傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

無届有料老人ホームの火災死亡事故は、介護実態(貧困ビジネスの存在)を露見

2009-03-24 11:39:43 | 社会保障

群馬県渋川市の有料老人ホーム「静養ホーム花みずきたまゆら」(=NPO法人彩経会運営=)の10人死亡した火災事故は、高齢少子化社会における介護実態の貧弱さが露見。
今回の死亡事故を起こした施設側は無届、建築基準法違反の増改築など責任の第一はありますが、都内で生活保護費の受給者が都外の施設に入所者が多数いることは、介護施設が社会ニーズの合致していない証であり、社会的弱者を顧客にする貧困ビジネスの存在を知らしめる介護実態の縮図が露見した事故です。

お年寄りを入居させ、食事や介護などのサービスを提供する施設は「有料老人ホーム」として都道府県に届け出が義務づけられていますが、今回火事のあった有料老人ホーム「静養ホームたまゆら」は、無届け、13年ほど前に施設が開設されて以降、建築基準法違反で増改築してきたと報道されており、運営実態は不明ですが、まずは、無届、建築基準法違反は論外で、「静養ホームたまゆら」に第一の責任がありますが、問題は深刻ですね。

『行政側にも責任の一端』

1) 群馬県の問題

  「静養ホームたまむら」には、近所の住民から3年近く前に「入所者に対する
  適切な処置がとれていない。是正を求める」と書いた文書を群馬県に送られて
  いたが、群馬県は「権限がない」という理由で施設を調査するといった具体的
  な対策をとっていなかった。

2) 墨田区の問題
   
  東京・墨田区福祉事務所は、無届の「静養ホームたまゆら」を、「施設は紹介
  したが、あくまで本人と施設の契約であり、区から県や市に報告する制度には
  なっていない」としているが、3年前の平成18年8月に「生活保護費の受給者
  を支援する立場の墨田区が『たまゆら』のような施設を紹介するのはおかしい」
  といった内容の投書のメールが区長あてにあり、墨田区は職員3人を施設に
  派遣し、入所者の部屋の広さや施設の職員の体制などを調査しましたが、
  問題はないと結論づけてメールの送信者に回答したと報道されており、実態
  把握が不十分であった。


『介護施設不足:生活保護老人 516人都外に』
 
「静養ホームたまゆら」の火災事故後、東京都によると、去年1月時点で、都内で生活保護を受け、料老人ホームなどの施設に入居している人は674人で、このうちおよそ77%に当たる516人が、ほかの県で生活していると報道されています。

 NHKニュースによると、

「茨城県が236人、埼玉県が83人、群馬県が64人、千葉県が63人、静岡県が41人、山梨県が12人、栃木県が10人、神奈川県が6人、佐賀県が1人となっています。
こうした実態を踏まえて、東京都は、ことし1月、都内の区や市町村に対して、生活保護を受けているお年寄りに、有料老人ホームを利用してもらう際の注意点について通知しています。
この中では、有料老人ホームの届けや介護サービス事業者としての指定がない場合は、行政の指導が及ばないことから、身寄りのない高齢者に利用を勧めるのは好ましくないとしています。
そのうえで、やむをえず利用を勧める場合は、必ず事前に現地確認するほか、最低でも1年に2回は訪問し、生活実態を把握するなどの対応を求めています。都では、今後、今回の墨田区の対応が適切だったどうか、確認することにしています。」

とあり、東京都は生活保護費受給者の都外の施設入所については、問題意識はあったと思われるが、なぜ、77%が都外の施設に入所しているのかという原因については、言及していませんね。
同様に、厚生労働省は、火災事故後、週明けにも全国の都道府県に対し、無届けで運営されている「有料老人ホーム」の防火態勢を緊急に点検するよう要請していますが、防火態勢は問題の一部であり、高齢少子化社会で核家族し、共稼ぎが常態化になりつつある現下で、認知症の介護に家族が時間を割くことは限界であり、介護施設に頼ざるえないが、介護施設の絶対数の不足など、今回の火災事故が介護体制の貧弱さを露呈したに過ぎないと思っています。

『貧困ビジネスの存在』

火災事故を発生させ、10名の死者をだした「静養ホームたまゆら」の実情は、朝日新聞の記事「「入所者放ったらかし」おむつも換えず  老人施設火災」によると、「入所者のおむつの交換はなおざりなうえ、掃除の世話もほとんどなく、入所者は事実上、放っておかれた状態だったことが入所者や近隣の住民らの証言でわかった。県警は、こうした劣悪な管理体制が火災の被害を広げた背景にあるとみて、業務上過失致死傷容疑で捜査を進めている。 」とあり、介護の名前を借りたビジネスとしか思えないです。

週刊ダイヤモンド(2009.03.21号)の「あなたの知らない貧困」では、「貧困ビジネス」の存在に疑問を投げかけています。
サブタイトルは「社会的弱者の敵か、味方か」とし、「ホームレスや派遣・請負労働者を”得意先”にする貧困ビジネスが世にはびこっている。これは社会的弱者の救済か、摂取か」とし、社会福祉法の生計困窮者向け無料・低額で宿泊施設を提供し、自立を支援する事業で設置される「無料低額宿泊所」の実態をレポートしています。

記事では、1998年に人権擁護などを掲げる政治団体「日本人権連合会」として設立されたNPO「エス・エス・エス」の運営する施設の事例をレポートしており、エス・エス・エス(NPO)が生活保護受給者むけ「無料低額宿泊所」事業で、1999年9月(初年度)が売上高3億7300万が、2008年10月末には43億2205万円の11.6倍に、正味資産は、380万円(出資金)が7億1883万円の200倍に拡大している内容を記述しています。

そのカラクリは、生活保護費(約13万:生活扶助(上限)8万2000円+住宅扶助(上限)4万7700円)の受給者の事例として、「エス・エス・エス」の取り分は約9万7000円(内訳:寮費(住居代)4万7700円+食費2万9000円+共益費・雑費約2万円)で、生活困窮者の手取りは約3万円の構成で、安定収入源の生活保護費の住宅扶助をフル活用し、それに食費・共益費・雑費を差し引き、生活困窮者には、残高が数万円しか残らず、自立には現実的な不可能な実態ですね。

記事では、「ゼロゼロ物件」、「滞納家賃取立ての家賃保証会社」の実情も記事にしており、社会的弱者を相手にする「貧困ビジネス」の存在に疑問を投げかけていますね。
生活保護受給者を相手に「無料低額宿泊所」事業で急成長中のエス・エス・エスも、今回、火災死亡事故をおこした「静養ホームたまゆら」を運営しているの彩経会もNPOであり、NPOの名前を借りた公的資金を蝕む貧困ビジネスの存在は、行政の責任の一端であることは間違いないです。

貧困ビジネスは必要悪であるが、社会がその必要悪を許しているのは、社会の未熟の証であり、積年の失政でもあります。
無届であっても、そのような施設を紹介せざるを得ない行政、また、その不評な施設でも入所せざる得ない生活保護受給者、近隣に施設がなく遠方でも高齢者をお願いせざるを得ない家族の存在などは、予想される事柄であり、それを静観・黙認してきたのは、日本社会全体の貧弱さの現われですね。
もう、自公政権から、一度、政権交代し、社会変革しかないですね。

 



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