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虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

合衆国最後の日 (1977/米)

2005年05月03日 | 映画感想か行
TWILIGHT'S LAST GLEAMING
監督: ロバート・アルドリッチ
出演: バート・ランカスター リチャード・ウィドマーク チャールズ・ダーニング ポール・ウィンフィールド メルヴィン・ダグラス ジョセフ・コットン バート・ヤング

 刑務所を脱獄した4人の男がモンタナ州のタイタン・ミサイル基地に潜入、核ミサイル9機を発射出来るサイロをのっとり立てこもる。首謀者は基地の設計者でもあるデル。彼はベトナム戦争に関わる国家機密文書の公開と逃走資金1000万ドル、そして人質として大統領の身柄を要求した。だがホワイトハウスでは協議によってデル達の抹殺が決定、司令センターの責任者マッケンジー将軍によってその計画が実行されたが失敗。デルは遂にソ連へ向けてミサイル発射のスイッチを…

 実に後味の悲しいポリティカル・サスペンス。無辜の命を盾にとって政府に要求を突きつけるなんていうのは最近の「ロック」なんかつい思い出すのだけれど、全然重厚感が違う。
 核のサイロとか、基地の周りなんて、かなりそっけなく、というかいささかチープで豪華キャストと話の大きさの割にはお金かけられなかったのか、もともと核ミサイルがあの程度のところで管理されてるのか(国家機密かな?)そこが?なところ。いつもながらアルドリッチのサスペンスを引っ張っていく腕はすごい。それに、この映画の特徴は分割画面でしょうか。これは大スクリーンで見るとテレビと違って同時進行の迫力がさぞかし…と思う。
 よく出来たな、というのも正直な感想。これだけ政府や国家権力の欺瞞を、いくら近未来(設定は製作年の4年後)の娯楽映画という「作り物」の世界でもあからさまに描いてしまうのは驚きで、かえって今のほうがこんなに迫った描き方が出来ないのではないか。「華氏911」もがんばってるな、と思ったけどインパクトは、私にはこちらのタイプの映画のほうが大きい。
 脅迫犯のデルも、優秀であるよりまず誠実と形容される大統領も根底で民主主義の理想を信じている。それに対して組織を守ること、その中で保身すること、組織を守ることでどんなことも正当化する権力機構が描かれる。そして理想に希望を託したもの二人は無残に殺される。大統領のまさに「イケニエ」的な死と、確認されなかった約束が後味の原因である。その後の希望を断ち切るような無残さがある。
 思うに、赤狩りを経験したアルドリッチの持つ「国」の認識というものをうかがわせるし、更に言えば、国民に対しても過大な期待は抱いていなかったのではないか。しかしやはり、最後の希望はそこにあるのだろう。
 ランカスターに対しても一言もなく、あっさり殺してしまう最期。核ボタンを押そうとする冤罪のインテリ軍人に対して一時の感情で焦土にすることはないと止める、おそらくは下層で育ったらしい訳知りの、まだ若い金目当ての犯罪者とのやり取りが考えさせる。

 この話のスケールを支える役者たちの重量感がたまりません。音楽も控えめだが、さすがゴールドスミスで、実に応えるようだ。 

郡上一揆 (2000/日)

2005年04月28日 | 映画感想か行
監督: 神山征二郎
出演: 緒形直人 岩崎ひろみ 古田新太 前田吟 林隆三 加藤剛

 江戸時代の3大一揆の中でも、領主改易のみならず、幕府の要職までが処罰されたほかに例を見ない一揆を描く。

 これは、農民側の勝利に終わった一揆として有名です。それでもその「勝利」の内容は厳しいものです。
 当然ながら主だった農民たちは死罪。おまけに、農民たちが恐れた隠し田も露見し、険見も実行されてしまうわけですから。しかし、取り潰された領主の次のお殿様はやはり教訓を心得た人だったようなのですが、少なくともそれくらいのことがなくては死んだ人たちは浮かばれません。

