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虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

カンフーハッスル (2004/中国)

2005年01月01日 | 映画感想か行
KUNG FU HUSTLE
監督: チャウ・シンチー Chiau Sing Chi
出演: チャウ・シンチー ユン・ワー ドン・ジーホワ シン・ユー

 少年時代に悪の道こそが賢く生きる道と思い知らされてしまったシンは、警察も手を出せないギャング団「斧頭会」に入りのし上がることを夢見ているが、実際は頼りない相棒とけちなゆすりたかり稼業。
 貧民窟の「豚小屋砦」での斧頭団となぜか素晴らしく強いカンフー達人の住民たちの争いに遭遇した彼は、達人たちを暗殺しようとする斧頭団のたくらみに加担する。
 
 私は「小林サッカー」より面白かった。「正月朝から映画?オタクの本性バクハツ」なんて家族の白い目にもめげず行ってきた甲斐がありました。帰りにはスキップしてましたもん。
 隅々まで神経行き届いた映画で、「小林サッカー」よりはお下劣ギャグはほどほど。残酷シーンはちょっと多かったです。
 なんと言っても、私は傑出した身体技に弱い。この映画は、それを詰め込んで、ストーリーも映像的にも作りこんであるのに、マンガ風味に徹し、洗練を排すという姿勢が貫かれている。どんなに難度の高いアクションも、ただ「かっこいい」とため息つかせるだけで済まさないやりすぎ精神に頭が下がる。ワイヤーアクションも「HERO」より美しくはないけど使い方としては高度だと思う。もうキャハキャハ大喜び。
 ラストのまとめ方も好み。
 キョーレツシーンで何回か目をつぶっちゃったけど、ほんとに楽しませてもらいました。

素晴らしい出演者は是非公式サイトで確認なさって!
カンフーハッスル

カンガルー・ジャック (2003/米)

2004年12月24日 | 映画感想か行
KANGAROO JACK
監督: デヴィッド・マクナリー
出演: ジェリー・オコンネル アンソニー・アンダーソン エステラ・ウォーレン クリストファー・ウォーケン マートン・ソーカス

 チャーリーは、母の再婚相手がギャングのボス・サルで、首根っこを抑えられている。おまけに子どもの時にルイスに命を助けられてそのことで彼と彼の持ち込む怪しげな仕事にいつも巻き込まれている。例によってルイスの持ち込んだ仕事で、いつものようにどじを踏んで、彼らはサルを怒らせてしまい、そのオトシマエにオーストラリアへ封筒を運ぶことになる。実はその中身は大金で、しかもそれをカンガルーに奪われ、命も狙われ、大騒動になる。

 製作がジェリー・ブラッカイマーで、クリストファー・ウォーケンが出ているのでレンタル申し込んだんですが、そこそこ面白い、お気楽に笑うためには最高な映画でした。
 タイトルは「カンガルー・ジャック」だけど、カンガルーはお楽しみシーンの時に華麗な ダンスを見せてくれますが、基本はスピーディーなアクションコメディで、テンポがいいし、割りとお約束でことが進んでいくので、安心して笑っていられます。家族で見ていてドキドキしそうなシーンが1箇所だけで、それもすぐに邪魔が入りますので実に健康的。

 主演の3人がごく普通ッぽい雰囲気出してるのもいいです。ヒロインとってもきれいですけどね。
 クリストファー・ウォーケンはいつものウォーケン風で、ラジー賞候補になったらしいけど、それほど映画のムードと乖離してるとは思わないけどなあ。

 特典映像のカンガルー・ダンス、思わず練習していました。

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ゴジラ FINAL WARS (2004/日)

2004年12月15日 | 映画感想か行
GODZILLA: FINAL WARS
監督: 北村龍平
出演: 松岡昌宏 菊川怜 宝田明 ケイン・コスギ 水野真紀 北村一輝 ドン・フライ

