傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

『農業の幸福な日々「今夜が最高!」』・・・・人生処世術と農業論(雑感)

2009-08-07 19:18:11 | 国家の計

「JBpress」の『農業の幸福な日々「今夜が最高!」』は、『今日よりよい明日はない』の著者の玉村豊男氏との対談記事で、右肩上がりの経済成長は望めない成熟社会で、玉村豊男氏は「今、自分の目の前にある状況がベストである」、「農業が素晴らしいのは、「必ず明日に仕事が残る」点でだ。1日を終えて、「さあ、明日はこれをやろう」と眠りにつけるのは幸せなことである」と語っています。
農業改革が騒がれ、成長路線が政治テーマになっている時節がら、触発される内容ですね。

対談記事『農業の幸福な日々「今夜が最高!」』では、玉村豊男氏が著した『今日よりよい明日はない』のタイトルの由来から話がはじまり、農業に従事することより、穏やかな日常が持続していくことが農業的な価値観で、そのような価値観を見直されれば、社会はもっと住みやすくなるし、ぎすぎすしなくなるんじゃないでしょうかと語っています。

成熟社会になっても、いまだに「明日はもっとよくなる」ことを前提とした経済モデル、成長モデルがすべてだと思って、まだ走り続ける中高年代に、「今、自分に目の前にある状況がベスト」という考えを提案しています。

農業は、いくら自分が頑張っても最後はお天道様次第だということ自覚し、目の前のものを受け入れるしかないという気持ちになったと語っています。
そして、農業は、毎日毎日、目の前のことを処理していくしかないが、必ず明日に仕事は残る。
だから、畑仕事をし、風呂に入って、お酒でも飲んで、さあ、明日も頑張るかと。そういうのを毎日やっていくのが生きるということだし、暮らしなんだなという感覚が身についたと語っていますね。
玉村氏は、農業は、基本的に出来高が限定的で、一攫千金はなく、出来る範囲を持続してゆくのが、農業的な価値観で、農業の工業化には批判的ですね。

対談後のインタビュアーの所感として、

”「幸せな日々を送るためには、ある種の「課題」を持ち続けることが必要だということ。玉村氏は「ライフワークを持つな」と書いている。ライフワークとは「死ぬまでにやり遂げたい」と思う仕事である。ライフワークが達成された時、往々にして人間は生きる意欲をなくしてしまう。

だから人生における課題は、決してなくなることのないものが望ましい。それは仕事でも遊びでもかまわない。毎日、毎日、生活の中でやるべき課題があるからこそ、人間は生きていけるのだ

 その点、農業が素晴らしいのは、玉村氏が言うように「必ず明日に仕事が残る」点だ。1日を終えて、「さあ、明日はこれをやろう」と眠りにつけるのは幸せなことである。

 本書が私たちに与えてくれているのは、人生において、ずっと消え去ることのない課題を持ち続けるためのヒントなのかもしれない。皆さんにとっての「農業」は、何だろうか
。」”

と語っています。

玉村豊男氏の人生処世感は、定年後の長い「余生」を目の前にして、自然志向となる中高年向けのスローライフとしての農業を提案していると思われ、団塊世代の当方には、共感できる部分はあります。
ただ、若い世代に、『今日よりよい明日はない』は、素直に受け止められるか疑問ですね。

玉村豊男氏は、「農業は工業ではないし、商業でもないということ。農業は生活そのもの。持続的な価値観を求めるライフスタイルなんです。」とし、生産性観点から工業化は否定的ですね。

当方は、本ブログ「御立 尚資氏の日経ビジネスに連載コラムが最終回・・・・残念ですね!」で書きましたが、ボストン コンサルティング グループ日本代表の御立尚資氏は、

”「経済成長に対して、本音では「ネガティブ」な思いを持つ層が拡大している状況下、現在のリーダーの皆さんにとって必要なのは、「環境論議」とリンクづけた感情論、あるいは「成長は悪」という感情論を廃し、Graceful Decline(優雅な衰退)論に与するべきか、そうではなく適切な経済成長を通じてより豊かな日本を作ることを目指すのか、論理とデータで語っていくことではないだろうか。」”

と、御立尚資氏は、世の中、経済成長に「ネガティブ」な思いを持つ層の拡大傾向と認識の上で、適切な経済成長が豊かな日本を作るという主張ですね。

一方、玉村豊男氏の「農業は生活そのもの。持続的な価値観を求めるライフスタイル」の主張は、退職後の中高年の第二人生には、面白いと思いますが、国の適切な経済成長を実現に貢献するかとなると疑問になりますね。
やはり、個人的な地産地消・自産自消の農業ケースと工業的な生産拡大の農業ケースとの棲み分けが必要になるのでしょうね。
玉村豊男氏は、個人の人生処世論であり、現役の御立尚資氏は、国家観であり、次元の違う話題になりますね。

当方は、第一次産業は「国の基幹」と位置づけしており、農業改革はすべきという思いがありますが、個人的には、玉村豊男氏の言う「農業はスローライフ」には共感しますが。




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