 キャストも豪華で力の入った映画ですが、どうも新劇的ゲンコツ芝居の香りを感じてしまったりします。それに、網野善彦の本をどっさり読んだ後だと、こういうインテリで社会的な責任も自覚した農民のあり方というものがそう新しい発見でもないこともこの映画の感動をそいでいるかもしれないです。なんとなく、歴史理解に役立つ学習映画みたいに感じるのは、きっと私の個人的見解です。
 でもやはりちょっとわかりにくい。お殿様もなんだか馬鹿殿みたいなだけだし、上訴というのは死を覚悟してするものだから、そこまで覚悟するだけの環境がはじめが説明不足に思えるので、ストーリーが進むにつれて主役陣の若い面々がやたらと力が入った演技になるのに気持ちが付いていききれない。

 とは言いつつも、広く見られるといいなあ、と思う映画ではあります。
 私のような年寄りっ子の良いところは、ちょっと前の一般的共通知識を受け継がせてもらえたことで、佐倉宗吾、松木長操、磔庄佐衛門、文殊九助などをヒーローとして知ったこともお得なことでした。それに、彼ら義民たちの訴状が手習いの手本として伝わっていたことも聞かされました。
 一揆・上訴の首謀者は、いわば為政者・領主の面子の為に死ぬべき運命を受け入れる覚悟をして、実行に及ぶわけです。こういった日本のフォークヒーローたちはもっと記憶されてもいいんじゃないかと思うのです。

コンスタンティン (2005/米)

2005年04月22日 | 映画感想か行
CONSTANTINE
監督: フランシス・ローレンス
出演: キアヌ・リーヴス レイチェル・ワイズ シア・ラブーフ

 人には見えない異界のものが見えてしまうコンスタンティンはその能力で悪魔を地獄へ追い返している。そしてヘビースモーカーである彼はそのために余命一年の肺がんである。ロサンゼルスの刑事アンジェラは双子の妹イザベルの自殺の真相を知るためにコンスタンティンに接触。そこから二人は今の世界のバランスを崩し、人間界に入り込もうとする悪魔がいることを察知する。

 キリスト教苦手なんです。大学でキリスト教概論きっちりとらされましたが、それでますます苦手になりました。とてもじゃないけど奥までは手が届かない、って気分にさせられます。だからこの映画見ていて、「ガブリエル」「ルシファー」の名前が飛び交っているのに「この意味づけは~?」と果てしなく「?」が湧いてきて落ち着かないのです。それに天国と地獄も、キリスト教が骨まで染み付いてる人と私では感じ方違うんだろうなあ、と。
 映画の話に戻ると、それでも、天国も地獄も「共にここにある」という世界観は映画だけの情報できっちり伝わりました。しょっぱなからまるっきり「エクソシスト」 それにアクションが加わりました、といったかなりオーソドックスな印象の映画です。「マトリックス」一作目のように目を見張るようなアクションの新しさとか、そういう感じはないです。
 目の保養になるハリウッド・ハンク、よれよれのキアヌ・リーヴスにうっとりするにはいい映画でした。
 ただ、私はキアヌ・リーヴスにはどうしても生真面目さを感じてしまいます。これは天使と悪魔の両方に悪魔的な愛され方をされる役ですからもっと危険な吸引力に満ちた主人公のような気がするのですが…まあきれいだからいいですが。
 
 ティルダ・スウィントン、こういう役なんですね。「ナルニア」ではどうなるのだろう、という目で見ていました。ルシファー、最上位の悪魔なのにガラ悪すぎないですか?「バルフィザール」なんか小物風ですね。魂担当のサタンらしいのに。
 そこそこ面白い、とは思いましたが、最後はちょっと。ガムなんてあんまりだわ。

ゲロッパ! (2003/日)