 月曜・火曜真面目に、火曜午後まではPC張り付き・火曜午後は目いっぱい飛び回りだったので、今日は少しくらい息抜きしたっていいじゃない、と朝一で映画館へ。「レディ・ジョーカー」始まっちゃってたから、この映画にしたんだけど、インクレディブルの字幕版にするべきだった。
 製作側も、嘘ついちゃ駄目じゃないですか。
 これはゴジラの映画じゃなくて、「ゴジラもついてるマトリックスもどきアクション映画」じゃありませんか。
 これからまたお仕事ですが、能率思いっきり落ち込みそうです。はあ…

 重要キャラが外国人で吹き替えの違和感ありまくり。いっそのことケイン君も吹き替えたらいかがでしょう?防衛軍の主要メカのコックピットはスタトレなんですね。そこで日本刀かまえんでください。アクションのできる重厚感のあるおじさんなら、倉田保昭さんでも連れてきたら?そのほうがまだまし。北村一輝はあのイっちゃってる加減は実に上手に見せてくれてますが、周りがそれに釣り合ってない。特に主役が。ヒロインは、現実に頭が良いより、「ガタカ」のユマ・サーマンとは言わないから、ケート・ベッキンセール並みには迫力と威圧感のある美女にしてください。あの口半開きのアップはやめて。でなければ「きゃあ」という役に徹して下さい。わかってます!最後までハイヒールなんだから、わかってますけど…
 シリアスと笑わせる部分のバランスもタイミングも悪いので、見ていてちっとも笑えず落ち込むばかりです。
 ゴジラとなつかし怪獣で勝ち抜き戦状態ですが、人間のアクションと怪獣アクションがほとんど変わりません。オリバー・カーンじゃあるまいし、横っ飛びするな!
 宝田明や水野久美さんはあんな役じゃ気の毒じゃないですか。
 それにあのラストは何っ?
 少々八つ当たり気味の感想ではありますがやっぱり言いたい。

「これがゴジラ・ファイナル?????冗談でしょう!!!!」

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きっと忘れない(1994/米)

2004年11月30日 | 映画感想か行
WITH HONORS
監督:アレック・ケイシアン
出演: ジョー・ペシ ブレンダン・フレイザー モイラ・ケリー

 予約してあったインフルエンザの予防注射、午後6時の診療時間終了ぎりぎりに飛び込んでやってきました。まだ腕痛いです。なんか疲れてしまって、新しい映画見る気力なく、消そうかな、どうしようかな、のビデオを整理の為に見ていた。

 優等をとることにこだわっているハーバードの学生が、卒論を撒いてしまったことからホームレスと知り合い、学校とは別の人生にとって大切なことを彼に学んでいく。
 予想される展開を外れない映画なんですね。エピソードをばら撒いた感じはあり。それに主役のエリート学生ブレンダン・フレイザー(わっか~い!)と恋人のモイラ・ケリーに私が魅力を感じないので、それほど感情移入できませんでした。ジョー・ペシはさすがです。若いメンバーにひきつけるものが足りない分、熱演でストーリーを背負ってる感じがします。ロビン・ウィリアムスとかぶりました。
 お疲れ気分のせいか、ちょっとシニカルな目で見ていたのだけれど、サイモン(ペシ)と家族との決して甘くない再会、死の床で読むホイットマン(え~と確かそうだよね)、モンティと教授との会話でぐぐっと来て、エンディングのマドンナの"I'll remember"で涙じわっ。うまい~~
 アメリカの大学の美しさというのも羨ましい。

 ただ、見た後一番残ってしまったのが「データのバックアップは、メディアにもまめにとろう」という決意…

吸血鬼ノスフェラトゥ (1922/独)

2004年11月23日 | 映画感想か行
NOSFERATU: EINE SYMPHONIE DES GRAUENS
監督: F・W・ムルナウ
出演: マックス・シュレック アレクサンダー・グラナック グスタフ・フォン・ワンゲンハイム グレタ・シュレーダー

 ブラム・ストーカーの「ドラキュラ」の映画化。
 舞台はブレーメンとトランシルヴァニア。

 怖かった。
「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」を見た後だし、古いホラーというのは仕方が無いことだが技術がちゃちいのに演技が大げさというのが多くて笑っちゃうかと思ったが、本当に怖かった。まったく無音のビデオで見ていたのだが、機械音がまるで効果音のように部屋に響いていた。コントラストのきついシーンの影の濃さにおののき、棺を運ぶ列の続く街中のシーンでは圧縮されたような空気感が伝わってくるようだった。
 ネズミもいかにも効果的。気持ち悪くて見るのがイヤでいやでたまらない。

