グーグルが電子書籍サービスを開始、先行のアマゾンも対抗策を発表するなど電子書籍は世界的な潮流になり、国内も電子書籍サービスが活発化し、今年は複数の電子書籍端末が日本で発売および発売予定で、電機や出版業界では、「電子書籍元年」と位置づけられているが、日本の電子書籍端末の勝算は疑問ですね。
電子書籍端末の国内動向については、J-CASTが『日本の電子書籍市場は消耗戦 ハード、サービスともに乱立気味』で、矢野経済研究所の日本の電子書籍市場自体は飛躍的に増えない見込みとして、
”「背景には一般の新刊の電子書籍が米国のようにどんどん出されるわけではなく、「試験的に出してみた」程度でとどまっているという事情もある。誰も大きな声では言わないが、作家→出版社→印刷会社→取り次ぎ→書店という日本の強固な絆を崩してまで電子書籍に移行しようというインセンティブに乏しいためだ。そうした現状にどこまでインパクトを与えるか、「リーダー」をはじめ国内で発売が相次ぐ電子書籍対応端末の動向が注目される。」”
と報道していますね。
同様に、日経ビジネスも『電子書籍“後進国”返上?』も、冷ややかな見解ですね。
電子書籍端末が作家→出版社→印刷会社→取り次ぎ→書店という日本の強固な絆(特異性)を崩しに至らないだろうという事ですね。
一方、米国勢は、ダイナミックですね。
JB-pressの記事『グーグルが米国で電子書籍の販売開始 世界最大規模の300万タイトルを用意』、『グーグルの電子書籍参入で焦るアマゾンさっそく対抗策を発表 』によれば、市場構造を変容させるパワーがありますね。
当方が気になったのは記事に、現代ビジネスに、坪田 知己氏の寄稿『脅威=中国の電子書籍』 で、坪田 知己氏が、10月中旬、電子ペーパーコンソーシアムの調査団長として、中国の電子書籍のビッグプレーヤーを訪問の所感ですね。
坪田 知己氏は、冒頭に、”「日本ではiPadやキンドルが話題だが、5年、10年のスパンで見れば最大の脅威は中国だと考えるべきではないか。何しろ市場が大きすぎる。」”と中国市場の大きさと中国の特殊性(文化防衛)を記述し、中国では電子教科書を天王山とし、一方、日本は電子書籍の出遅れとし、日本の勝算はカラー化と記述しています。
当方は、電子ペーパーコンソーシアムの存在については未知であるが、中国市場の坪田調査団長の所感に接して、電子書籍の関係者には、数年前から常識の内容であり、今頃、中国の特殊性や電子教科書を話題にすること自体、時代遅れと思いましたね。
数年前に、ソニー、パナソニックが電子書籍端末の発売は、既に、中国での電子教科書の実用段階になっており、それが刺激になったのは事実であったのです。
ソニー、パナソニックも出版・取次・書店団体に声をかけ電子書籍端末を発売したが、独自の先鋭的技術もなく、業界団体は電子書籍に懐疑的であり、ソニーは海外に活路を見出し、パナソニックは撤退したのです。
確かに、電子書籍端末はカラー化は不可避で起死回生になるが、台湾メーカーが先行しており、日本メーカーのブレークスルーがなければ勝算は疑問ですね。
坪田 知己氏は、中国の電子教科書を特記していますが、日本で電子教科書の導入を提起しているのはソフトバンクの孫正義社長ですね。
マアー、ソフトバンクが提唱している「光の道」と関連することは明らかであるが、もし、電子ペーパーコンソシアムが電子書籍、電子新聞をとりあげているのであれば、「電子教科書」「光の道」をどうしようとするのか興味はありますね。
日本経済の牽引の一つであった家電分野は韓国に、電子部材は台湾に、遅れをとっている現下では、電子書籍分野も、本ブログで紹介した東京大学の妹尾堅一郎・特任教授のインタビュー記事『江戸時代の糖尿病治療になっていないか?軍師を仕立て三位一体の戦略を』で提起している「技術、知財(標準化)、事業の三位一体によるイノベーション」を主導する軍師が必要でしょうね。
なにか、電気自動車もネット家電、電子書籍と同じ轍を踏むのではないかと心配しますね。