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虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

グラン・プリ(1966/アメリカ)

2005年11月28日 | 映画感想か行
GRAND PRIX
監督:ジョン・フランケンハイマー 
出演: ジェームズ・ガーナー
    イヴ・モンタン
    三船敏郎 
    エヴァ・マリー・セイント

 F1レーサーたちの姿を描いたアクション。ジェームズ・ガーナーが主演のアメリカ人レーサーを演じ、イヴ・モンタンなどのライヴァルと競い合う。そして皆が私生活でもそれぞれの問題を抱えている。
 三船敏郎はガーナーの乗る車で参戦するヤムラ自動車社長を演じている。

 さすがはフランケンハイマー監督。車は古い。でも迫力はすごい。今のオンボードカメラ中継より、わかってる人間が撮った映像のほうが迫力が勝ってしまうのである。最初のモナコの公道レースの音と振動は血管をかき回しそう!22インチモニターじゃいや!百倍大きい画面で見たい!もっといい音響設備で聞きたい!と、いきなり血が沸騰してしまう。
 リアルなモナコについで、あるレースはファンタジックに、ある時は記録映像風に、とレースの撮り方を全部変えている。配役がいい。今のレーサーに比べるとオジさん多いかなとは思っちゃうけど、イヴ・モンタン渋い。素敵。イタリア・フランス・英語・スペイン語こなしてます(ここのところは私のコンプレックス)。
 ストーリーは地味です。死と隣り合わせに生きるってことを(実は人間みんなそうでも)意識せざるをえない職業だし、結婚生活はみんなガタガタ。その愛憎のドラマなので、極めつけメロドラマ。最後はうまくまとめてるけど、どうしてもドラマよりクルマに昂奮してしまう映画。
 ミシン作ってたヤムラ自動車って、やっぱりモデルはトヨタですかねえ?それともホンダ?三船敏郎の日本人も、いかにも外国人の考える日本人みたいだけれど、どっしりして威厳がある。
 ピット・シーンが入ってこないんだけど、当時のレギュレーションって給油なしだったのかな?メキシコグランプリってあったの知らなかった。

グジラ 大怪獣襲来(1998/アメリカ)

2005年11月20日 | 映画感想か行
監督: アーロン・オズボーン
    マイケル・ディーク
出演: R・J・マクマレー
    ロバート・ガルシア
    アリソン・ローマン 

 地球侵略をたくらんだロード・ドゥームが、怪獣グジラを地球に送り込む。そして銀河警察の基地に先制攻撃、基地は十分な機能を失う。そこで銀河警察は、ヒト型でない宇宙人を地球に差し向ける。

 あまりのチープさに声もありませんでした。「スター・トレック」と怪獣映画と「E.T.」をごたまぜにして、大学生の自主制作風味をまぶしたような… しかし、自主制作ものだってもうちょっと辻褄あわせには気を使うような気もします。
 ラストなんか、良い宇宙人とかかわったおにいちゃんが、世界を救うために8時間で製作した武器の接触不良を直すために、道具箱を抱えて走り回り、政府のエージェントはその辺のお姉ちゃんと互角に戦ってるし、怪獣は体制が整うまで待っててくれるし、もう「腹いて~」と呻きながら笑ってました。そして地球の危機が去り、ロード・ドゥームを捕まえにいった銀河警察は、予算の関係でしょうか、素手で闘うんですね。
 怪獣が叩き壊すビル群は発泡スチロールのように壊れるし、あまりに旧式なテレビとかすべてがペナペナ感にあふれているので、数十年前の映画と思ったくらい。

 報道途中で中断するジャーナリストは、初代ゴジラの「さようなら~」シーンを思わせるし、エメリッヒ監督「ゴジラ」の看板を壊すシーンなんか、明らかにゴジラ意識していると思います。

 まあ、それなのに、この映画で「マッチスティック・メン」と「ビッグ・フィッシュ」のアリソン・ローマンを見るとはねえ!役者の皆さんも駆け出し時代はいろんなものに出ているんですね。

キャプテン・ウルフ (2005/アメリカ)

2005年11月02日 | 映画感想か行
THE PACIFIER
監督: アダム・シャンクマン
出演: ヴィン・ディーゼル  シェーン・ウルフ
    ローレン・グレアム  クレア・フレッチャー
    フェイス・フォード     プラマー夫人
    ブリタニー・スノウ    ゾーイ・プラマー
    マックス・シエリオット     セス・プラマー
    クリス・ポッター     ビル・フォーセット大佐