 マックス・シュレックのビジュアルも想像以上。「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」のウィレム・デフォーも怪物じみていたが、この棒をつないだような、肉感というもののないノスフェラトゥには、「シャドウ~」を作りたがった気持ちがわかってしまいそう。その身体で棺を持ったまま新しい家へと向かう。
 ペスト後のブレーメンの街の闇の深さ、重い空気感は、それで石の家がゆがみそう。
 主人公の夫婦は白塗りっぽくても端正な美貌。これも怖い。
 確かに古い、突っ込もうと思えばそれなりにおかしいが…でも怖かった。

海底軍艦(1963/日)

2004年11月22日 | 映画感想か行
監督:本多猪四郎
出演: 田崎潤 高島忠夫 藤山陽子 小泉博 上原謙 藤木悠 佐原健二 平田昭彦 天本英世 小林哲子

 12000年前、地殻変動のため海底に沈んだムウ帝国は海底都市で地熱の力で生き延びていた。しかし突然地上に現れ、全世界に植民地になるよう要求、世界各地に攻撃を開始する。太平洋戦争終戦間際にこつぜんと姿を消した神宮司大佐たちは、孤島でひそかに強力な海底軍艦を建造していた。かつての神宮司の上司・楠見はムウ帝国と戦うために轟天号の出動を要請。だが旧日本帝国にこだわる大佐は肯じない。一方、神宮司の娘・真琴と恋人・旗中はムウ帝国に連れ去られてしまう…。


 「レインマン」を探しにいったら、店にあったので借りてきてしまった。
 これはご本家の小説とは全然違うのですね~。戦後20年といっても、日本が敗戦国で平和憲法の国だ、というのがかなり強烈に出されてるし。
 それなのに話の展開はかなり乱暴で、交渉もなしに、いきなりムー帝国全体を国民もろとも滅ぼしちゃう。このギャップにはいささか唖然。
 でも、古い特撮ものについて回るちょっとしたチープ感があまり感じられない。物理法則はまったく無視したような、空を飛び、海をもぐり、地中を先端ドリルで驀進する海底軍艦・轟天号にわくわくしてしまった。
 怪獣がマンダ一匹しか出てこなくて、それもあんまり活躍しないので、当時の特撮としては異色、というか特撮だから無理やり怪獣入れてみましたって感じ。
 
 ヒロインはきれいだけど、色彩センスのすごい衣装ばかりで気の毒。ムー帝国皇帝役さんはふっくらした世間知らずのわがままお姫様の感じでいかにもという雰囲気があって素敵だった。
 男の人が良くて、特に若い俳優よりおじさん連に見とれる。私は細長系より重厚型が好きなので、藤田進とか高田稔が並んでると、それだけで映画の評価上がっちゃう。特に神宮寺役・田崎潤はもうぴったりでたまりません。
 
 突っ込みながらキャーキャー楽しんで見てしまった。
 天本英世が出してくる海底軍艦設計図が青焼き~~~!「青焼きが20年持つのか?」「いや、しまったままなら持つかも」「なんで突出した科学力を持つムー帝国が槍で戦う?」「デビルマンでも銃は撃たずに振り回してたし!」海底軍艦が地中を進む所では「あ、一応残土排出してる!」「あれじゃ足りんだろうなあ」、「ムー帝国の光線兵器の造形(マンダ型?)は、帝国の美意識がこだわっちゃったのね~」「平田昭彦はなんで夜でもサングラス?」「平田昭彦だから!」「まあ、富士山麓のような絶海の孤島!」
 「ありえね~」世界をいっぱい楽しめた映画です。音楽が伊福部昭で、ちょっとゴジラっぽいけど荘重感があってわくわくします。

ゴジラ対へドラ(1971/日)

