虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

2~4歳児のけんかにどのように対応すればいいでしょう?

2012-12-24 17:48:27 | 幼児教育の基本

2~4歳児というのは、それはよく揉めるものです。

とにかく相手の子の遊んでいるもので遊びたいし、

仲良く遊びを発展させるほどの能力もありませんから、

物を取り合ってるだけで遊び時間が過ぎていくこともあります。

 

そんなときの親御さんの介入の仕方によって、

子どもが精神的にしっかりしてきてお友だちと上手に遊べるようになる場合と、

いつまでも幼いままでとどまって、少し心配な態度をしめすようになる場合に

分かれるように思います。

 

わたしが少し心配な態度だと感じているのは、

その子の感情と態度が、かけ離れているように見えるケースです。

 

たとえば、おもちゃの取り合いでけんかになっているとき、

「そのおもちゃが欲しいんだ!」という欲求が、相手の欲求とぶつかって、

「そのおもちゃでどうしても遊びたい!貸すのはいや!おもちゃを取られそうになったらいや!」と、

思い通りにいかない事態にパニックを起こして、わんわん泣いて、

しまいにお母さんに抱きついてなぐさめてもらう、感情が鎮まってくるまですねている……という具合に

幼い子の感情が素直に表現されているのは

とてもいいことだと思うのです。

 

幼児はまだ感情をコントロールするのが難しいですから、

何度もそうした体験を重ねるうちに、次第に、

感情をコントロールするのが上手になっていくものです。

 

そうしたネガティブな気持ちを親御さんに受け止めてもらって、

自分でも認めて受け入れていくうちに、

他の子に対する理解や、自尊感情が芽生えてきます。

そのうち意味もなくけんかばかり繰り返すよりも、

協力しあって楽しく遊ぶ方が楽しいことを

学んでいくはずです。

 

わたしが気にかけているのは、けんかをしていても、

その子自身の感情とかけ離れたところで

揉めているように見える子です。

 

物を取り合っていても、実はそれを本当に欲しいと思っているわけではないようで

大人に取りあっていた物を取り上げられても、

さっぱりしていて、たちまち別の物に興味を移していきます。

 

いろんな場面で、その子の気持ちが見えにくく、

ニコニコとよく笑うけれど、感情そのものは希薄な印象があって、

簡単に大人の指示によって動かされてしまう場合、

ちょっと子どもとの関わり方を見直す必要があるかもしれないと感じています。

 

子どもの揉め事を解決する際、

大人同士の親しい関係を保つために、子どもの気持ちがほとんど無視されたままで

「揉めさえしなければいい」「けんかにさえならなければいい」という

解決法が取られている場合、

そうした気になる態度につながりやすいように感じています。

 

「わが子には、相手の親から心が優しい良い子だと思ってもらうような態度をしめしてほしい」という

一方的な親の期待が押し付けられている場合も、

子どもが気になる態度を取るようになりがちです。

 

心理カウンセラーの袰岩奈々さんが、『感じない子ども こころを扱えない大人』という著書のなかで、

次のように書いておられます。

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「授業中にほかのことをしているので、注意をするが、ぽかんとしている。何を注意されたのか、

わかっていないようだ」

「『そんなに言うことを聞かないのなら、もう帰りなさい』というような言い方をすると、本当に帰ってしまう。

子どもに言葉のニュアンスを受け取ってもらえない」

(略)

子どもとのコミュニケーションがうまく成り立たない……教員たちのこういう訴えから気づくことは、

相手の気持ちや自分のなかにおこる危険や不安といった感覚、感情を

子どもたちがうまく感じとれていないのではないか、ということだ。

小学校で知識を学び始める。その段階までに、開発されるべきものが育っていない。

そんな子どもたちを多く抱えながら、知識を伝えることを主とせざるをえない、という矛盾が

今の学校にはあるのではないだろうか。

では、知識を学び始める前までに開発されるべきものとは、なんだろうか。

それは「自分の感情を十分に味わって、その自分なりのコントロール方法を、

ある程度身につけているかどうか」ということだ。

かつては、気持ちを取り扱うための訓練が、家庭のなかで自然になされていた。たとえば、

兄弟ゲンカをしたり、家族との家族との駆け引きをしたりしながら、自分の気持ちを自覚し、

それを表現する方法を自分なりにみつけ、磨く機会があった。

(略)