 対原爆用の特殊装置を開発したプラマー博士が誘拐され、それを救助に行った特殊部隊のウルフ大尉は失敗し、博士は死に自らも撃たれる。怪我が癒えた時、彼に与えられた任務は、プラマー博士の家族を守ることだった。
 プラマー夫人の留守中、家政婦まで出て行き、彼は5人の難しい年頃から赤ん坊までの子どもたちの面倒を見なくてはならなくなる。

 シュワルツェネッガーの「キンダーガートン・コップ」と同じような、コワモテの筋肉マンが日常些事と家事に直面してあたふたして、でも新しい世界への愛情に目覚める、とかそんな感じですが、シュワちゃんの方が上手ですねえ。こういう映画は、今までの映画で出来上がったイメージがあってこそおかしみが生きるというものでしょうが、私「リディック」と「ワイルドスピード」しか知りませんしねえ。「ターミネーター」に比べると弱いよね。それに、白紙状態では、導入のアクションだけでは、そこまでガチガチの非情のタフガイを印象付けるのは無理だろうと思います。

 総じてアクションが少ないかな。ドメスティックな生活でオタオタ部分が細かく描かれてます。でもそこにひっきりなしに敵が襲って、それを撃退してるのに、あまり誰も深刻に受け止めてない、とか主人公の生きる暴力の世界とそれに縁のない世界の落差がもっと浮き上がったほうが、お話としてもコメディとしても私はよかったんじゃないかと思うけど、完全にお子様と一緒ご家族向け映画みたいだから、これでしょうがないのかなあ。

 ああ、でも昨日「続・夕陽のガンマン」たっぷり堪能しちゃったばかりで、それでこの映画でエンニオ・モリコーネ聞いたときはつい「ぐははは…」とはた迷惑に声だして笑ってしまいました。オマケに博士の名前がプラマーで…ってミュージカルシーンでは素直に笑わせていただきました。

河内山宗俊 (1936/日本)

2005年10月13日 | 映画感想か行
監督: 山中貞雄
出演: 河原崎長十郎  [4代目] 河内山宗俊
    中村翫右衛門  [3代目] 金子市之丞
    市川扇升   直次郎
    山岸しづ江   お静
    原節子    お浪

 ヤクザの親分に使われて露店から金を集める浪人・金子。賭場と酒場の女将の女房と二人で生きている河内山宗俊はふとしたことから意気投合する。そして河内山のところに出入りする直次郎は、実は広太郎という、昼は雑貨屋、夜は甘酒で懸命に生きるお浪の弟だった。広太郎のために300両という借金を負い身売りしたお浪を、二人は何とか救おうとする。

 これ、話の図式は単純なんですが、結構ジ~ンと来ます。なんたって原節子が美しい。それも本当に無垢な美しさ。池波正太郎が「剥きたての茹で卵のような」という面白い形容詞で描くような、乙女の真に穢れなき清純さ、って感じです。甘ったれでダメダメな弟をひっぱたいて無言で身売りを決心するシーンの顔のアップからのシーンは、文楽人形のようです。大の男が命を捧げて悔いない美女、というより永遠の乙女。ただ美しいだけじゃダメで、この無垢な清らかさが命取りなんですね。そして手も触れぬ花のために、どぶ泥の中に死んでいくのです。…山田風太郎の小説を思い出させます。「二都物語」もちょっと。

 直侍がこのヒヨヒヨの直次郎では原典からするとあんまりだな、とは思う。宗俊、市之丞の「身をえう無きものと思いなし」たような男たちの、すがれた男っぷりが素敵です。「人のために死ねるんなら、生きてる意味もある」という呟きや、意気がってるだけの広太郎を「一人前の口をきくな」とどやしつけてそれが実感を持つのは、二人ともが世の無常を骨の髄まで知った男たちだからです。この映画も暢気な役付き侍やヤクザ、色町など、面白さと滑稽の裏側に世の非情さが漂います。

 この映画では「丹下左膳」ほどには場面転換などに驚かされないんだけど、進行がなめらか、ともかくテンポがめちゃめちゃいいです。

希望の降る街 (1942/アメリカ)

2005年09月30日 | 映画感想か行
THE TALK OF THE TOWN
監督: ジョージ・スティーヴンス
出演: ケイリー・グラント
    ジーン・アーサー  
    ロナルド・コールマン 

 工場が全焼し、工場長が死ぬ。放火殺人で工場主に告発されたティルグは、町の感情を敵に回し、死刑は免れそうも無い。脱走した彼が逃げたところは、ガールフレンドの家の別荘。そこはちょうど、次期最高裁判事に推されようという、法学者が論文執筆のために借りたところだった。