2004年11月18日 | 映画感想か行
監督: 坂野義光
出演: 山内明 木村俊恵 川瀬裕之 柴本(柴)俊夫
特技・合成: 徳政義行 土井三郎
特殊技術: 中野昭慶

 今週BS2はゴジラシリーズで、一通り見終わってから感想書こうかなと思っていたのだが、昨日の「ゴジラ対へドラ」があまりにもすごかったので一言。
 これは、どちらかというとアングラよりオーソドックスが好きな私には、映画として面白くない。それにゴジラの動きがプロレスなのがいや。あの指のクイクイッは論外。(「シェー」とどっちがイヤかは迷うところ…シェーさせちゃったのはご本家の本多監督だけど…涙)

 昭和史をやってるときに、実際の公害とか、光化学スモッグとか、資料や数字で知ってるのと、そのときに身近に感じてた人間ではまったく感じ方とかインパクトが違うんだろうと思うんだけど、この映画もリアルタイムで見たときと、今とではぜんぜん違う捉え方しか出来ないんじゃないかな。
「水銀、コバルト、カドミューム……」の主題歌や挿入歌もすごいし、でもなんだか馬鹿にされてるような気分にもなる。ニュース映像の使い方、アニメの挿入もシュール、その上へドラによる被害や特に人の死をまともにけっこうえげつなく映像化している。ホントにファミリー向けだったのか?と思っちゃう。あのゴーゴー大会も脱力で情けなくて良い。
 へドラの造形はいかにもぴったりで、変化するところも実によく考えられていて怪獣としては久々のヒット!なんだけど、ゴジラが駄目。あんなことさせちゃいけない。空を飛ぶのは絶対駄目。
 すごい製作側の意欲が感じられる、でも私には駄目、という「輝く番外編」、みたいなゴジラ映画。ゴジラさえ出てなきゃ好感持てたかも。

コラテラル (2004/米)

2004年11月12日 | 映画感想か行
COLLATERAL
監督: マイケル・マン
出演: トム・クルーズ ジェイミー・フォックス ジェイダ・ピンケット=スミス
 
 ロサンゼルスでタクシーの運転手を12年間勤めるマックス。ある晩、アニーという名の女性検事を乗せ、話が弾む。次に乗せたのはヴィンセントという男で、マックスに一晩貸切で雇うことを持ちかける。

 なんか小味な映画だなと思った。でもすっきりと終わって、それにスタイリッシュでした。
 実はトム・クルーズを見てかっこいいと思ったのは悪役のこれが始めて。なんか今まで妙にもたれるものを感じてました。
 それがこの人間的なシンパシーはかけらもございません、仕事はあくまできちんとやり遂げます、という殺し屋を演じて、ルックスも決まってるし、走る姿もかっこいい!と瞠目なのでありました。「殺し」というとんでもないことなんだけど、あのちんぴら殺しのシーンはまったく無駄がない。満員電車のようなクラブの中での格闘シーンといい、躊躇とか保留のない、ある種のかっこよさを見事に見せてくれる。
 マックス役のジェイミー・フォックスもやるじゃないかとは思うものの、この映画はトム・クルーズの悪役としての大きさにドラマを支えられてますもんね。それで全部負の部分を背負って、哀れに、でもかっこよく死んでくれてほっとさせてくれるのね。
 その辺の構成は「黄金」とかにも似てるけど、やっぱボギーのほうが容量が大きいかな。
 とっても楽しめる娯楽サスペンスでした。ちょっと無理して見に行って、すっきりして映画館出てこられて幸せ。(しかし、このつけは月曜日にどっとやって来る…)

 ひとつだけ。ジェイダ・ピンケット=スミスが出てきたときには、てっきり彼女もアクションすると思い込んじゃったのは私だけでしょうか? マトリックス、肩や胸の筋肉かっこよかったじゃないですか。

グッバイ、レーニン!(2003/独)

2004年11月10日 | 映画感想か行
GOOD BYE, LENIN!
監督: ヴォルフガング・ベッカー
出演: ダニエル・ブリュール カトリーン・ザース マリア・シモン チュルパン・ハマートヴァ フロリアン・ルーカス

