傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

安倍首相の成長戦略スピーチで名前がでた下村治博士について(雑感)

2013-04-20 19:23:57 | 政治

19日の安倍首相の成長戦略スピーチは、伊能忠敬から始まり、下村治博士の言葉が引用され、最後も下村治博士の言葉で締め切られ、総花的な美文麗句の美文の印象ですが特に異論を述べる程ではないが違和感を覚えますね。
当方には、下村治博士の言葉が引用されたことが印象的で違和感でした。

経済に疎い当方が下村治博士を知ったのは、啓発されるブログ「社会科学者の時評」様のエントリー『 ■真実を語ったエコノミスト-下村 治■ 』(2009.2.12)で、本ブログ「エコノミスト下村 治氏について」で、下村治博士の慧眼には同感と書き、その後も本ブログで下村 治氏の言葉を引用してきました。
また、下村治博士については、神谷秀樹氏が 日経ビジネスにコラム「下村治博士の20年前の警告を見つめよ」(2008年2月4日)で、下村治氏を推挙していること、水木楊氏が安倍第一次内閣の成長戦略を批判した日経ビジネスへの寄稿コラム『安倍成長戦略の誤謬 「下村治・都留重人論争」を持ち出す認識不足と時代錯誤』(2007年2月19日)を紹介しました。

他方、安倍首相の成長戦略スピーチでは、

”「・・・・・・
4.全員参加の成長戦略

すべての人材が、それぞれの持ち場で、持てる限りの能力を活かすことができる「全員参加」こそが、これからの「成長戦略」の鍵であると思います。
 高度成長時代の「所得倍増計画」を理論づけた下村治博士は、「経済成長の可能性と条件」と題した論文の中で、こう論じています。
 成長政策とは、「日本の国民が現にもっている能力をできるだけ発揮させる条件」をつくることだ、と。
 
下村博士は、当時4500万人いた就業者が、「非常に高い潜在的な能力を持っているにもかかわらず」、創造的な能力を「発揮できる機会が少ない」ことを指摘し、「機会」さえしっかりと与えられれば、日本経済は成長できる、と説きました。
 
この下村博士の言葉は、現在も、普遍的な価値を持っていると考えます。
・・・・・・・・・・・・・・
7.おわりに
 「挑戦」、「海外展開」、そして「創造」。成長戦略のための新たな「三本の矢」を束ねることで、日本は、再び成長という階段を登り始めることができると信じます。
 最後に、先ほどの下村博士の別の言葉で締めくくりたいと思います。
 これは、「成長政策の基本問題」と題する昭和35年の論文の序文にある言葉です。本格的な高度成長に入ろうとしていた日本への下村博士の強いメッセージです。

 「10年後のわれわれの運命を決定するものは、現在におけるわれわれ自身の選択と決意であり、創造的努力のいかんである。この可能性を開拓し実現するものは、退嬰的・消極的な事なかれ主義ではなく、意欲的・創造的なたくましさである。日本国民の創造的能力を確信しつつ、自信をもって前進すべきときである。」

 私は、日本国民の「能力」を信じます。日本国民の力によって、もう一度日本経済は力強く成長します。そう信じて、「次元の違う」成長戦略を策定し、果敢に実行してまいります
。」”

で、日本国民に潜在能力があり、機会が与えられれば日本経済は成長できる、日本国民は創造的能力あり高度成長できるという部分に下村博士の言葉を引用しています。

当方が下村治博士の慧眼と思ったのは、下村治博士の言葉にある

”「・・・・・・資産国家日本の一般国民への下村氏のメッセージはきわめてシンプルである。
いわく
「各個人はあまりマネーゲームに惑わされず堅実な生活設計をたてることだ。
平凡で堅実な生きかた,それを続けるかぎり間違いはない。
あまり欲の皮を張りすぎると悪徳業者にだまされるのがオチである」と
。」”

の部分であり、

 ”「一昨年の円安時には外貨預金がはやり,最近再び株価が上昇基調に転じて投信ブームが来そうな感もあるが,われわれは充分慎重にかまえたほうがよさそうだ。そしてなによりも,氏は,国民に利己主義を捨て公のために汗を流す心構えを訴える。


 我々の社会,我々の経済を安定した望ましい形にするには,自分たちの汗と,ばあいによっては血を流さなければならない,という覚悟,そういう苦しみや犠牲に耐える覚悟と能力と意欲が必要であるという精神が,日本では非常に希薄になっている。これは世界的な傾向だが,アメリカなどにはまだ残っている。しかし日本では非常に欠如している
。」”

の部分と書きました。
アメリカ主導の金融資本主義が歪が現出し、民族主義・宗教が起因による世界混迷にあり、世界が多極化の現下は、借金依存から堅実体質に移行することが賢明と思えますね。

また、TPPに反対する国会議員が設立した「TPPを考える国民会議」の代表代理人に経済学者の宇沢弘文・東大名誉教授について、本ブログ「反TPP団体の代表世話人の宇沢弘文・東大名誉教授と小沢一郎氏の国家観」(2011-02-26)で紹介しました。

日本政策投資銀行の研究部門の「設備投資研究所」は、下村治博士は初代所長として研究所の設立と初期の活動に対して指導的な役割をし、宇沢弘文教授には、アカデミックでリベラルという設備投資研究所の性格を形成されたとあります。

安倍首相の成長戦略スピーチを総論的には否定しないが何か違和感をもったのは、下村治博士は、日本の高度経済成長を促したが、石油ショック以降は、「安価な資源が無制限に安定供給されるという『成長の基盤』はもはやなくなった」と喝破し、「ゼロ成長論者」になった。そして、1987年にはさらに『日本は悪くない 悪いのはアメリカだ』(ネスコ刊)という著書を発表し世界金融危機を予見し堅実な生き方を提起しており、宇沢弘文教授はTPP反対姿勢であり、安倍首相はTPP参加を決断しており、金融・財政で経済成長を猛進しているのに、下村治博士の言葉を引用していることですね。

水木楊氏が安倍第一次内閣の経済成長政策を批判していたが、安倍首相の成長戦略スピーチに高度成長期の下村治博士の言葉を引用するのは時代錯誤としか思えないですね。
マアー、アベノミクスの時勢に敵わないので、しばらくは傍観しかないでしょうね。



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