 スターが揃って、映画自体もサスペンス、コメディ、ラブストーリー、シリアスな法廷シーンもちょっぴりというわけで、なかなか贅沢な映画でした。
 象牙の塔の教授が、実生活で不正と戦うティルグと、町の中の正義が通らない現実を知り、実力行使しても無実の彼を守ろうとする。そして、ティルグのほうは教授の高潔さを感じて、最高裁判事としての彼に傷をつけまいとする男同志の友情が育つ。そしてジーン・アーサーは、二人の男の間を揺れて、最後までどちらが本命かわからずに見るものを引っ張る。
 ティルグ役のケイリー・グラントの、ブルーカラーでも、ホワイトカラーでも馴染む演技力とシリアスなのにどこか暢気な逃亡者もあまり不自然でない軽やかさ、ジーン・アーサーの前向きな明るさ、コールマンの素敵な紳士ぶりにどっしりした安定感と、日本未公開とはいえ、今まで全然知らなかったのが不思議なほどリッチ感のある映画。
 最後はほっとするハッピーエンド。

 まあ、アメリカの正義が健在な時代のストーリーですが、それでも、感情が煽られるとリンチも辞さないというか、やはり「血に飢えた」といいたいような大衆気運が、わりと簡単に醸成される状況は恐ろしい。その中で、敢然と正義を守ろうとする弁護士さんも描かれるけど、本当に信念に生きるというのは命がけな状況だとつくづく思ったりもする。

 昔の映画が好きな人のほうが楽しめる映画だろう。

五人の軍隊 (1969/イタリア)

2005年09月23日 | 映画感想か行
THE FIVE MAN ARMY
監督: ドン・テイラー 
脚本: マーク・リチャーズ ダリオ・アルジェント
撮影: エンツォ・バルボーニ 
音楽: エンニオ・モリコーネ 
出演: ピーター・グレイヴス
    ジェームズ・ダリー
    丹波哲郎
    バッド・スペンサー 
    ニーノ・カステルヌオーヴォ

 メキシコ革命当時。政府側の50万ドルの砂金を積んだ厳重警護の列車を襲うために集められた5人のプロたち。
 ボスであるダッチマン。爆破のプロ、怪力男、侍、軽業出身の銀行強盗。
 
 なんだか不思議な感覚の映画。マカロニウェスタンの香りはぷんぷんしてます。それど革命とか、動乱の匂い。オープニングのタイトルから「圧制と闘う民衆たち」みたいなバックの写真の上にキャストやらスタッフが出ます。音楽エンニオ・モリコーネですが、けっこう控えめに感じます。ラストも爽やかだけど、いささかポカンとして終了。

 得体の知れないかなり悪い凄腕たちが5人だけで、軍隊相手に実行不可能な砂金強奪をやっちゃおうという筋立てで、いつも闘う民衆たちが絡んでくるし、どうしても「七人の侍」のイタダキかな~?みたいに思う。でも見ている私の気合の乗り方が全然違う。
 丹波哲郎の侍がすごくかっこ良く描かれているけど、すごく類型的にも思う。無口な剣豪で久蔵さんタイプかな。お互い口利かないままに心惹かれあってる女性を救いに行き、あっという間に部屋中の敵を切り倒すシーンなど見せ場はけっこうあるけど、ここのチャンバラはあまりかっこよくない。
 列車襲撃とか、砂金を積んだ列車を別の線に引き込むための線路を細工するタイムアタックなど、プロの仕事を見せるシーンも用意されてるけど、「各シーンちゃんと取り揃えております」的に見えてドキドキハラハラ感が高まらない。なぜだ?

 個人的には「シェルブールの雨傘」のギイが、こんなに汚れちゃって…と。でもけっこう似合ってた。

ゴーストワールド (2001/アメリカ)

2005年09月21日 | 映画感想か行
GHOST WORLD
監督: テリー・ツワイゴフ 
原作: ダニエル・クロウズ
出演: ゾーラ・バーチ     イーニド
    スカーレット・ヨハンソン    レベッカ
    スティーヴ・ブシェミ     シーモア
    ブラッド・レンフロー     ジョシュ

 高校を卒業はしたものの、職も無く、当面の当ても無く過ごすイーニド。落とした美術の補習では前衛でハイテンションな講師に憮然とし、友人のレベッカと、フラフラする毎日。ある日、一度出会った女性を探す新聞広告を見た二人はその男に電話をかけ、待ちぼうけを食う姿を見て面白がる。そして家まで尾行までしてしまう。その中年男はレトロな音楽オタクで、イーニドは彼に興味を持つ…