 東ベルリンに住むアレックスは、父が西側して以来、より一層社会主義に身をささげるようになった母と姉の3人で暮らしていた。その母が倒れ、昏睡状態に陥る。8ヵ月後奇跡的に目覚めるが、その間、ドイツは統一され、彼の母の信じた社会主義のドイツはどこかへ消えてしまっていた。
 心臓を病んでショックを与えては命にかかわる母の為に、アレックスは必死にもとのドイツを演出する。

 コメディなんですけど、あまり笑えない、痛ましいドラマでした。そしてとても心にしみるドラマでした。
 確かにおかしいんだけど、一生懸命嘘を作っていって披露しているときのなんとなく落ち着きのなさ、もぞもぞした感覚が見ていて付きまとっていて、笑いも半笑いくらいで固まっちゃう。
 お母さんが、お父さんの亡命のときに心を病んでしまうほどショックだった、そしてその代償のように打ち込んだのが社会主義だった、というアレックスの動機の説明は十分にあるので、話に無理がないけど、やはり見ていてアレックスのもとの世界を整えようとする、そして自分たちのいた世界が負けたのでない形で、今の状況と整合させようという苦闘は急激な社会の変化に取り残される人間のプライドがあげる悲鳴みたいに感じてしまう。
 不自由や窮乏の代名詞のような旧東側社会にしたって、みんな生きて生活してきたわけで、自分が一翼となって支えてきた社会がまさに一夜にして否定され、自分の人生さえも意味のないもののように扱われる。戦後の分断の間に出来た格差の為に、東側の住民はほとんど2級市民扱い。
 でもそれに対する違和感も抗議も西側の物と経済力の前にすごく無力。
 そして最後には、お母さんがアレックスをだます側に回って、お互いに優しい嘘でお互いの傷を癒しながら別れていく。
 ギプス実習のシーンやら、キューブリックへのオマージュだろうな、というシーンも楽しかったけど、これはドイツという国がひとつの時代を乗り越えて生れた映画なんでしょうね。

 あのレーニンのシーンでは、思わず彼の理想を考えちゃった。
 もしレーニンがソ連建国に成功せずに、ルクセンブルグみたいに思想家としてして記憶される存在だったら、果たして今の世の中はどうなっていたんだろうか…?

月曜日に乾杯! (2002/伊・仏)

2004年10月20日 | 映画感想か行
LUNDI MATIN
監督: オタール・イオセリアーニ
出演: ジャック・ビドウ アンヌ・クラヴズ=タルナヴスキ ナルダ・ブランシェ マニュ・ド・ショヴィニ

 フランスの小さな村に住む中年男ヴァンサンは毎朝5時に起き、1時間半かけて勤務先の工場に通っている。単調な仕事、ストレスのたまる日常。彼はある日、突然工場への通勤途中で踵を返し、旅にでる。

 「素敵な歌と船は行く」で、シビアな現実をしれっと、かつファンタスティックに描いた挙句に不思議な結末で結んでしまったイオセリアーニ監督が、やっぱり同じ調子でやってくださいました。
 誰しも、どこへ行っても日常というのはそんなに面白いものでもエキサイティングなものでもありません。そうであったら不幸な例のほうが多いくらい。だからといって単調な日常だから幸福だなんて思うのも無理があります。
 そして彼は旅先で金をすられ、なんだか心通じる友を見つけ、旅先で日常を暮らす人を見て、帰ってきます。
 波乱万丈ではないけれど、旅をして、そして帰ってくるところがポイントなんですね。

 すごく今の私の気持ちのありようににはまったみたいで、かなり胸に響いてしまった。ヴェニスの屋根からの眺めのシーンでは不覚にも涙が…
 老若男女を問わず日常に疲れている人は多い、というかほとんどそうだと思うんだけれど、四方を壁に囲まれたような閉塞感に窓を開ける「ちょっとした思い切りの一歩」へ通じる道を照らしてくれるような気分。
 近いうちに、一日でも日常から脱出してみようと思う。前から見たかった安土城でも見てこようかな。

