得た、と思っていても、死ぬときにはそれも手放さねばならない。
だったら?
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だったら、得てないことに等しい。等しいのではないか?
それとも、どっかに貯蓄する銀行でもあるのかしらん?
人生であなたが得たものはなんでもお預かりします、なんてところが何処かにあるのかしらん? この宇宙のどっかに。
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で、また生まれて来たときにそこに行って、預けたいたものを引き出す。そういうシステムが。
そういうシステムがあれば別だが。
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「徳を積む」なんてフレーズがあるよね。あの人は徳を積んでいる。それが顔に出ている。老いても、それが輝いた老いの顔になっている。・・・などと言って評価したりもする。
因果応報などと言ったりもする。過去の原因が現在もしくは未来に置いて結果する。それを宿業と呼ぶ。この宿業からは離脱が出来ない。・・・などとも言う。
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前世の因縁は受け継がれて行く。己がそれを引き受けねばならない、とも言う。
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とすれば? 残っていくことになる。何処かに残っていくことになる。
とすれば?
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今生で生きたことは無駄にならないと言うことだ。しっかり生きて繋がって行く、ということだ。
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これは恐ろしいことでもある。善果が残るのは許容できるが、悪行悪果が沈殿して、何度生まれ変わっても、消滅しないというのであれば、恐ろしい。
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ここまで考えた。暇だ。外はまだどんよりしていてほの暗い。
この人生を生きて、この人生で得たものは、残るのか? 蓄積するのか?
0になってしまうのか?
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では、失ったものはどうか? 失ったままなのか?
それともひょいとまたもとに戻って来るのだろうか?
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あれこれ考えてしまう。
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わたしがこの人生で得たものとは?
こころに得て、わたしを喜ばせたのは?
青い青い大空だ。明るい明るい大空だ。何処までも何処までも青い明るい大空だ。
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これはわたしが不在になってもたしかに残っている。