 みんながみんな、きれいでもかっこよくも無い映画。
 女優2人もなんかムチムチして、それがグラマーという感じでなくて、よくあるしまりきってない成熟以前のムチムチに見えるのです。たいしたものです。それにあのすごいファッションを着こなしてるのがエライ。なによりも飛び上がったのがあの絵に描いたような美少年、ブラッド・レンフロのダサさ。目が信じられないくらい。
 アメリカのコミックの映画化というけど、アメコミもアクション系でなく、日本で言えば初期の柴門ふみや、とがった少女漫画を思わせるこういう青春ものがあるんだな、というのも改めて認識です。

 あの、ハイティーン2人の女の子は見てて実にわかって恥ずかしい。私もかつてそうだったという身に覚えが十分あるし、今そうなってるのも家にいる。
 下手に出てる優しいおずおずしたお父さんへのつっけんどんな態度ってなんでしょうね、卒業後の進路についての話をしてるのに知らん顔して、
「聞いてないんだけど」
ひえ~!覚えがありすぎて恥ずかしい!(うちの場合はこれをすると、2~3日の暴風雨は覚悟ね)
 でも本当に、あのころはワケわかんないいらだちをしじゅう抱えてたなあ。今はそれをやっても自ら恥ずかしいから適当なところで撤退してますが。
 それに、はぐれもの中年、ブシェミへの共感もなんとなく理解できる。またブシェミが可愛い!

 メイキング映像で「ゴースト・ワールド」について、スタッフ・出演者それぞれが違う解釈を語っていたのも面白かった。私は、自分を捉えきれない十代の今ひとつ現実世界と自分の間に薄膜ができているような妙な感覚の世界は日本でもどこでもゴーストワールドのようなものだと思う。
 あのラストは現実の出発の暗示とも、それまでの世界との決別でも、ともかくある時期の終焉を意味しているのでしょう。

カルメン (1915/アメリカ)

2005年09月02日 | 映画感想か行
CARMEN
監督: セシル・B・デミル
出演: ジェラルディン・ファーラー 
    ウォーレス・リード 
    ペドロ・デ・コルドバ

 これは、高校生が借りてきたビデオで、それがジェラルディン・ファーラー主演、セシル・B・デミル監督のものでそんなものがあったのか!と今までまったく存在を知らず驚いてしまった。
 ジェラルディン・ファーラーについては前に読んだ推理小説で知っていた。
 彼女は1901年にデビューし、1922年に引退するまでその美貌と演技力で、特に若い女の子に人気があったオペラ歌手。その取り巻きの少女たちはジェリー・フラッパーと呼ばれ、小説の中でもまるでベイカー・ストリート・イレギュラーズとはいかないまでも、彼女の忠実な協力者となっている。ことほど左様に人気のあったソプラノ歌手で、映画に出たことは知っていたが実際に見られるとは思っていなかった。
 このビデオは、はじめに解説、次に映画用に編曲したビゼーの曲の入った本編、そしてジェラルディンの声で名場面をもう一度というつくりで、なかなか親切で、しかもオペラファンにも嬉しい構成。

 このカルメンはオペラ以上に悪い女で、はじめからホセを篭絡する目的で近づくし、ホセもいかにも純情そうで、いわゆるマジメ男を堕落させる悪女カルメンのイメージどおりの展開。
 ファーラーは声がないサイレント映画なのに実に魅力的でしかも良く動く。思ったよりも小柄。表情が大きいので時々顔の影が濃過ぎるように感じるときはあるけれど、天性女優なんだなあ、と思う。カルメンに見えるのだ!声は軽やかだった。当時の批評も入っているが、あまり好意的なのは多くないようだけれど、彼女は人が見たがっているカルメンのイメージを捉えて実に的確に演じていると思った。
 デミル監督のスペクタクルなシーンはそれほど多くないけれど、闘牛場のシーンはさすがの熱気。でも群集シーンよりホセが我を忘れて人を殺してしまうシーンが一番迫力があったと思う。
 
 いいもの見っけ、と嬉しくなった一本。

 ちなみにファーラーが探偵役を務める小説はこちら↓



気ままなプリマドンナ / バーバラ・ポール
中川法江訳 サンケイ文庫 昭和61年第1刷(けっこう古い)
 カルーソーやトスカニーニなど実在の人物が登場し、ジェラルディンは勝気で魅力的でちょっとわがままな自信に溢れた、でも己をよく知っているヒロインです。この小説の背景になるのもカルメンの舞台。

それにしても、こんなビデオを借りてくる高校2年生…
私のようにオタクと呼ばれる道を歩むのではないかと気がかりである。 

CASSHERN (2004/日本)