けれども、今の子どもたちは、そういった予行演習の場がない。突然に学校といった

公の場に出ることになる。

(『感じない子ども こころを扱えない大人』 袰岩奈々 集英社新書)

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袰岩奈々さんは、自分の子どもの子育てを振り返って、

「年齢がいってから子どもを産んだせいもあって、親である私は

モノの名前や状況についての説明には長年慣れ親しんでいたものの、

情緒的な反応やイマジネーションの世界からは遠ざかっていた」とおっしゃっています。

絵本に猫がいれば「ネコよ」、ハリネズミはいれば「ハリネズミよ」と反応して、

ネコが気持ちよく眠っていてかわいいとか、ハリネズミの針がツンツンして

さわると痛そうだとかいった、情緒的・感覚的な反応が出てこなくなっていたそうです。

そうした子育ての体験から、

「もしかすると、世の中全体でこういった「知的」なものを

乳幼児期からいっぱい注ぎ込む傾向が強くなっていて、

子ども自身、自分のなかにわき起こる感情をもてあましているのかもしれない。

気持ちを言葉にしたり、コントロールする体験が少なく、

自分なりの気持ちのコントロール法を編み出す機会が少なくなっているのではないか?」

という疑問を導きだしておられます。

 

虹色教室でグループレッスンをしていると、

子どもたちが本当に意味で、生き生きと学び出すのは、

友だちやわたしの前で素のままの自然な自分が出せて、それでいて

心から共感しあえ、笑いあえて、互いの欠点が許しあえる友だち関係ができてきた後からなのです。

 

それまでは、学ぶことに対して斜に構えた馬鹿にしたような態度をとったり、

そわそわ落ち着かなくて、心から楽しそうでなかったり、

優等生ぶっていても、成果ばかり気にして好奇心が鈍っていたりするのです。

 

それが、人との関わりのなかでリラックスして楽しめるようになり、

自分の感情と素直につながるようになってくると、

面白くない訓練や

難しくてどう取りかかったらいいかわからないような問題にぶつかるのも

ワクワクする体験のひとつになってくるのです。

あらゆることに心が開かれてくるのです。

 

難しい問題にぶつかると、心もとない気持ちになって、

友だちと協力しあってそれを打破しよう、人と相談しあうのは

こんな風に大切なのかと実感できます。

また、それをやり遂げて、みんなのヒーローになりたいという気持ち、

「すごいな~」と友だちを賞賛する気持ち、

アイデアを出すのがうまい子、根気がある子など、それぞれの特技を生かして

互いの良い面を生かしながら、

認めあって物事にあたるすべが身についてきます。

わたしの役目はそうした関係をサポートしていくことですが、

そうした関係が成り立つには、

まずそれぞれの子が自分の感情と素直につながっていなくてはならないし、

友だちとけんかをしあえるほど仲良くならなくてはなりません。

自由に感情を表現して、それをコントロールしていくのを学べる時間や場が必要なのです。

この夏、ユースホステルでのお泊りレッスンを実行したところ、

小学生の算数クラブや科学クラブの子らに

大きな変化が見られました。

勉強に対する意欲と責任感が劇的に変化した子が

何人も出たのです。

といっても、ユースホステルで特別な勉強をしたわけではありません。

ただ、子ども同士、ゆったりした時間のなかで、

本当に親しくなったのです。

 

2~4歳の時期には、とても大切な課題があります。

『自己統制力を育てる』ということです。

 