2005年04月11日 | 映画感想か行
監督: 井筒和幸
出演: 西田敏行 常盤貴子 山本太郎 岸部一徳

 数日後に収監されることになったヤクザの組長・羽原はキング・オブ・ソウル、ジェームズ・ブラウンの熱狂的ファン。そして25年前に生き別れた娘かおりがいる。ジェームス・ブラウンの名古屋公演には日程が合わずに行けなくなったが、羽原は身辺を整理しようと組員に組の解散を宣言、娘にあおうとする。しかし、一方で羽原の弟分・金山は、子分の太郎たちに「ジェームス・ブラウンをさらって来て羽原に会わせろ」と命令する。

 う~ん う~ん。
 それなりにクスクス笑えましたけど、やっぱり「ゲロッパ!」の語感とおっとりしたヤクザとJBの組み合わせとか、その設定が生ききってないという恨みが残る惜しい映画。
 井筒監督の用意してくれてるものが理解できるんだけど、身体からはのれませんというもどかしさがありました。
 それに、ダチョウクラブとか、世情に疎い私にはわからない部分が、わからないものはしょうがないと見過ごせなくてなんだかひっかかってしまう。
 音楽やダンスシーンは好きだし、ラストは一緒に踊ってましたが、やっぱりはじけ切らない、不完全燃焼の感が残ります。西田敏行はさすがなんですが。

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コーヒー&シガレッツ (2003/米)

2005年04月06日 | 映画感想か行
COFFEE AND CIGARETTES
監督: ジム・ジャームッシュ
出演:
「変な出会い」 ロベルト・ベニーニ スティーヴン・ライト
「双子」 ジョイ・リー サンキ・リー スティーヴ・ブシェミ
「カリフォルニアのどこかで」イギー・ポップ トム・ウェイツ
「それは命取り」ジョー・リガーノ ヴィニー・ヴェラ ヴィニー・ヴェラ・Jr
「ルネ」 ルネ・フレンチ E・J・ロドリゲス
「問題なし」 アレックス・デスカス イザック・ド・バンコレ
「いとこ同士」 ケイト・ブランシェット  
「ジャック、メグにテスラコイルを見せる」 メグ・ホワイト ジャック・ホワイト
「いとこ同士?」 アルフレッド・モリナ スティーヴ・クーガン
「幻覚」 GZA RZA ビル・マーレイ
「シャンパン」 ビル・ライス テイラー・ミード

 ジム・ジャームッシュ監督のコーヒーとタバコのある11の情景をそれぞれ強烈な存在感や個性の出演者で描いた短編集成。
 
 時間のやりくりがうまくいかずに、仕事の後でなく、仕事前に見なければならなかったのが残念。ほんとに身体をほぐしてくれるような映画だったし、ものすごくいかしたモノクロ映像だった。
 ジャームッシュ監督が17年にわたって撮ってきた短編の集成なのに、全然年月の経過による違和感を感じなかったし、テーブルを上から取った場面や、同じセリフや警句があちこちちりばめられていて、きっちり芯の通ったオムニバスに見えます。でもそんなことは副次的なことであって、出演者たちのコーヒーとタバコを間にはさんだ(紅茶もわざとらしく出て来るけど)緊張感とずれのかもし出す雰囲気に、なぜか神経がほぐされていく気分。
 なんたって、出演者全員クセ者ばかりだし、それがまた癖のある役をどこかはずした自分の写し絵みたいな風に演じているので本当に「参った」と思わされます。これが真の彼らであるはずもないけど、実像以上に本人らしく見えちゃう…とでもいいましょうか。

 もちろんコーヒー飲まずには帰れなかったし、帰りがけ渋谷駅への途中の生地屋で市松格子の生地買っちゃいましたよ。ランチョンマットにするか、クロスに仕立てるか今から考えます。
 それに写真を手許に欲しくてプログラムも買ったけれど、その写真は映画ほど光と影の深みがなくてちょっとがっかり。

CUTIE HONEY キューティーハニー(2003/日)