2005年08月19日 | 映画感想か行
監督: 紀里谷和明
出演: 伊勢谷友介   東鉄也/キャシャーン
    麻生久美子   上月ルナ
    寺尾聰    東博士
    樋口可南子    東ミドリ
    及川光博    内藤薫
    唐沢寿明    ブライ

 二つの大国に別れ、戦いに荒廃した世界で東博士の研究の鬼っ子のようにして生まれた新造人間。彼らを人間として認めない人類に、新造人間たちはその驚くべき身体能力と機械兵器で人類抹殺を宣言し、襲いかかる。

 やたら色飽和度の高い独特の色彩感の画面が続く、絵としてはとても興味深い映画でしたが、休み無しの愁嘆場とゲームみたいな戦闘シーンのとり合わせが私には全然あいませんでした。すいません。
 ロボット系や上月博士の家のセットなどは深刻なムードの中でおもちゃのようでどうも妙に思えて仕方なかったし、あの歯車や特殊ビークルのジブリっぽい、アニメっぽい感覚にも実写のアニメ風アクションがピタリとはまるように見えない。このストーリーの中で見るのではなく、「こんなの出来ました」を見ているようで醒めてしまった。
 だから、製作者側の思い入れで押しまくられて「どうだ!」と言われた感じで、「はあ」としか言いようが無い。新造人間のブライのいきなりの演説は、無言の後の声あまりにも朗々として唐突過ぎて目が回りそう。ヒロインのささやきはセリフとして完成されてない感じで、彼女のセリフの厭戦思想が力負けしてるよう。
 私はアニメのキャシャーンを知らない。映画だけ見た人にもきちんと納得させてくれる親切心がもう少し欲しかった。

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(今日は一日中忙しかったのに、ああ、ほっとする映画見たかった…)ので、夜中に書き飛ばしたらやはり何が言いたいかわからないものになっていたので書き直しです。(19日朝)

キャットウーマン (2004/アメリカ)

2005年08月11日 | 映画感想か行
CATWOMAN
監督: ピトフ
出演: ハリー・ベリー    ペイシェンス・フィリップス
シャロン・ストーン     ローレル
ベンジャミン・ブラット    トム・ローン
ランベール・ウィルソン    ジョージ・ヘデア

 化粧品会社でデザイナーとして働くペイシェンスは内気で何事もチャレンジする前からあきらめてしまうようなタイプ。そんな自分を歯がゆく思っているが、変えられない。ある日彼女は、自社が恐ろしい副作用があるクリームを発売しようとしていることを偶然知ってしまい、秘密を守ろうとする会社によって殺されてしまう。しかし、彼女は不思議な猫のパワーを身につけ蘇る。

 ラジー賞まで受賞した作品なので、ある程度覚悟して見たのですが、アメコミものとしてはストーリーはあんなものでいいんじゃないかと思った。
 でも、ピトフ監督作なので、「ヴィドック」みたいなちょっとハリウッドとは違う感覚のアクションで新「キャット・ウーマン」が見られるかな、という期待があったんだけど、そこは見事にはずされた。内気なペイシェンスと、夜の街を飛び回るキャットウーマンの演じわけで、力を持ったという自信に満ちた女のかっこよさの表現が違うと思う。
 だって、マスクありと無しでは、絶対無いほうがカッコいい。やっぱり強さと、見るものを黙らせる美しさがほしいよね。それに猫としての行動が出てしまうシーンなんか「ああ、変だけど魅力的」というふうに見せてくれればよかったのに。
 「007」の時もハル・ベリーはそんなにアクション得意じゃないかも、と思ったけど、アクションもなんか違う感じがする。あんなに身体ひねって歩かなくてもいいので、密やかでしなやかさを感じさせてくれれば、力強さばっかりでなくていいと思った。飛ぶシーンも、もっとスピード落としても優雅さを強調してもらったほうが少なくとも私の感覚にはしっくり来る。

 で、変身前に、もっと猫とお付き合いがあるかと思ったら、あれだけなのね。猫に見込まれた、というのかな。なんかもっと人にも猫にも惜しまれるんなら、そこもう少し描き込んでほしかったような…

 でもやっぱり、ハル・ベリーはきれいですねえ。マスクもったいない。
 シャロン・ストーンは、ちょっと間抜けな設定だったけど、役柄には合ってたし、良くやってくれたと思います。

キャラバン(2000/フランス・ネパール・スイス・イギリス)

2005年06月08日 | 映画感想か行
CARAVAN
監督: エリック・ヴァリ
出演: ツェリン・ロンドゥップ  ティンレ
    カルマ・ワンギャル   ツェリン
    グルゴン・キャップ   
    カルマ・デンジン・ニマ・ラマ 
    ラクパ・ツァムチョエ 

