ソフトバンクの孫正義社長が発足する「自然エネルギー財団」を、池田信夫氏が酷評していますが、池田信夫氏の論評については、一見、正論めいているが、部分解の極論に過ぎずという印象ですね。
当方は、孫正義氏の非現実的と思える事柄への挑戦する姿勢を評価しますね。
孫正義氏の「自然エネルギー財団」については、田中龍作氏がブログ『自然エネルギーの普及阻む勢力と戦う孫正義氏 』、ブログ「カナダde日本語」様のエントリー『孫正義氏講演:原発問題の解決策としての自然エネルギーの普及』らで、ネットで取り上げています。
一方、言論プラットフォーム「アゴラ」を主催している池田信夫氏は、ブログ『「自然エネルギー財団」より電力事業のイノベーションを』で、経済学的には的外れとし、
”「いま電力事業に必要なのは、技術開発ではなく地域独占を超える新しいビジネスモデルである。
孫氏がこれほどエネルギー産業に関心があるのなら発送電の分離を提唱し、ソフトバンクをどこかに売却して、その資金で電力事業に参入してはどうだろうか。
もし再生可能エネルギーが本当に原子力や化石燃料より効率的なら、既存の電力会社よりもうかるだろう。何が最適のエネルギーかは市場で決めるのがベストである。」”
と、ビジネスモデルとしての将来性は疑問と論評しています。
その後も、池田信夫氏は、ブログ『ビル・ゲイツ、原発を語る』で、ビル・ゲイツが目論む原発事業を賢いとし、
”「これに対して「自然エネルギー」という個別インフラから入る孫正義氏の財団は、目標と手段の順序が逆だ。
再生可能エネルギーの普及という手段を目標にすると、高コストの太陽光パネルには補助金を出そうという民主党のナンセンスな政策になる。
孫氏の情熱と行動力は立派なものだが、ゲイツのような戦略を立てて費用対効果を計算しないと、せっかくの浄財が無駄な太陽電池や風車に浪費されかねない。」
と書き、
ブログ『ガイアの復讐』で、
”「エネルギー政策は、資源の枯渇や環境問題や地政学まで含む複雑な制約条件のもとで解かなければならない連立方程式であり、「安全」とか「エコ」とか一つの条件を絶対化するのは間違いのもとだ。
再生可能エネルギーの開発は必要だが、それが商業的に成功するには発送電の分離などの制度改革が不可欠だ。
物理的なエネルギー効率では原子力をしのぐものはないので、多くの欠点はあるがそれを捨てるべきではない」”
と書き、
ブログ『再生可能エネルギーは原発の代わりにはならない』で、
”「だから孫氏が本当に再生可能エネルギーが原発より安いと思うのなら、発送電の分離を提案し、みずから投資してIPPに参入してはどうだろうか。
経産省の改革派も、それを待っている。」”
と、自然エネルギーに投資するなら、原発を黙認し、IPP(卸電力事業)に投資が将来性があると論じています。
当方は、池田信夫氏について、本ブログで取り上げおり、本ブログ「池田信夫氏の宇沢弘文氏への批判に一言」で、
”「池田信夫氏については、アゴラ言論プラットフォームの主催者で、先鋭的な意見で、メディアで頻繁に名前に接するが、凡人の当方に言わせれば、部分解を専門知識で最適解と大声で誇張しているに過ぎないと言う印象で、田原聡一朗氏と同質のタイプとも思いますね。
経済原理で世の中の人間の営みを解決できれば、誰も苦労しないですね。」”
と、池田信夫氏の論調には違和感を持ち、批判的になりました。
そして、池田信夫氏のTwitteの、
”「彼につながってるデマゴーグは、宮台真司、武田邦彦、広瀬隆、小出裕章、飯田哲也…きりがない。 RT @sukuraia: 今回の震災では二階堂ドットコム、きっこ、勝谷や秋元貴之辺りがとりわけ酷いデマを流しているようですね。デマ発生源になっているのが上杉隆」”
をネット情報で知ってから、批判的から生理的嫌悪感を感じるようになりましたね。
当方は、孫正義氏については、本ブログ「カナダde日本語」様が孫正義氏を尊敬(雑感)」で、
”「老人性骨粗鬆症に陥った日本社会には、過去の延長線上の常識的な固定観念では破壊も創造もできず、孫正義氏らの異色・異端の人間に日本の再生を委ねたいと思っています。」”
と、孫正義氏の現状を否定する挑戦的な姿勢に期待しています。
世の中、原発はエネルギーの実態を考えると必要悪という常識的な正論めいた現実論がありますが、孫正義氏には、非現実的な問題を「あるべき正論」で先鋭的・革新的に取り組みを期待しています。
ただ、田中龍作氏がブログで、
”「心配症の筆者は、原発に反対していた佐藤栄佐久・前福島県知事に孫氏が重なる。佐藤前知事の逮捕容疑は収賄だが、佐藤氏自身「原発反対も逮捕理由のひとつ」(18日、日本外国特派員協会)と捉えているのである。
政権はあらゆる規制を駆使して自然エネルギーの普及を妨害してくるだろう。マスコミは孫氏を絡めてネガティブキャンペーンを張ってくるだろう。
筆者は上記(「佐藤前知事」「政権による妨害」「マスコミのネガキャン」)を説明したうえで孫氏に「具体的に対抗策を考えているのか?」と聞いた。
孫氏は「損害を被ることもあるが、それでも正義を通さなければならない時がある」と決意を示した。
既得権益を打破しようとすると政権、霞が関、記者クラブメディアが立ちはだかる。その繰り返しだった。だが原発は日本が吹き飛ぶほどの危険性を持つ。「子供たちのためにも日本を残さなければならない」とする孫氏に孤軍奮闘を強いてはならない。」”
と書いていますが、当方も、政官業の既得権社会は、孫正義氏を「出る杭」を見なされ、佐藤栄佐久・前福島県知事の二の舞にならないか危惧しますね。
「付記」
佐藤栄佐久・前福島県知事の事件については、本ブログ「検察の劣化:前福島県知事汚職事件の裁判・・・問題意識が希薄に?」で、神保哲生氏が、『「物言う知事」はなぜ抹殺されたのか』で取り上げ、郷原 信郎氏が「JBpress」に寄稿した『どうした!東京地検特捜部 “手柄を焦る”組織の疲弊~福島県知事汚職事件』で、前福島県知事の佐藤栄佐久汚職事件は不可解と取り上げていると紹介しました。
また、ブログ「社会科学者の時評」様のエントリー『福島原発は,県知事を抹殺,大震災事故を発生』で、4月18日,佐藤栄佐久・前福島県知事の外国特派員協会で会見を取り上げ、「原発安全神話」を,御用学者が政府や電気会社の太鼓持ちよろしく,盛んに吹いていたと「原子力村」を酷評しています。
佐藤栄佐久・前福島県知事が反対していた福島第一原発へのプルサーマル導入を決めたのは、佐藤雄平・現知事であり、原発の肩入れした渡部恒三議員の甥で、長らく渡部恒三議員の秘書を務めた経歴の持ち主です。
その佐藤知事が東電に奇麗事をいえる筋ではないのですが、マスメディアは、渡部恒三議員・佐藤知事を批判しないのは、政官業の硬直化社会を見ている思いです。
ttp://twitter.com/#!/ikedanob/status/62744951947132928
「安全性(死者の最小化)という目的から考えると、いま「脱原発」すると石炭火力が増えて、確実に死者が増える。経済的コストも増える。何の解決にもならない。」
これは乱暴すぎる