2~4歳児が、子ども同士で上手に遊べずに、

しょっちゅう大人の介入を必要をとするような揉め事を起こすのは、

大人の手と心を借りて、

自分を大きく成長させていかなくてはならない時期だから

ともいえます。

 

大人たちが遠巻きに微笑みながら見つめるなかで、

子ども同士、平和に幸せそうにじゃれあって遊んでいるという……

2~4歳の子を持つ

親御さんたちが期待する「子どもの遊びの世界」のイメージは、

テレビCMのための作りあげた虚構の世界か、

子犬たちがドッグランで繰り広げる遊びの世界に近いものです。

 

実際の2~4歳の子たちというのは、

人間の子どもとしての育ちの課題を持っていますから、

いろいろと自分で揉め事を創り出しては、

大人から適切な指導を引き出そうします。

 

自分より先に生まれた大人という先輩の手と心を借りて、

今の自分より一段高い次元の

精神的な力と態度を獲得しようと

がんばっているのです。

 

獲得する力が『自己統制力』なんていう一生を左右するような能力ですから、

1回、2回の練習で身に着くはずもありません。

それで、くる日もくる日もギャーギャーワーワーわめき散らしては課題とぶつかって、

大人に助けられながら

ゆっくりゆっくり自分の心と身体を作りあげていくのが、

2~4歳児の姿です。

 

「大人の適切な指導」なんて言葉を使うと、

「ああ、しつけのことね」「きちんと正しいしつけを教えていくことね」と

感じるかもしれません。

もちろん、そうではあるのですが、

けんかをするから、「けんかしてはだめ」「おもちゃを貸してあげなさい」「お友だちに優しくね」と

教えることが、この時期のしつけだと思われているとしたら、

ちょっと問題があるかもしれません。

 

なぜなら、いつまでも子どもの自己統制力が育たないままで、

親の前ではいい子でも、集団の場や、お友だちの前ではわがまま放題だったり、

小学校に入学してからも2、3歳児のように聞き分けがなかったり、

指示には従うけれど、自主性や意欲が乏しかったり、

自己主張ばかりして自分勝手に振舞うような場合も、

先に挙げたようなしつけはしっかりしていることが多いからです。

 

山梨大学の教育人間科学部の加藤繁美先生によると、

「子どもの自己統制力が育っていく道筋にはひとつの構造がある」そうです。

「子どもが自己統制力を自分のものにする過程で、その途中を省略させられたり、

ゆがめられて自己形成させられた場合、

うまく自分をコントロールできなくなってしまう」というお話です。

 

それでは、自己統制力というのは、どのように育っていくのでしょう?

『人とのかかわりで「気になる」子』にあった加藤繁美先生のお話を簡単に要約して紹介しますね。

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まず、まだ泣くことくらいしか自己表現できない赤ちゃんの時期に、

大人たちが子どもの発する言葉にならない子声(自覚しない要求)を

読み取り、ていねいに「意味づけ」し続けること。

そうしたコミュニケーションの繰り返しのなかで、自分の要求が音声と対応すること

を知っていきます。

同時に人と関わる心地よさを無意識世界に形成していきます。

 

次に、「愛されることの心地よさ」をベースに、音声で表現できることを知った

要求世界を、自分の興味・関心にひきずられるようにして

どんどん表現するようになります。

          (『人とのかかわりで「気になる」子』ひとなる書房より  要約しています)

要求を主張する主体として成長していくこの時期、

大人の対応が重要です。

 

つまり「受け止めながら、方向づける」という対応が、

ていねいになされることが重要です。

大人の側に余裕と辛抱強さが必要になってきます。

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どうして大人の側に余裕と辛抱強さが必要なのかというと、

この時期の子どもの要求は、融通が利かない一方向のものだからです。

どうしてそんなにわがままな要求なのかというと、

幼児はまだ幼児だからで、

そうした原石のような要求を表現しつつ、

しだいにそれに磨きをかけて、自分の力でコントロールできるものにしていく

という課題を抱えて生きているからです。

 