「キャラバン」とはヤクを運搬手段にして通商するネパール高原民族の商隊のこと。厳しい山中の村では、食料を確保するために絶対に必要なことだが、危険で厳しい道のりである。キャラバンで長老ティンレの息子が事故で命を落としてしまった。ティンレは、その時同行していた息子の親友カルマを許せず、次のキャラバンの隊長をカルマでなく、まだ幼い孫のツェリンと共に自分が率いると主張する。カルマとティンレは別々のキャラバンを率いて出発するが…

 夜のBS放送をほけっと見始めて、そのうち食い入るように見ていました。ストーリーは平凡て言えば平凡で、自然の厳しい村の老いた知恵と経験と若い合理性と傲慢という石頭同士の頑固な対立。それが命のギリギリの点でお互いを認め合って指導者が世代交代していく、それに絡んでいく女性の優しさ賢さと全てを見つめる少年…図式どおりだけど、むちゃくちゃ迫力に圧倒されていました。ある伝説的な長老の子ども時代のお話、ということなので昔のことなのでしょうけれど、時間の流れと人と自然の関係が、身近にあるものとあまりにも違い、粛然としてしまいます。葬儀シーン(鳥葬)は言葉もでません。
 出演者の中で本物の女優は精悍な顔の少年の母親役だけだったそうですが、私は僧になった優しい叔父さんの顔に見とれていました。素人さんとは思えない。本物のお坊さんなのでしょうか。
 音楽も、耳について残ってしまうのが読経に見事に合わさった音楽。それほどエキゾチックなばかりではなくモダンでこの映画らしい雰囲気があって見事。
 それになんと言ってもカメラがすごい。キャラバンの厳しさと自然の大きさをひしひし感じさせる山中の映像もさることながら、製作にジャック・ぺラン(WATARIDORI)の名前も見えますが、コンドル(?)の飛ぶシーンのびしっとしたフレーミングなんか唸っちゃいます。

 ところで、ネット上で発見。
長老が!
 映画のラストで亡くなった長老ティンレさんがなんと笑顔でカメラに

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10日間で男を上手にフル方法(2003/アメリカ)
HOW TO LOSE A GUY IN 10 DAYS
監督: ドナルド・ペトリ
出演: ケイト・ハドソン  アンディ・アンダーソン
   マシュー・マコノヒー   ベン

 つい「キャラバン」に続けてみたものですから、こういうロマコメはまったく気が抜けました。
 ケイト・ハドソンの笑顔はチャーミングだし、マシュー・マコノヒーも思ったよりカッコ良くて「サハラ」は期待します。見る時期が悪かったのでいつか気楽な映画見たいときにでも見直そうかな、と。

キッチン・ストーリー (2003/ノルウェー、スウェーデン)

2005年06月04日 | 映画感想か行
SALMER FRA KJOKKENET
監督: ベント・ハーメル
出演: ヨアキム・カルメイヤー  イザック
    トーマス・ノールシュトローム  フォルケ
    ビョルン・フロベリー  グラント

1950年代初め。キッチン近代化のために、使う人の行動パターンを知る調査が行われ、スウェーデンの“家庭研究所”から多くの調査員が調査対象者宅へと派遣された。“馬”がもらえるからと調査に応募したノルウェーに住む初老の男性イザックの家にも、中年の調査員フォルケがやって来た。

 調査対象と調査員は交流せず、生活に干渉せずテニスの審判席のような椅子に座ってじっと観察するだけ。
 短い映画だけど、はじめの神経戦のような無言のにらみ合いのおかしさは大好き。コーヒーの一杯がきっかけで垣根が倒れるように「付き合い」が始まるのもおかしかった。
 食べるものを作るという人間の基本的なところを調査されるというのにこだわって見せまいとする感覚もわかる。見られている人間を覗き返してやるのもわかる!自分以外に興味の対象が出来たことにちょっと嫉妬する気分もわかる。遠い寒い国の出来事だけどなんだか「これわかる!」の連続。
 淡々とした映画のラストでちょっと一山あるけれど、結局人間が豊かに生きるために必要なのは気持ちをくつろがせる場所と時間。心の通う友人付きなら尚可、という感じにじ~んとしましたね。
 いかにもむさい爺さん役のカルメイヤー、調査員役ノールシュトロームは小市民という匂いがふんぷんで、ほんとにどんぴしゃです。

 ただ知識不足だなあ、と感じるところも多々。
 ノルウェーとスウェーデンでは、半島を縦に割ったようなもので、この日本から見ているとさしたる違いのあるべきか、と思ってしまうけれど、やはり国が違うと意識の違いとか、お互いに抱く感情も様々なのね、など考えさせられます。お国料理も違うようです。もらえる「馬」も有名なものらしいですね。きっとこれは爆笑ネタなんだな…と、勘違い以上には認識できない私。
 言葉がわかれば、もっと映画から得られる情報が多いだろうにというのはヨーロッパ映画、ヨーロッパを舞台にした映画を見るといつも思う。それぞれノルウェー語、スウェーデン語があって、二人はどちらで話してる?それとも親戚語みたいなもので、何とか通じるのかな?