2005年03月16日 | 映画感想か行
監督: 庵野秀明
出演: 佐藤江梨子 市川実日子 村上淳 及川光博 小日向しえ 片桐はいり 新谷真弓

 ダメOLの如月ハニー。しかしそんな彼女の正体は、世界屈指の科学者・如月博士により創り出された無敵のパワーを持つアンドロイド“キューティーハニー”。今は亡き如月博士の遺志を継ぎ、ハニーのパワーの秘密である“Iシステム”を研究する宇津木博士が秘密結社パンサークローに誘拐されてしまう。

 映画友達が見てきて「つまらなくて寝た」と言っていたが、私はけっこう楽しかった。とりあえず「キューティー・ハニー」原作とアニメには取り立てて思いいれはありません。昔キャラクターハンカチ持ってたような記憶はあります。
 佐藤江梨子の身体がいい。全然隠微さとか影がなく見事に陽性な伸び伸びした身体で下着姿でも見ていて気分がいい。アクションはドタドタですけど、ご愛嬌かな。それにほかの出演者も漫画をわかってきちっと演じていて、パンサークローの四天王、特に及川光博さん素敵。
 ファーストシーンが「何だこれ?」だったのと、途中の展開が間延びしてるな~とは思ったものの、海ホタルや、ジルタワーのところは好き。色使いもけっこう好き。

 でも、ストーリーの中心に恋愛よりも女同士の友情を持ってきたのは時代でしょうか?
 
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ガス人間第1号 (1960/日)

2005年02月26日 | 映画感想か行
監督: 本多猪四郎
特技監督: 円谷英二
出演: 土屋嘉男 三橋達也 八千草薫 左卜全 佐多契子

 銀行での連続強盗殺人を捜査する岡本警部補は、容疑者として落ち目の日本舞踊の家元・藤千代を逮捕する。しかし彼女は無実で、自在に身体を気体化できる能力を持った男が真犯人だった。

 東宝変身人間シリーズ。これも怖いです。特撮で、ガス人間が風で拡散したらとか、事件を解決しようとする警察の対応なんかは「?」マークが飛び交うけど、ストーリーはまったく大人向けの深刻なメロドラマ。
 マッドサイエンティストの人体実験で身体をガス化する特殊能力を持った人間が、愛する舞踊家元のために銀行強盗で金を作り盛り立てようとする。それで、その舞踊家元も、事情を知り、彼の心に応えて悲しい決断をするというもの。
 ガス人間の土屋嘉男の世をすねた感じも名演。
 「マタンゴ」の方が怖さとおかしさ混在のギャップが大きくて、こちらは怖さとドラマの悲しさで、あまり古くておかしく思えるところは少ない。ガス人間製造マシンがオモチャっぽくて笑えるくらい。
 
 それに、なんと悲恋物語だったりもして、八千草薫さんがスレンダーでめちゃくちゃ美しい。これを見てNHKの「武蔵」で感じていた違和感が納得できる。やはり着物美人は幽玄なる柳腰でなくてはいけない。最近のタレントはナイスバディすぎて着物に身体ががおさまらない感じがする。

余談…この映画はキャバレーシーンが出てこないので、うちの高校生がとても残念がっていた。やたら昔のそういうシーンや昔のネオンサインが好きなヤツなので。でも、とても狭い国道を見て、ボンネットトラックや古い車を見て面白がっていた。

荒野のマニト(2001/独)

2005年02月20日 | 映画感想か行
DER SCHUH DES MANITU
監督: ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ
出演: ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ クリスチャン・トラミッツ スキー・デュ・モン マリー・ボイマー

 アパッチ族の掟で、命を助けられた白人のレインジャーと血の義兄弟となったアパッチ族の15代目酋長アバハチ。二人は詐欺師のサンタ・マリアに金を騙し取られた挙句に、殺人の濡れ衣を着せられ、ショショーニ族からも追われ、荒野を先祖から伝わるお宝を求めて走り回ることになる。