 主演のおじさんがすごく良いんですが、本職は役者でなくプロデューサーだそうです。監督の演じたボロ丸出しの貴族もおかしかった。
 この映画でも音楽が素敵。酒場で酔ったおじさんたちの合唱する歌が素晴らしいです。ヨーロッパのおじさんたちはみんなあんなに見事にハモれるんでしょうか?
 カメラが、本当に人間の目が自然に追うようです。言い古された言葉ながら、流れるようなカメラワークというのはこういうものでしょうか。

コールド マウンテン (2003/米)

2004年10月06日 | 映画感想か行
COLD MOUNTAIN
監督: アンソニー・ミンゲラ
出演: ジュード・ロウ ニコール・キッドマン レニー・ゼルウィガー

 牧師の父とともに都会から南部へやって来た美しいエイダ。寡黙なインマンはやがて彼女の心を捉えるが、南北戦争が始まり、インマンは戦場へ。そして父に死なれたエイダも生きるすべを持たず追い詰められていた。戦場で過ごした3年後、瀕死の重傷を負ったインマンはエイダの窮地を知り、脱走して彼女の元へ行こうとする。

 見終わって静かなため息が出るような映画だった。
 自然の描写はとても美しく、戦場の悲惨や、戦争の惨禍による人間の荒廃と対照を成すようだった。時間も行きつ戻りつ、長尺の物語を飽きさせないようにうまく作ってあったと思う。
 この映画の真の主役は戦争ですね。南北戦争によって引き起こされた悲劇を、インマンは道中で一つ一つ目撃します。エイダの方も、戦争に乗じてのさばる人間の醜さ、それに勝てない悲しさを否応なしに味わいます。最初のほうのシーンで、明らかに先住民らしき南軍兵と黒人が戦うところも意味深といえば言えるでしょう。先住民は青い軍服にずっと狩られているわけですし。
 
 レニー・ゼルウィガーはさすがにオスカーでした。あごの線まで緩んじゃって、たいしたものです。彼女に比べると、ニコール・キッドマンはきれいな役回りであるからしょうがないのかな、と思うように最後までただきれいでした。銃を構えた姿なんか、美しすぎて時代を間違えそうだったし。でもその美しさがインマンにとってこの世の善と美しいものへのたった一つのよすがだったとすれば、あれでよかったのでしょうか。ラブ・ストーリーであるからにはキッドマンとジュード・ロウの端正さが当たり前なのでしょう。
 大好きなアイリーン・アトキンスがでてきたときは嬉しかったし、彼女のセリフが重大な意味を最後まで響かせていました。
 彼は、エイダが「その後」を生きる為に帰ってきたのですね。

クイーンコング (1976/伊・英・仏・独)

2004年09月25日 | 映画感想か行
QUEEN KONG
監督: フランク・アグラマ
出演: ロビン・アスクウィズ ルーラ・レンスカ

「キングコング」の男女ひっくり返し版パロディ。製作年のころの世相のウーマンリブに対する理解だか揶揄だかわかんない展開のハッピーエンドで締めくくられる。いささか頭痛のする映画。サービスですといわんばかりの若い女性のバストやヒップのアップはどっさり。

 映画監督が女性で男優を町へ拾いに行くところや、細かいところはほぼご本家をなぞってあるし、ほかの映画の見せ場のイタダキも呆れるほどわかりやすい形でいっぱいです。
 ただ主演のコングにさらわれるおにーちゃんが、情けないほど魅力がない。それが狙いだったのか?ビッグ・ベン上の大演説も突然でとってつけたようだし、なんかなあ、いくらおバカ映画でも、もうちょっとその辺の辻褄あわせて欲しいかな。クイーンコングに下着をつけさせることで、突如としてコングの純愛と男性の横暴に目覚めるなんざ、ご都合主義ですねえ。
 日本語吹き替えでは広川太一郎と小原乃梨子(どうしてもドロンジョ様とのび太君浮かんできます)で、思いっきり駄洒落映画になってましたが、エンディングの歌なんかも聞き取れる範囲では脚韻バシバシで原語版も駄洒落満載だったみたいですね。音楽がクラシックあり、イタダキっぽいのあり、ピアノ練習曲ありとチープ感にあふれ、コングと恐竜の戦うシーンなんて、恐竜に穴が開かないかと心配するくらいチャチ!
 確かに問題作だけど、とても人様にお薦めは出来ない。
原典への敬意はもう少しあってもいいかも~と。

