戦争を仕掛けたロシアの正義は、対戦国のウクライナでは正義にならない。A国の正義こそが、B国ではそのまま不正義なのだ。
反戦のウクライナの正義も、侵略するロシアでは正義として受け止められない。相手国の正義こそが非難の対象になる。己の立ち位置によって、正義が中身を変える。
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戦争当事国の人だけがこの矛盾を抱えているわけではない。社会生活を送っているわれわれの誰もが、この矛盾に翻弄されている。
我の正義が、彼もしくは彼女の正義と一致しているわけではないからだ。それでも正義家は、正義家を維持せんとして、己の掲げた正義を声高に主張し、押し通す。
我を是とし、他を非とする。我にも同じ不正義がありながら、他の不正義だけが、唯一の不正義になってしまう。
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恐ろしい。恐ろしいが、やはり正義を掲げていないと生きて行けないところがある。己独自の個人主義的正義なのに、それでもそれがないと腑抜けになってしまう。恐ろしい。
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アメリカの新大統領は、ロシアとウクライナの戦争を1日で止めさせると豪語している。世界中がそれを望んでいるだろう。マジシャントランプ氏はどんなマジックを使うのだろう。両国のそれぞれの正義を棚上げにさせるのだろうか。