 ドイツではドイツ映画史上最高の興行成績を記録する大ヒットとなったスラップスティック・ウエスタン・コメディ。これが、とびっくり。一部で熱狂的に大うけとか言うのならわかるけど、このどこかで見た映像が次々に出てくる、時々出てくる歌とダンスも、まあ、そこそこじゃありませんか、というこの映画がそこまでヒットとは… ドイツの人というのも測りがたいですねえ。
 ドイツ語に関してはさっぱりで、言葉は字幕を頼る以外にまったくわからないけど、例えば「クイーン・コング」みたいに日本人向けにギャグの書き換えなんてあるのでしょうか?ちょっとお下品なのはいっぱいありますが、モトネタへの悪意が感じられるパロディはないのでいいのかな。くすっという笑いと、「はあ…」という困り笑いが続きます。新味は特に感じられないけど、役者さんはしっかりしてるし、テンポよく進み、それなりに笑えるコメディ。

 これだけで、やめときゃよかったんですが、見てしまいました。

だいじょうぶマイ・フレンド(1983/日)
監督: 村上龍
出演: ピーター・フォンダ 広田玲央名 渡辺裕之 根津甚八

 これについてはコメントは出来ません。
 ピーター・フォンダも良くやりましたね。
 若い時代の役者さんを見てみたいという目的なら、内容は別として見てもいいかも。

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キー・ラーゴ (1948/米)

2005年02月15日 | 映画感想か行
KEY LARGO
監督: ジョン・ヒューストン
出演: ハンフリー・ボガート ローレン・バコール クレア・トレヴァー エドワード・G・ロビンソン ライオネル・バリモア 

 大戦後、フロリダの突端にあるホテル・ラーゴに亡くなった戦友の家族訪ねた元少佐フランク。そこは戦友の足の悪い老父と未亡人とで経営していたが、たまたまその時ギャングたちの取引に占拠されていた。そこへ激しい暴風雨がやってくる。

 これ、元は舞台劇だったそうで、なるほど狭いところでほとんどが進行していきます。
 BS2アカデミー賞特集のひとつで、ギャングのボスの情婦を演じたクレア・トレヴァーの助演女優賞受賞作ですが、可能性と才能に光り輝いていた若い頃をしのばせる、盛りを過ぎて荒れた生活にやつれた美人役をきちんと演じているものの、それほど唸らされることもなくて、やはり「駅馬車」の彼女は素敵だった…なんて思いました。〈素人の感想ですから!)
 ボギーという人は、若いヒヨヒヨ時代が思い浮かばない人。それで実力はあるけどちょっとすねた役。「我々が命を賭けたのはこんな世界を作るためじゃない」という虚無を抱えてしまったけれど、やはり彼本来の善なる生き方を変えられないことを悟っていく。そういう下手にやったら気恥ずかしいような役を、特撮下手だアとか思いながら彼と、きっとジョン・ヒューストンのうまさで、引き込まれてドキドキして見てしまいます。ローレン・バコールもあっさりした衣装でいかにもそれらしくきれいですが、やはり、この映画ではライオネル・バリモアとエドワード・G・ロビンソンを見てキャッキャと喜んでいました。
 ライオネル・バリモアはホテル経営者で、その近辺の先住民にも信望がある、アメリカ民主主義のいいところの精神の象徴みたいなジイサン。でも足が悪くて動けない。でも負けてない。言いたいことは言う。
 エドワード・G・ロビンソンの迫力もまた素晴らしくて、人を人とも思わない、それだけに脅しの効かない自然に対して見せるあの怯えの演技とか、「深夜の告白」の腹の据わった男とまったく違った、大物そうだが肝の小さい男の演技うま~い!
 この映画は、この2人のウエストの大きいジイサン対決がとても楽しい映画でした。

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キング・アーサー (2004/米)