クローサー (2004/米)

2005年05月26日 | 映画感想か行
CLOSER
監督: マイク・ニコルズ
出演: ジュリア・ロバーツ   アンナ
   ジュード・ロウ    ダン
   ナタリー・ポートマン    アリス
   クライヴ・オーウェン    ラリー

 ロンドンの街で、作家志望のジャーナリスト、ダンはニューヨークから来た若い娘アリスに会い、やがて同棲生活を始める。本を出版したダンは本の写真を撮るためにフォトグラファーのアンナに出会い、心惹かれる。その半年後、アンナの名前でダンはネットチャットで騙した医師のラリーを水族館へ誘い出すが、そこには本物のアンナがいた。

 宣伝コピーが
「カラダを重ねるたび、
 唇が嘘を重ねる。」

 で、映画館予告編もちょっぴり深刻そうで、舞台の映画化だというし、男女の愛憎のもつれ、長ゼリフ激突劇かな、と思ってました。激突はしてましたが、長ゼリフでなくて単語をぶつけ合うような会話のほうが利いた、笑った映画です。
 個人的にツボにはまりまくり、映画館の最後列で体震わせて声を殺して笑ってました。周りが静かなんで、とても声出して笑えなかったもので。ああ苦しかった。
 ジュード・ロウとクライヴ・オーウェンのちょっとだけ世代のずれた美男二人が、ことセックスと女性に対する嫉妬(というより彼ら自身のプライドの投影)の点では幼児性丸出しにしてほんとに「駄々をこねる」と形容するにふさわしい取り乱し方をするシーンがそれぞれのパートナー相手に繰り返される。おまけに結末が二人の女性がジュード・ロウとの出会いのシーンの言葉へ納まっていくのなんか、もう転げまわって笑いたかった!
 そう、この映画では結局主体性を持つのは女性。本音のところで俺様主義をむき出しにしてしまう男たちは、彼女たちを追いかけたり、傷つけたりする自分の滑稽さを本当にはわかってない。この男たちは結局芯のところでガキからも、旧思想からも脱皮できてないんだねえ!それとも永遠に男ってそういうもの?ジュリア・ロバーツもそう言ってたけど。
 ジュード・ロウって、この人は一頃のトニー・カーティスみたいに綺麗な自分を肯定した上でカリカチュアライズできる人材になったのかな。クライヴ・オーウェンの中年ぽいくさみったらリアルすぎて悲鳴が出そう。すごい!!!
 ジュリア・ロバーツの持ってるどことなく硬いムードもこの役にはあってると思う。だから、私には彼女の選択が無理なく納得できた。ナタリー・ポートマンのふっくら顔は泣き顔が子どもっぽくて良かった。女性のほうが性懲りなくても、潔くて小気味よかった。

 ただ、時間の経過の見せ方が今ひとつかなあ、と思った。セリフから年月の経過をわからせるのが多かったのは、元が舞台だから当然かもしれないけど、せっかく映画なんだからもっと見せ方があるんじゃないのかな。でも昨日は気が重いことがあって、3時過ぎに仕事放り出して映画に行ってしまったのだが、なんとなく肩が楽になって帰ってきました。しかしこのツケは今日に回ってくる…

殺しの烙印 (1967/日)

2005年05月23日 | 映画感想か行
監督: 鈴木清順
出演: 宍戸錠   花田五郎
   小川万里子   花田真美
   真理アンヌ   中条美沙子
   南原宏治   大類進

 飯の炊けるにおいで昂奮するという妙な性癖がある殺し屋№3の花田。請け負った仕事で組んだ№2の殺し屋が死んだり、不思議な美女にめぐりあったり、仕事を失敗したり、ついには自分が№1の殺し屋に狙われる。

