TWILIGHT'S LAST GLEAMING
監督: ロバート・アルドリッチ
出演: バート・ランカスター リチャード・ウィドマーク チャールズ・ダーニング ポール・ウィンフィールド メルヴィン・ダグラス ジョセフ・コットン バート・ヤング
刑務所を脱獄した4人の男がモンタナ州のタイタン・ミサイル基地に潜入、核ミサイル9機を発射出来るサイロをのっとり立てこもる。首謀者は基地の設計者でもあるデル。彼はベトナム戦争に関わる国家機密文書の公開と逃走資金1000万ドル、そして人質として大統領の身柄を要求した。だがホワイトハウスでは協議によってデル達の抹殺が決定、司令センターの責任者マッケンジー将軍によってその計画が実行されたが失敗。デルは遂にソ連へ向けてミサイル発射のスイッチを…
実に後味の悲しいポリティカル・サスペンス。無辜の命を盾にとって政府に要求を突きつけるなんていうのは最近の「ロック」なんかつい思い出すのだけれど、全然重厚感が違う。
核のサイロとか、基地の周りなんて、かなりそっけなく、というかいささかチープで豪華キャストと話の大きさの割にはお金かけられなかったのか、もともと核ミサイルがあの程度のところで管理されてるのか(国家機密かな?)そこが?なところ。いつもながらアルドリッチのサスペンスを引っ張っていく腕はすごい。それに、この映画の特徴は分割画面でしょうか。これは大スクリーンで見るとテレビと違って同時進行の迫力がさぞかし…と思う。
よく出来たな、というのも正直な感想。これだけ政府や国家権力の欺瞞を、いくら近未来(設定は製作年の4年後)の娯楽映画という「作り物」の世界でもあからさまに描いてしまうのは驚きで、かえって今のほうがこんなに迫った描き方が出来ないのではないか。「華氏911」もがんばってるな、と思ったけどインパクトは、私にはこちらのタイプの映画のほうが大きい。
脅迫犯のデルも、優秀であるよりまず誠実と形容される大統領も根底で民主主義の理想を信じている。それに対して組織を守ること、その中で保身すること、組織を守ることでどんなことも正当化する権力機構が描かれる。そして理想に希望を託したもの二人は無残に殺される。大統領のまさに「イケニエ」的な死と、確認されなかった約束が後味の原因である。その後の希望を断ち切るような無残さがある。
思うに、赤狩りを経験したアルドリッチの持つ「国」の認識というものをうかがわせるし、更に言えば、国民に対しても過大な期待は抱いていなかったのではないか。しかしやはり、最後の希望はそこにあるのだろう。
ランカスターに対しても一言もなく、あっさり殺してしまう最期。核ボタンを押そうとする冤罪のインテリ軍人に対して一時の感情で焦土にすることはないと止める、おそらくは下層で育ったらしい訳知りの、まだ若い金目当ての犯罪者とのやり取りが考えさせる。
この話のスケールを支える役者たちの重量感がたまりません。音楽も控えめだが、さすがゴールドスミスで、実に応えるようだ。
監督: ロバート・アルドリッチ
出演: バート・ランカスター リチャード・ウィドマーク チャールズ・ダーニング ポール・ウィンフィールド メルヴィン・ダグラス ジョセフ・コットン バート・ヤング
刑務所を脱獄した4人の男がモンタナ州のタイタン・ミサイル基地に潜入、核ミサイル9機を発射出来るサイロをのっとり立てこもる。首謀者は基地の設計者でもあるデル。彼はベトナム戦争に関わる国家機密文書の公開と逃走資金1000万ドル、そして人質として大統領の身柄を要求した。だがホワイトハウスでは協議によってデル達の抹殺が決定、司令センターの責任者マッケンジー将軍によってその計画が実行されたが失敗。デルは遂にソ連へ向けてミサイル発射のスイッチを…
実に後味の悲しいポリティカル・サスペンス。無辜の命を盾にとって政府に要求を突きつけるなんていうのは最近の「ロック」なんかつい思い出すのだけれど、全然重厚感が違う。
核のサイロとか、基地の周りなんて、かなりそっけなく、というかいささかチープで豪華キャストと話の大きさの割にはお金かけられなかったのか、もともと核ミサイルがあの程度のところで管理されてるのか(国家機密かな?)そこが?なところ。いつもながらアルドリッチのサスペンスを引っ張っていく腕はすごい。それに、この映画の特徴は分割画面でしょうか。これは大スクリーンで見るとテレビと違って同時進行の迫力がさぞかし…と思う。
よく出来たな、というのも正直な感想。これだけ政府や国家権力の欺瞞を、いくら近未来(設定は製作年の4年後)の娯楽映画という「作り物」の世界でもあからさまに描いてしまうのは驚きで、かえって今のほうがこんなに迫った描き方が出来ないのではないか。「華氏911」もがんばってるな、と思ったけどインパクトは、私にはこちらのタイプの映画のほうが大きい。
脅迫犯のデルも、優秀であるよりまず誠実と形容される大統領も根底で民主主義の理想を信じている。それに対して組織を守ること、その中で保身すること、組織を守ることでどんなことも正当化する権力機構が描かれる。そして理想に希望を託したもの二人は無残に殺される。大統領のまさに「イケニエ」的な死と、確認されなかった約束が後味の原因である。その後の希望を断ち切るような無残さがある。
思うに、赤狩りを経験したアルドリッチの持つ「国」の認識というものをうかがわせるし、更に言えば、国民に対しても過大な期待は抱いていなかったのではないか。しかしやはり、最後の希望はそこにあるのだろう。
ランカスターに対しても一言もなく、あっさり殺してしまう最期。核ボタンを押そうとする冤罪のインテリ軍人に対して一時の感情で焦土にすることはないと止める、おそらくは下層で育ったらしい訳知りの、まだ若い金目当ての犯罪者とのやり取りが考えさせる。
この話のスケールを支える役者たちの重量感がたまりません。音楽も控えめだが、さすがゴールドスミスで、実に応えるようだ。