でも、ちまたで見かける大人の幼児への対応は、

子どもの要求自体を無視する、機嫌を取って紛らわす、大人同士の関係維持のために

要求を変形する、要求を表現できない場に連れていく(習い事やショッピングセンターなど)

というものが多いです、

また、大人が子どもに対する余裕を持って辛抱強く接することが

我慢できないため、

その言い訳として、

「子どもには小さいときから、きちんとしつけないといけない」「最初が肝心」などの

言葉を使って、問答無用で大人の意のままに従わせるという場面もよく見かけます。

一方で、子どもの言いなりになって、大人として

子どもの成長を方向づける仕事を放棄してしまっているケースも目立ちます。

 

長くなってしまったので、続きを読みたいという方は、

2~4歳児のけんか どのように対応したらいいでしょう?4

を読んでくださいね。


工作やブロック遊びで子どもが「こんな風にしたい」というけれど、解決法がみつからない時に

2012-12-24 17:29:51 | レゴ デュプロ ブロック

過去記事ですが、「探しています」というお声をいただいたので再度、アップしています。

 

子どもが「こんな風にしたい!」と何か主張する時は、

大人もいっしょに未知の問題について知恵を絞るチャンスです。

「それは無理無理」と即答するのはあまりにもったいないです。

 

普段、大人がすでに答えを知っていることを子どもに教えるだけでは、

「考える」醍醐味って伝わらないものです。

大人も「どうすればいいのかな?」と頭をひねってみると、(大人も)頭のひねり方が上手になってきますし、

そうした大人の姿から子どもは多くを学びます。

 

子どもにしたら、大人だって答えを知らない問題について、

「どうしたらいいかな?」と考えていくことは、

思考する筋道を体感するすばらしい訓練になります。

また、考える過程のワクワク感や「こうしたらいいんじゃないかな」というアイデアを

思いついた時に胸がスカッとする気持ちや

深い達成感を味わうことができます。

これはすでに答えがある勉強ではなかなか味わえないものです。

 

とはいえ、子どもの「こんな風にしたい!」に付き合うのって本当に難しいです。

 

わたしも思わず「無理!」と言いそうになった経験が……。

 

息子が小学4年生の時、

「砂漠に蜃気楼が浮かぶしくみについて探って、空中に立体の画像が浮かぶ

ホログラフィーを作りたい」と言い出した時です。

 

その時、息子がこんな作文を書き残しているので、

この相談を受けた私がいかに乗り気じゃなかったのか、「無理でしょ」と思っていたのかがわかります。

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テーマ『光の性質を利用して、ホログラフィーがつくりたい』
きっかけ

ある夜ぼくは、お姉ちゃんのへやにいって、
「映画がはじまりまーす」と電気を消した。
ビニールぶくろにマジックで絵をかいて、
うしろから懐中電灯でてらしたら、かべに映画みたいなのが、うつる。

お母さんに見せたら、「子どものころ、小学生向けの雑誌のふろくに、
映写機がついていたの。
アニメのフィルムをこんなふうにみたわ」といった。
映写機のことをいろいろ聞いているうちに、光をつかった実験がいろいろしたくなった。

ぼくは夏休み中、自由研究のテーマがなかなか思いつかなかった。
夕ごはんのとき「光の研究がしたいけど、もう2学期がはじまっちゃったから、
終わりだね」とがっかりしていったら、
「公募の本で、科学コンクールの募集を見たけど、まだだいじょうぶだったと思うわよ」
といった。

「じゃ、ホログラフィーを作りたい」と
急に思いついていった。
「ホログラフィーって何?」とお母さんが聞いた。
「立体の空中に浮かぶやつ」
「ああ、SF映画とかに出てくるあれね」
「それは無理じゃないかなぁ」
お父さんもお母さんも首をかしげた。