…なんてストーリー追うのもむなしい。別に見ているときは納得しているのだが、後からまとめようとすると「こんなのまとまらない!」という展開。
 この映画、はるか昔に見て炊飯器のシーン以外ほとんど忘れていた。昨年の初めだったか、「ピストルオペラ」を見て、少し思い出したくらい。今回見て、あ~ピストルオペラのあれはこれだったんだ、と確認。
 変な映画だと思う。絵は面白い。リアルタイムで劇場鑑賞してた人がどういう風に見ていたかはわからないけど、私は劇画・コミックのセンスに満ちているように思う。たぶん、こちらの映画のほうが先取りなんだろうけれど。ハードボイルドアクションにナンセンスと無理やりエロをぎゅうぎゅうに詰め込んだみたい。アクションは良いですし、、時々惚れ惚れする絵があります。
 小川万里子の服着てる暇ないほとんど裸ばっかりのセックスシーンと叫び調のセリフにも、真理アンヌのまるでバケツひっくり返したような水に打たれる痛そうな登場シーンにも、なぜか笑いがこみ上げる。南原宏治も凄腕というよりかっこいい変態に見えます。主人公の殺し屋の裸はやたら健康そうだし、主題歌もおかしい。かっこいいよりも、やっぱりおっかしい映画だと思う。
 鈴木清純監督は「けんかえれじい」は文句なし傑作だし、「河内カルメン」とか全編「わーははは」と笑える(すいません)「東京流れ者」が好き!これはやっぱり毛色が少し違う。

 監督の「オペレッタ狸御殿」見に行くつもりですけど、それは荒唐無稽と色彩を楽しむつもりで行きます!

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 今回のDISCASの配送は「殺しの烙印」「ダーティーボーイズ」という「こんなのもあるんだ!」で思わず予約ボタン押しちゃったのが揃ってきました。その「思わずポチっと」予約では「ホネツギマン」(アルバトロスだし、このタイトルだし)「水の女」(UA、浅野忠信)「千里眼」など。固めてこないようにもっと散らしておこう。

キングダム・オブ・ヘブン (2005/米)

2005年05月22日 | 映画感想か行
KINGDOM OF HEAVEN
監督: リドリー・スコット 
出演: オーランド・ブルーム  バリアン
    エヴァ・グリーン   シビラ
    リーアム・ニーソン   ゴッドフリー
    ジェレミー・アイアンズ   テイベリアス
    デヴィッド・シューリス  ザ・ホスピタラー

 12世紀のフランス。鍛冶屋のバリアンは子どもを亡くし、妻はその後を自ら追い自殺、打ちのめされていた。そこへ実の父親だというエルサレムを守る騎士ゴッドフリーが現れ、エルサレムへ来るように言う。一度は断ったバリアンだが、妻の遺体を傷つけ侮辱し十字架を奪った聖職者をかっとなって殺してしまう。そして神の許しを請うためエルサレムへ向かう。

 史劇なんですが、今日的メッセージバリバリの映画でした。映像はさすがリドリー・スコットで迫力あり、美しくもあり、戦闘シーンもあの砂漠の地平を埋め尽くすような軍勢とか、良く出来てた。ストーリーもさほどの破綻なく(主人公が庶民育ちなのにやたら強くて不死身なのは主人公だから許す)組み立てられてたと思います。実にたくさん死んでますが、それも一部の好戦敵野心家と、いい子ちゃんから卒業できなかった良心的な馬鹿が招いた悲劇です。神様を道具にしかしない人間とか、微妙なバランスの上での平和とか、実にひしひしわかる。
 だけどなあ、もうちょっと、という印象。
 そう感じられるのは、主役のオーランド・ブルームが実に綺麗だし、たくましくもなってるし、成長しとるんだなあ、と納得はするものの、お話を支える重みがやや足りなく思えるのです。特にラスト、もっと静かな深い感情を見せてほしかった。彼はもう一回分の人生を生きて、出発点に戻り、新しく生き直そうとしているのだから、平家物語の平知盛(この人は自死しちゃうけど)並みの「見るべきほどのことは見つ」という経験をした人間の持つ深さをもうちょっと感じさせてくれたらな…と思ってしまう。
 周囲のおじさん連はすごく良かったので、負けちゃった部分はあるのかも。
 デヴィッド・シューリスの老け役もやたら良かったし、ジェレミー・アイアンズは本当にずっしりと締めてくれます。エルサレム王も病んで弱っているとはいえ、戦士としての名声もある実力者を、マスクなのに実に強烈な印象で演じています。サラディンなんか、思わず「今イスラム世界を代表するような大国があれば、もう少し世界は落ち着いてるのに」と連想が走り、つい涙が出そうなくらいの貫禄。
 リーアム・ニーソンは、主人公に父として、騎士の目標としてもっと影響を与えなくてはいけないように思いますが、私的には印象薄め。
 エヴァ・グリーンはこの役らしい美貌でしたが、エルサレムだけでなく全部を放り出してよかったんでしょうか?これも納得いかない原因の一つかな?