2005年02月14日 | 映画感想か行
KING ARTHUR
監督: アントワーン・フークア 
製作: ジェリー・ブラッカイマー
出演: クライヴ・オーウェン キーラ・ナイトレイ ヨアン・グリフィズ ステラン・スカルスガルド

 イギリスの伝説のアーサー王を新視点で描く。
 ローマ帝国の版図が拡大しきっていた頃、各地から集められ、15年の兵期を勤めたブリテン駐留のローマ騎士アーサーと、その仲間の騎士たちは、現地の勢力に包囲された危険な死地へ、少年とその家族を救出に行くとという最後の指令を受ける。

 今まで知ってるアーサー王伝説とは全然違ったもので、ランスロットはグウィネビア王妃と道ならぬ恋に落ちるまもなく、なんとアーサーとグウィネビアの結婚前に死んでしまいました。エクスカリバーはあんなところから引っこ抜いてるし、キーラ・ナイトレイのグウィネヴィアは戦化粧で肌もあらわに大暴れ。今まで知ってた「アイバンホー」の貴婦人イメージなどとは打って変わった変貌振り。荒ぶる野生の美女にしては顔が都会的かも…でもきれいだからいいです。
 最後まで見てやっぱり「主役が地味だ~」と思ってしまいました。特に、エンディング。なんか気が抜けちゃった。ストーンヘンジってほんとにこうやって使ってたのか?とかそんなこと考えちゃったし。
 これが現代物の戦争映画でクライヴ・オーウェンが指揮官とかだったら、きっと納得でしょうけど、ヒーローになるにはなんか地味。常識人に見え過ぎて華がないというか…まあ、それなりかっこいいんだけど、この映画は周りの「ナイツ・オブ・ラウンド」のほうが絶対かっこよく見える。
 ランスロット役ヨアン・グリフィズも、ガウェイン・ギャラハッド役も見せ場はぐっと来ます。あの氷原のシーンの戦士の皆様にはほんとにしびれたッ。
 強くて誇り高い男の群像劇としてはなかなかだったので、ラストは特典映像の「もう一つのエンディング」のほうが絶対いいし、あんまり「自由」とか連呼しないほうが、己の誇りにかけての死を決意したアーサーの姿が、劇的に映ると思う。

きみに読む物語 (2004/米)

2005年02月10日 | 映画感想か行
THE NOTEBOOK
監督: ニック・カサヴェテス 
出演: ジーナ・ローランズ ジェームズ・ガーナー ライアン・ゴズリング レイチェル・マクアダムス

 老人療養施設で暮らす女性に、物語を聞かせる男性。
 それは、一目惚れから始まった若い、激しい恋の物語だった…

 愛の奇跡を描いた現代のある意味でおとぎ話。ジーナ・ローランズ、J・ガーナー共に大好きな俳優さんで、安心してその映画の世界に浸っていられました。「メッセージ・イン・ア・ボトル」と同じ原作者で、「メッセージ…」はちょっとべたべたすぎて引いてしまったけれど、やはりこの優しい物語にラストで自然に、思い切り泣けたのもお二人の演技あってこそです。

 これは、感想を書こうとすると、どうしても見る前に知らないほうが絶対に映画を楽しめるということを書かざるを得ません。

 ------以下はそういう感想です-------

 最近でこれくらい泣けた映画はありませんでした。この極めつけメロドラマなストーリーもさることながら、私が見てきた偕老同穴、比翼連理な老夫婦の記憶に泣かされたのでした。
 大恋愛の末に結ばれた二人の日常というのは、映画の中では写真や、成長した子どもたち、アリーの母のエピソードから暗示的に示されるだけになっているけれど、二人がお互いの愛情にこたえあう、輝かしい日々を持っていることが今の二人から明らか。私が人生の先輩の方々を見て本当に素敵だと思ったのは、こういう過去を共有していて、お互いへゆるぎない信頼があるのが感じられることでした。そういう関係になれるのは、とても幸福なことだけれど、ただ何もしないでそうなれるわけではない…それもわかったのでした。
 若い二人の苦節を乗り越える愛も素敵だった。やはり私は、焦点はアリーの決断にあると思った。アリーの母も同じように苦しみ、彼女なりの決断をした。しかし彼女は「自分は今幸福である」ことを言い聞かせる儀式を持っている。人間にとって本当に自分の望むことを見つけ出すのは、実は大変に苦しい作業であり、捨てて悔いない選択肢なんて実は存在しないのかもしれない。アリーは、母を理解し、そして決断した。
 その人生がこの愛の奇跡で締めくくられるならば、なんと祝福された人生であることか。