ぼくはいろいろやったらできるかもしれないと思うんだけどな。
「特別な条件の下なら、そう見えるかもしれないし、自分がやりたいテーマで
研究したらいい」とお母さんも賛成してくれた。
ぼくにはひとつアイデアがあった。
さばくにうかぶしん気ろうは、機械がないのに立体映像が見られる。
しん気ろうができるしくみを
探って、ホログラフィーの作り方がわからないだろうか?
ぼくの持っている『ドラえもん 不思議サイエンス』という本に、
「しん気ろうは、地面近くに
密度のちがう空気の層ができたときに起こる現象です。
下層に密度の大きい冷たい空気、上層に密度の小さいあたたかい空気があるときは、

得にある実際の像は、浮いて見えます。
反対に下層にあたたかい空気、上層に冷たい空気があるときは、像は沈んで見えます」と書いてある。
密度が均一でない空気中で光が曲がって見えるから、しん気ろうは見える。


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でも「無理!」と言い切らずに付き合っているうちに、偶然も手伝って、

本当にホログラフィーらしきものを作ることができて、

子どもたちは万歳三唱……わたしは

「あ~無駄と思いながら付き合ってよかった」としみじみと感じた出来事があります。

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↑写真では3D映像がうまく映らなかったのですが、3Dが見えた瞬間の写真です。

(科学のコンクールに研究過程を応募した時の写真です)

 

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それでは、子どもが「こんな風にしたい!」と言ってきた時に

解決するための方法をいくつか紹介しますね。

 

ひとつは、「こんな風に」と言っている対象をよく観察することです。

図鑑で絵図がくわしいものを見るのも役立ちます。

観察しながら、なぜそのような形なのか、どんな仕組みなのか、など

いろいろ推測して話合います。

 

もうひとつは、ごくごくくだらないブロック遊びでも、

「磁石の働き」「光の働き」「物の性質」など

科学的な知識を総動員して、解決しようと試みることです。

 

さまざまな素材についてよく知っておくことも役立ちます。

アルミ箔、セロファン、ダンボール、プラスチックなど

それぞれの素材に通じていると

いい方法を思いつきやすいです。

子どもたちと普段から、「アルミ箔って、ペラペラなのに、こすってると

つるつるした塊になるよね。見た目は重そうなのに、金属みたいだから、軽いよね。それって密度が大きいってこと?

小さいってこと?」といった会話をたくさんしています。

(道具についても同じことが言えます)

 

「できない」とせずに、お父さんに相談したり、友だち同士で話あったり、

人と話し合う中で解決の糸口を探すことです。

 

最後に、さまざまな別の視点から考えてみることも大事です。

 

 


自閉っ子 と トラブル解決法 7

2012-12-24 13:24:09 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

  

自閉っ子 と トラブル解決法 6

の続きです。

 

●くんは少し前まではたくさんあった

エコラリアがほとんどなくなっている状態です。

(エコラリアとは、オウム返しのことです。)

それは自他が分離し、自分と他人が意識されるように

なってきたということでもあるのでしょう。

 

そうした●くんの成長ぶりは、今年の11月のユースホステルでのレッスンで

誰の目からもわかるほどはっきりしていました。

少し前までは他者にまったくといっていいほど無関心だった●くんが

☆くんをお父さんに紹介したがったり、

他のたくさんの子らと打ち解けて過ごすことができたり、

自然な会話を続けていくことができたのですから。

 

でも、その一方で、●くんはまだまだ変化の最中、

つまり過度期にあって

何度も不安定になったり、後退したり、問題が多発したりする時期でもあるのです。

 

ですから、劇的な成長や安定した良好な状態ばかりを期待していると

焦りやうまくいっていないという不全感に

周囲の大人がとらわれてしまいます。

 

ひとつひとつの出来事や結果で揺れることがないように、

●くんにどんな環境やサポートが必要なのか

本筋からずれない大きな視点が必要なのでしょう。

 

