なあ~んだ、です。
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山の彼方の空遠く幸い住むと人の言う。カール・プッセの詩が想起されます。
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空の遠くにまで登っていかなくても、山の彼方まで尋ねて行かなくともよかった。80歳のいまになって、そんな簡単な事実に出会っています。
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いま、ここで、このままで、特別なことなどなんにも身につけなくてないでも、結局のところ、凡愚のわたしでよかったのでした。なあ~んだ、です。
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遠回りをして来ました。偉くならなくてもよかったんです。大富豪にならなくたってよかったんです。秀才逸材にならなくてもよかったんです。無才無力でよかったんです。
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庭の片隅に、自生の野スミレの花が群生して咲いています。青紫色を輝かせています。わたしはそこに来て眺めています。それを美しく眺めています。
それだけで、わたしは野スミレの明るさを我が明るさにしています。