大好きな高楼方子(たかどの ほうこ)さんの本です。
買ったのは、ちょっと前なのですが、読んだのは三日前。つまり、しばらく置いていたままにしていた訳。
そして……読了した後、激しく後悔した私。こんなにステキな本には、少しでも早く巡り合いたかったって思うんだもの。表紙も、御覧の通り、洒落てます。
出久根育(でくね いく)さんの挿絵なのですが、夢のようでありながら、ちょっぴりミステリアスな女の子の表情とか、周りの装飾がとても好みなんです。
昔から高楼さんのファンなのですが、数多い作品の中でも、こうした小学校高学年以上向き――というべき少し大きくなった子供向けの児童作品は数少ないよう。正直言って、より小さい子供向けの作品は、私好みじゃないので、高楼さんの本も10冊読んでいるかいないか。
「リリコは眠れない」とか「緑の模様画」は、大好きですけど。
さて、この「ルチアさん」。高楼ワールドともいえるファンタジックな世界が広がります。正統派の欧米の児童文学を思わせながら、独特の繊細・優雅な表現が素晴らしい!
<たそがれ屋敷>と呼ばれる、不思議な館に住む二人の少女――スゥとルウルウ。二人のお父さんは、遠い異国への船旅に出てしまい、浮世離れした優雅なお母さまとお手伝いさんとだけの生活を送っています。
そんなある日、新しく雇われたお手伝いさんのルチアさん。青いコートをふっくり着こんだイースターエッグみたいなルチアさんは、とっても働き者なのですが、不思議なのはその体が光ってみえること。 ちょうど、姉妹がお父さんからもらった美しい青い石(宝石のようにも、果物の実のようにも見えるもの)のように――ルチアさんって、一体何者?
そして、どうしてスゥたちだけの目に光輝いて見えるのかしら?
こんなお話が、典雅な文体でつづられてゆくのですが、ある日、思い切った姉妹は、ルチアさんの後を追っていきます。ルチアさんの家まで、暗い道をずーっと通って…そしてたどり着いた家で、ルチアさんの娘ボビーと出会うのですが、ボビーは驚くべきことを言います。「あたしのお母さんは、真夜中の台所で、青い実のシロップづけの入った瓶を取りだして、それを食べているのよ」と。
実は、これはボビーのでまかせなのですが、三人が見守る前で、ルチアさんが取り出したのは、本当にキラキラ輝く青い実。不思議なことに、その美しい実のシロップづけは、姉妹のお父さんがくれた青い石にそっくりなのです。 この実と青い石は、ともにはるか遠い異国にしかないものでは? ここからルウルウたちの空想が羽ばたくのですがーー。
ボビーに青い石をあずけるものの、間もなくルチアさんもボビーも引っ越してしまい、謎はそのままになってしまいました。そして、長い年月が流れるのですが、素晴らしいのは、この何十年も後の後日談。 これほどに余韻を感じさせ、鮮やかな幕引きが用意された物語は、そうありません。
遠い国のまばゆく光る青い石のように、心に秘めたものを持っている方たちに読んでほしい本!
それこそ、物語に出てくるような雰囲気ある洋館――ぜひ、一度うかがいたいです!