 その前に見ていたのが「エス」で、すさまじくとり合わせが悪かったです。
 オンラインDVDレンタルのDISCASのトップページににあったのでつい予約しちゃいましたが、もうちょっと良く考えて予約しようと思いました。

グリーン・デスティニー(2000/米・中国)

2004年09月02日 | 映画感想か行
CROUCHING TIGER, HIDDEN DRAGON
監督:アン・リー
出演:アンディ・ラウ ミシェル・ヨー チャン・ツィイー チャン・チェン
 
1日の映画の日に行こうと思ってた「LOVERS」見にいけなかったもので、つい出してきてしまった。この映画は民放放送の吹き替え版で、CMカット録画で継ぎ目がなんか変、のビデオしか持っていないので映画として楽しむにはちょっと悪条件。声のイメージにすごい違和感があります。それにあの悪役ですが、「毒狐」になっちゃう?など文句いいつつ、けっこう何回も見てます。
 なんたって映像が美しい。チョウ・ユンファ相変わらずかっこいい。本当に風格のある人です。竹林のシーンなんか、涙でそう。チャン・ツィイーのわがまま娘もそれなりに憎たらしくてなかなか良いです、
 あからさまワイヤーアクションで、ワイヤーくささを意識的に使った映画では「HERO」見た後だとちょっと負ける感じはしてしまいます。出演者がアクション「出来る」人たちなので、アクションシーンはさすが。それだけにミシェル・ヨーとチャン・ツィイーのバトルシーンでは、アクションの腕がストーリーと違うのがはっきり見えちゃうようなのが残念。
 でもこれもさすがアン・リーの映画。ああいう男は、女の夢だわ。一人は自暴自棄になるほど愛してくれるし、一人は「亡霊になってもお前のそばがいい」って死んでいくんだもん。

キングコング(1933/米)

2004年08月23日 | 映画感想か行
KING KONG
監督:メリアン・C・クーパー
出演:フェイ・レイ ロバート・アームストロング

 画期的な映画の為に、南海の未知の島にやってきた一行。中には失業中のところを拾われた女優のアンもいた。金髪のアンは目的地の島で、島民にその地で神とあがめられるコングに捧げられるためにさらわれてしまう…

 いまさらですが、怪獣映画の古典中の古典を見ました。
 面白い!
 もちろん特撮はカクカクしてておもちゃっぽいけど、人物描写とストーリーがしっかりしててびっくりした(勝手にB級と思い込んでてすいません)。
 コングとともに消えたアンを探すために船の乗組員がジャングルへ踏み込むとこなんかわくわくドキドキするし、いきなり現れる恐竜、ネッシーのような水中恐竜と見せ場たっぷり。それに哀れなコングの有名なエンパイア・ステートビルのシーンは、文明社会のコングの大きさをモロに表していて、このイメージは今見てもすごい。

古城の亡霊(1963/米)

2004年08月08日 | 映画感想か行
THE TERROR
監督:ロジャー・コーマン
出演:ジャック・ニコルソン ボリス・カーロフ

 本隊からはぐれたナポレオン軍の将校が海辺の古城のそばで不思議な美女に出会う。しかし彼を助けた老婆、城の主従も誰もそんな女は知らないと言う…

 「忍者と悪女」(エドガー・アラン・ポーの「大烏」がいつのまにか魔法合戦映画になったと評判のぜひとも見てみたい映画)のあとボリス・カーロフとの契約が3日残っていたので速攻でとった映画。
 原題が「THE TERROR」…恐怖で、いかにも恐怖映画な展開。ところが終盤に至って心理劇だったのか?!と思ったら最後でえ~やっぱり?という展開の、まあ、よくここまで3日でまとまって…と感心してしまう。
 古城も思いっきり雰囲気あるし、ほかでは知らないけどヒロインもきれいだし、ラストシーンは思わず「うえ~」でした。