ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

燃えつきた納屋

2018-09-08 13:45:26 | 映画のレビュー
 アラン・ドロン、シモーヌ・シニョレの顔あわせが、こたえられない! 1973年制作、とかなり古いフランス映画であるのだけれど、
 1時間半あまりの上映時間、たっぷり楽しんだ。


 この頃、ドロンは三十代後半くらいの年齢だったのでは? と思うのだが、若い頃のギラギラするほどの美貌に渋みが加わって、貫禄十分。
 でも、これくらいでなきゃ、往年のフランス映画の姐御的存在だったシニョレには張りあえないだろうしなあ……。

 舞台は、多分北フランスあたりの片田舎の山村なのだが、シニョレはここの牧場を営む農家の主婦。夫の他、娘と二人の息子、そして息子たち
 の嫁をも束ねる、気丈なおかみさんを演じているのだが、ある日、近くの路上で女が殺された。
 雪の降りしきる晩、目撃者もない雪原でのことで、疑惑は、この一家の息子にかかる。



 ドロン演じる判事が、この村にやって来る。家族を守るためには、何事をも辞さない気構えのシニョレに立ち向かう、ラシェレ判事の苦闘ぶりが
 見物というわけなのだけれど、ここでのドロンもシニョレもすごいなあ。
 火花が散るような対決、というのはこういうのをいうのかしらん。

 そして、判事のとまる町のホテルが、いかにも昔のフランスの田舎町のホテルという雰囲気たっぷりで、見ていて楽しかった。
 雪のつもる外から入ってくると、古いけれど清潔で、白い空間が広がるホテルの室内。食堂もこじんまりしていて、白いテーブルクロスがかかり、
 隅では、暖炉の火も燃えている気配がする――何だか、こんなホテル、今でもフランスの田舎にはありそう。

 ミステリー的要素十分で、面白い映画には違いないのだが、最後に明かされる真実は、あっけないといってよいほどのもの。それよりも、ドロンとシニョレ
 というスターの組み合わせが面白く、「本物の」スターからしか漂うことのない迫力が、画面からひしひしと感じられるのがいい。
 この映画を観て、やはりドロンは二枚目スターというだけじゃなく、堂々たる力量と深みを兼ね備えた役者であることを痛感!
 
 この他にも、シニョレとドロンは、「遠い夜明け」という映画でも、共演していて、私もそのDVDを持っている。意外に、この二人は役者として
 うまがあったのかも。

 そして、不思議なことに、シモーヌ・シニョレは(こちらは、大分年上で、石臼を思わせるずんぐりしたスタイルだけど)、ドロンの若かりし日の
 婚約者だったロミー・シュナイダーに、よく似た容貌をしているのであります。
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