人だすけ、世だすけ、けんすけのブログ

愛知13区(安城市・刈谷市・碧南市、知立市、高浜市)
衆議院議員 おおにし健介

事故調問題と医療

2008年02月04日 | 政治
「日本の医療は崩壊の瀬戸際にある!」そんな危惧の声が医療現場から上がっています。更生病院や刈谷総合病院といった中核病院が機能している愛知13区は他の地域のように産科や小児科の医師不足とは無縁かといえば、患者がこれらの病院に集中することで既に実態はいつパンクするか分からない状態であるとの悲鳴の声が聞こえてきています。

全国各地で起こっている産科や小児科の医師不足には、さまざまな理由がありますが、その一つは、訴訟リスクです。民事訴訟なら保険でリスクを回避することも可能です。しかし、刑事責任を問われるということになれば、リスクの高い患者はどこにも受け入れてもらえない、リスクの高い産科の医師にはなり手がないという状況にますます拍車がかかってしまうことにもなりかねません。先日、私が話したある医師は「自分なら何千万報酬を支払うからと言われても産科はやりたくない」とはっきりと言っていました。

現在、厚生労働省では、医療事故調査委員会を設置するための法案の作成が進められています。その背景には、医療事故の被害者から、病院は「隠す、ごまかす、逃げる」という根強い不満があったことも事実です。その点、私は、第三者機関を設置することについては理解します。ただ、問題はその中身です。

「医師は刑事免責にせよ」とまで言うとなかなか一般の理解は得られないかもしれませんが、医療行為には微妙な事例が多数あることも否定できません。当たり前ですが、最初から「殺してやろう」とメスを入れる医師はいないはずです。また、意欲があって、腕のある医師であればあるほど難しいリスクの高い施術をします。放っておけば命に危険があるような場合に、リスクを冒した医師が責任を問われてしまうのも理不尽だと思います。

現在、検討が進められている案では、罰則を伴う届け出義務が医師に課せられていること、さらには、事故調の報告書が刑事処分や行政処分に使われるという内容になっています。しかし、諸外国の事例を見ても調査内容は不利益処分に用いないというのが国際的常識であるとの意見もあり、医療現場サイドからは「医師の責任追及のためのしくみだ!」と不信の声が上がっています。

事故の届け出が自らの不利益処分につながるという仕組みでは、処分を恐れて、かえって隠蔽や虚偽の報告が行われる可能性もあります。
いずれにしろ、現場の医師の声を無視する形で制度を作っても、医療の現場の混乱を招くだけで、結局は患者の利益にもつながらないと思います。

厚生労働省の役人や自民党議員のこの問題に関する主張を見ると、「そんなに事故調が嫌なら、医師法21条を強化するしかないですけど、それでもいいんですか?」と脅しをかけているようにも聞こえます。患者サイド、医師サイド双方の言い分をよく聴いた上で相互の不信の壁を取り払い、医療全体がよい方向に向かっていくものでなければ新たな仕組みを創る意味はないはずです。崩壊寸前と言われる医療現場の将来に関わる重要な問題だと思います。政府にはもっと謙虚になって関係者の声に耳を傾けてほしいと思います。