二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

正常・異常の境界例を生きた男 ~反時代的毒虫・車谷長吉をめぐって

2024年06月18日 | 小説(国内)
   (一昨日、BOOK OFFで手に入れた車谷長吉の2冊)



妻の留守中に、解凍中の生イカをのどにつまらせ、69歳で窒息死した小説家車谷長吉。
「四国八十八ヶ所感情巡礼」のレビューでこんな記事をお書きになっている方がいた。

《どこかの駅でうんこを垂れ流し、「この始末は誰がするのか」と駅員に言われて「それは、おまえの給料のうち」と言い捨てて、折から着た電車に飛び乗ったという話を得意気に書いている下りでは腹が立った。
自分のうんこの始末もできないで、会う人を、それぞれ「極楽に行く・行かない」と「採点」する。》

ウハハハ、こりゃすごいな。そのとき、奥様の高橋順子さんはどこにいたのだろう。
強度の強迫神経症を発症しているから、「夫・車谷長吉」を読んでいると、もうほとんど狂人と紙一重である。
高橋さんはゲッと思うようなことをけっこう淡々とお書きになっているが、こういう“狂人”を配偶者にしていた・・・ということはにわかには信じがたい気がする(`ω´*)

■「漂流物・武蔵丸」業深き人間ドラマ 私小説の極北(中公文庫)
■「贋世捨人」宿痾と情念が生んだ私小説の極北(文春文庫)
編集者がレトリックに困って、“極北”という同じことばを使っている。

反時代的毒虫。これは車谷長吉の自称といっていいだろう。つまりそれなりに、自分が何者か知っていたのである。
しかし、私小説だからこそ書く側と編集者が“その気”になるのだ。
TVはもちろん、YouTubeもなかった時代、文学が特別なものでありえたことを引きずっている。
毒虫は毒虫でもカフカのそれとは大いに違う。この違いを見届けてやろうではないか。
「飆風」はこの人の強度の強迫神経症の記録であるようだ。
はやめに読んでみよう。

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