双生児

 ほんとはうそとよくまざる
 うそとほんとは化合物

 うその中にうそを探すな
 ほんとの中にうそを探せ
 ほんとの中にほんとを探すな
 うその中にほんとを探せ

 認知症の「うそ」ってなんなんだろう?