 ちょっと残念な点。一目ぼれシーンで、彼女が画面からさほど浮き出して見えないこと。もっと上手に光り輝かせてくれたら、私もノアと一緒に彼女に一目ぼれできたのに。ノア役のライアン・ゴズリング、とてもきれいでしたが、私の目から見るともうちょこっとだけ、心の底の狂おしいほどの炎を感じさせて欲しかった、なんて思ってしまった。

恋は邪魔者 (2003/米)

2005年02月01日 | 映画感想か行
DOWN WITH LOVE
監督: ペイトン・リード
出演: レニー・ゼルウィガー ユアン・マクレガー

 男なしでも生きていける!と提唱する「恋は邪魔者」というベストセラー本を書いたバーバラ・ノヴァク。彼女に女をとっかえひっかえするサイテー男と名指された敏腕記者キャッチャー・ブロックは、バーバラも恋に弱いという暴露記事を書こうとNASAの宇宙飛行士になりすまして、彼女に近づく。

 そこそこ面白かったけど、これ、主人公がロック・ハドソンとかケーリー・グラントだったら…なんてつい思ってしまった。そしたら、さっきALLCINEMA ONLINEで見たら、これ、ロック・ハドソンとドリス・デイコンビの映画へのオマージュなんですってねえ。あの顔ボツボツだらけのハドソン、かわいかったですねえ。ごめんなさい、そう知ったらやっぱりもう一味欲しくなりました。それに私、男性の靴下ガーターに弱いんです。「街角」でジミー・スチュアートのガーター見てから。今の男性ににガーターしろとは言いませんが。膝下長くないと駄目ですね、あれ。
 ストーリーは二転三転、ひねってありますが、ストーリーよりファッションとインテリアの色使いで楽しんだ映画でした。
 ラストの歌は、お二人とも上手で素敵でした。

クジラの島の少女 (2002/ニュージーランド・ドイツ)

2005年01月31日 | 映画感想か行
WHALE RIDER
監督: ニキ・カーロ
出演: ケイシャ・キャッスル=ヒューズ ラウィリ・パラテーン ヴィッキー・ホートン クリフ・カーティス グラント・ロア

 クジラに乗ってやってきた先祖の伝説を守って生きるニュージーランドのマオリの一族。族長の家に男女の双子が生まれ、母と男の子は亡くなり、女の子だけ助かった。そして父は故郷を去り、その子は祖父母の元で育てられる。
 族長候補の男子を望んでいた祖父は、父が先祖の英雄と同じ名をつけた少女バイケアを愛しながらも、女であることへの失望を隠せない。バイケアは祖父とこの地を強く愛するがゆえに悲しみは深い。

 ドラマは大きいけど大袈裟がなく、感動はじわじわっと来ていつの間にか涙で、身体中の空気の入れ替えしてもらったようなさわやか感が残ります。これ、原作は児童向けではないだろうか、と思った。少し違った世界のちょっとした奇跡の物語を描いた、すごく出来のいいティーン向け文学の読後感によく似ている。