ユースホステルで多人数と楽しそうに過ごしていた●くんを見て、

それまで☆くんとふたりレッスンだったのですが、

今回は★くんにも参加してもらうことにしました。

●くんの対人関係の幅を広げたいと思ったからです。

でもまだ少し時期が早かったようです。

新しい環境に戸惑って、それまであった積極的で快活な態度が影をひそめていたので、

やはり☆くんとふたりだけのレッスンに戻すことにしました。

 

といっても、3人でレッスンをしたことは、

わたしを含め周囲の大人たちが●くんについてよく知るためにも

●くんが「あの子知ってる知ってる」と感じられる相手を

増やすためにもよかったんじゃないかな、と思いました。

 

●くんは★くんには近づこうとしなかったものの

★くんが磁石で遊んでいると、後から磁石で熱心に遊びだしたり、

★くんと☆くんが折り紙を使って文字の学習をしていた後には、

ドールハウスや護送車に折り紙の覆いをつけたがったりしていましたから、

☆くんに関心があるのは確かでしたから。

 

本人に越えられそうな適度な負荷を用意しつつ、

●くんの世界が豊かさを増し、大きく広がっていくように

これからも支えていきたいな、と思いました。

    

 

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自閉っ子とトラブル解決法 6 の

記事中の「お肉電車」と「ドアホン」の写真と過去記事の一部です。

 

↑ 心の世界の豊かさや成長が感じられた

●くんのブロック作品。

ブロックの「お肉」のパーツを見つけて、それを線路の切り替えスイッチの部分に取り付けて、

「お肉電車」と命名した●くんは、

自分のアイデアが嬉しくてたまらなかった様子です。

わたしが「お肉電車用に」と言って集めてきた

「お肉」に関わるようなグッズ(恐竜や茶色い電車)を手渡すと、

ワァ~ッと飛びあがらんばかりの喜びようで、作品に手を加えていました。

「きりんの動物園」と「お肉電車」だそうです。

 

 

 


ピッケの絵本の作品展 (+ 算数遊び ) 2日目です♪ 3

2012-12-24 08:45:29 | 工作 ワークショップ

ピッケの絵本の作品展 (+ 算数遊び ) 2日目です♪ 2

の続きです。

 

ピッケの絵本の作品展での出来事の続きです。

食後に和室に移動中、先に到着した男の子ら数名が、

お互いの頭をひっつけあうほど接近して遊んでいました。

覗いてみると、ひとりの子が写真のようなトラベルサイズのボードゲームを

持ってきていたようなのです。

それでワイワイ大騒ぎして遊んでいたのです。

そこで、「こんな風なゲームを作ってみたい子はいる?」とたずねると、

「はい、はい」と元気のいい手が何本もあがりました。

 

さっそく、「折り紙を何度か折って、

丸く切ってみる」というのを実演すると、

「たくさん丸ができるんでしょ?丸ができるんでしょ?」と

子どもたち。

 

「わかった。それをさ。画用紙に貼って、それで、すごろくみたいに

なるんじゃない?それで、ゲームするんでしょ?」とお見通しの子も。

 

そしてさっそく切った丸い折り紙を貼って、丸と丸の間を線路でつないでいました。

線路の部分は、ゲームを見て自分たちで工夫していました。

 

文字がまだ書けない子はお母さんに書いてもらいたい駅名を言って

一生懸命作っていました。

新幹線の形をしたコマの作り方を見せたところ、

長い長いコマを作った2歳の男の子。

満面の笑みを浮かべていました。

 

すごろく風のボードゲームの作り方を教える際、わたしが具体的にお手本を見せたのは、

折り紙で丸い形をたくさん作る方法と

コマの作り方だけです。

それくらい未完成な状態までのお手本の方が

それぞれの子が自分の知恵を絞って

自分の好みやアイデアを取り入れて作りやすいからです。

 

わたしが作る見本通りになぞって作らせるのではなく、

人生ゲーム、世界一周ゲーム、お買いものゲームなど

さまざまなゲームに触れて、

自分で、直接そのエッセンスを取り入れて活かす経験をしてほしいからでもあります。

 