 役者さんたち、ほんとに上手いです。おじいちゃんを見ていると「頑固者…」と思わず呟いてしまう。バイケアに対する愛情と族長としての理不尽な怒りを両方とも本当に山ほど持ってる難しい役どころを、実に的確に演じていると思うし、おばあちゃんの理性的な優しさも素敵。パパもみんなきれい。何より主役の子の伸びやかさと感情の豊かさは素晴らしい。
 祖父の感情を理解して、それでも盲従せずに努力していく姿、愛情を素直に受け止めてもらえない悲しさに涙する姿…思い出しただけで私も涙がでそうになる。
 おじさんもみんな芯の優しい気持ちのいい人たちで、本当に気持ちのよい映画だった。

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五線譜のラブレター DE-LOVELY (2004/米)

2005年01月22日 | 映画感想か行
DE-LOVELY
監督: アーウィン・ウィンクラー
出演: ケヴィン・クライン アシュレイ・ジャッド

 1920年代のパリで、コール・ポーターは年上の離婚暦のあるリンダと出会った。リンダは、彼の才能と優しさに、ゲイでもあることを承知で結婚する。そして彼女の尽力もあってポーターは売れっ子の作曲家になる。
 しかし彼の性癖と乱れた生活は彼女を苦しめる。

 さすがに音楽が素晴らしくて。
 ケビン・クラインがあんなに歌えるなんて知らなかったけれど、やはり実力派の歌手が次々に登場するステージシーンなどは、もうただただうっとり。見終わった時には、そうお酒の飲める人なら極上の酒に良い加減で酔った幸福感、みたいなものでしょうか、私なら穏やかで好きな絵ばかりの小美術館でひと時過ごしたというのに同種の幸福感に酔っておりました。

 ドラマ自体はけっこうシビア。
 コール・ポーターはかなり困った男に見える。でもそのあり様が自然でイヤな男に見えないのはケビン・クラインがうまいというべきでしょう。リンダが彼にとってのミューズであることは、彼は分かっている、分かっていて、しかも甘えてしまう。天才とは、どこかがずれているのか、と思わせられる。リンダの姿はいつも孤独。でもその苦しさが分かっても、結局彼のもとに帰って支えてしまう。
 彼女は、一人の男と、その男に与えられた"GIFT" を愛してしまった。それはとても大きく、心が捉われずにいられないものなのだろう。特にそれを理解するものにとっては。彼はその最上の理解者を得て、羽ばたき、それを亡くした後の喪失感に苦しむ。この2人もまた「天与の出会い」をしたのだろうな…

 この邦題もちょっと苦しい感じがあるけど、仕方ないでしょうか。あちらの人は、原題見ただけであの曲が流れるのでしょうから。
 個人的には「True Love」の曲の使い方が嬉しかった。あの曲は心にものすごい純粋なものを持っている人でないと書けない曲だと思う。

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危険な関係 (1959/仏)

2005年01月11日 | 映画感想か行
LES LIAISONS DANGEREUSES
監督: ロジェ・ヴァディム
出演: ジャンヌ・モロー ジェラール・フィリップ ジャンヌ・ヴァレリー アネット・ヴァディム ジャン=ルイ・トランティニャン

 ド・ラクロの古典的小説『ヴァルモン』の翻案映画化。
 お互いに愛人を作り、けしかけあう外交官夫妻。妻は愛人が結婚するのを知り、夫にその婚約者を誘惑させる。だがその彼女もほかに恋人がいた。夫が火遊びのつもりの人妻に本気になったとき、その関係は崩れる。

 昨年のBS2の放送の録画をやっと見た。
 映画としては、時代のせいでしょうか、今見るとそれほど衝撃的にインモラルでもなく、ジェラール・フィリップは素敵だけど、どうにも「冷酷」を背負いきれない線の細さがあります。それこそが彼らしさなのでしょうか。
 結局、ジャンヌ・モローを見る映画、ということになるのでしょう。 
 この映画の彼女の悪女ッぷり、素敵ですねえ。ほんとに美しくて、悪くて、その身体の中に得体の知れないものを抱えているのをうかがわせて、しかも知性にあふれ、品があって。力量のある役者こそが悪徳を持ちこたえられる、としみじみ感じさせてくれたのでした。

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