絵本作り、ブロック製作、工作、科学実験、算数の学習についても

同様です。

応用がきく基礎をしっかり学んで、

後は直に本物から自分で吸収して、

自分らしく自由に表現してもらいたいな、と思っています。


ブロック講座 12日目  ブロック遊びと 見る力 聞く力 想像する力 考える力  2

2012-12-23 18:32:36 | レゴ デュプロ ブロック

 

ブロック遊びでは

子どもが自由に自分の思うままにブロックを組んで作ることも

大人が手本を提示して、お手本通りに正確に作っていくことも

どちらも大切です。

 

大人が手本を見せる場合は、

できるだけその子が自分でできそうな課題を

示すようにします。

もし本人にはできそうもないようなものを作りたがった時は、

一部分だけ、できそうな部分を取り出して教え、

残りは作ってあげるようにします。

 

不必要に難しい課題を与えて、

途中で気が散った子に注意しながら作らせていると、

「できない、やって!」という依存的な態度につながるかもしれません。

 

4歳半くらいからは、

 

人の説明をきちんと聞く、

手本をしっかり見る、

 

やろうと思ったできるレベルの課題は

しっかりやり遂げる、

 

仕上がりを見て、

見本通りにできているか間違っている場所がないかチェックする、

 

という一連の流れを責任を持って行えるように

サポートしています。

 

就学前の学習というと、「文字や計算のプリントをさせること」と考えておられる方も

いらっしゃいますが、

ブロック遊びのように学習とは無縁と思えるような活動の中で

身に付くものはバカにできません。

 

 

5,6歳の子どもたちに

同じ組み方を重ねていって作る方法を教えていると、

その学習態度は千差万別です。

 

能力はある子だけれど、他人の話に耳を傾けたり、

お手本を注意深く見るのを嫌がる子。

 

やる気があっても、すぐに気が散って

ひとつのことにしっかり取り組めない子。

 

何でも意欲的に取り組むけれど、明らかに異なる形を選んでつけたり、

間違った場所につけたり、左右対称の見本を見ながら

左右がバラバラな作品を作る子。

 

それぞれ少し気になる弱点を克服できるように

工夫しています。

 

特に、意欲的でしっかりこちらの話も聞いているし、お手本も真剣に見ているにも

関わらず、

お手本とはかけ離れた作り方になる上、

自分でその間違いに気づけない5、6歳の子には

空間認知力に弱さがないか、

乱視等、見え方に問題がないか、

注意深く対応しています。

 

次回に続きます。


ブロックのおばけ屋敷と時計算

2012-12-23 17:13:06 | レゴ デュプロ ブロック

 

 

3年生の☆ちゃん、○ちゃん。

ブロックでお化け屋敷を作っていました。

 

算数タイムには、長文の文章題と時計算をしました。

 

写真はふたりで問題を出しあっているところです。

「7時半の時、長針と短針が作る小さい方の角は何度でしょう?」


ブロック講座 13日目 忍者屋敷 クリスマスのキラキラお家 ビー玉コースター ジャングルと滝 2

2012-12-23 16:32:04 | レゴ デュプロ ブロック

 

 

『おばけやしき』を作りたかった3歳の●くん。

ブロックの基板にどんどんブロックを並べていって

道を作っていました。が、途中でくるくる回転するおもちゃで遊びたくなったので、

ビー玉が転がり落ちて空き容器で作ったトレイで受けて

それをくるっと回す仕組みを作ることにしました。

今回はそれぞれの子が別の大作を作っていたため

●くんの喜びそうなアイデアを十分提示してあげることができなくて

残念でした。

どんどんブロックをつないでいくだけでできる

ビー玉が転がしの面白いシステムを作ったり、

ブロックをつないで作っていた道に要所要所に

「どんでんがえし」のような仕掛けをつけたり

すると、もっと喜んだのかもしれません。

4歳の○ちゃんの

ライトいっぱいのペンギンのプールとクリスマスツリー。

 

4歳の◆くんのダイナミックな滝。

5歳の☆ちゃんは、とても人気者の女の子です。みんなの作品作りのお手伝いを

するうちに、自分の作品はコレというものを作りそびれてしまいました。

いろんな作品をよく観察していたし、普段から作る力のある子なので

年上の子の作品や試行錯誤の仕方を参考にして

お家に帰ってから面白い作品を作ってくれるのではないでしょうか。

  

 

算数タイムにはブロックを使った立体作りの問題に粘り強く

チャレンジできました。

 


ブロック講座 13日目 忍者屋敷 クリスマスのキラキラお家 ビー玉コースター ジャングルと滝 1 

2012-12-23 13:33:14 | レゴ デュプロ ブロック

前回の続きは、近いうちに書きますね。

どんどん溜まってくる写真を、とりあえずアップしていきます。

 

年長さんの★くんが作っていた『忍者屋敷』です。

板をスライドすると……床が抜けて……

 

この通りまっさかさま。

何の変哲もない松の木は、くるっと回転させると……。

忍者が潜んでいました。

くるっと回転させる仕組みは、線路の切り替え用の回転部分を利用しています。

 

製作時間が終わる頃に空中を滑り降りる忍者が作りたくなった★くん。

試行錯誤の末、空中移動が成功しました。

忍者屋敷にはさまざまな隙間や穴に忍者が隠れています。

★くんとお父さんのふたりで

断面図を推理する問題にチャレンジしてもらいました。

 

次回に続きます。

 


ブロック講座 12日目  ブロック遊びと 見る力 聞く力 想像する力 考える力  1

2012-12-23 08:44:28 | レゴ デュプロ ブロック

3歳~5歳の男の子たちの製作風景。

交差する線路は試行錯誤の末、自分たちで作り上げました。

 

今回集まった子どもたちは、前日のブロック講座の子どもたちが作っていた「牢屋」の作り方と「虫型ロボット」と

「エレベーター」の作り方を学びたがったので、

基本の型を教えた後で、コツコツと組み上げる作業をがんばってもらいました。

 

幼稚園児と小学生のためのブロック講座では、

最初に、何が作りたいのか、どんなことが学びたいのか、などを集まった子同士で

話しあう時間を設けています。

 

子どもの中には「ジャングルとか洞窟を探検するようにして、恐竜も出てきて、

川にワニとかいるようにしようよ」とか、

「遊園地を作って、観覧車とかメリーゴーランドとか作ろうよ」とか

「お家が作りたい。3階建てで、お庭があって、お庭のところに滑り台やブランコがあるようにしたい」

などアイデアが次々湧いてくる子がいます。

 

また、お友だちが「探検」と言えば、穴に入ってったら水みたいなところがあって、

宝とかおいておくといい」

「スカイツリーみたいに高いところ登ってく探検もする」など

最初の言葉から連想して、さまざまなイメージを膨らませるのが好きな子もいます。

 

また、教室内のおもちゃや他の子のブロック作品を見て

「こういうのが作りたい」と言う子もいます。

 

一方で、これからしようと思うことを想像できない、

言葉にできない、すでにできているものを破壊するような遊びにしか興味がない、という子もいます。

 

言葉は使わずに何となく遊びはじめて、

やりたいことが見てくるという子もいます。

 

そうしたさまざまなタイプの子が

お互いに協力しあって作品を作る中で、

見る力や聞く力、想像する力や考える力といったものを

ブロック遊びを通して身につけていってくれるようにサポートしています。

 

そうしたサポートの仕方にはちょっとしたコツがありますので、

これから書かせていただきますね。

 

次回に続きます。


文章題を図やイラストで整理しながら解く力

2012-12-22 19:43:01 | 算数

(↑ お兄ちゃんに付いてきた妹さんの作品です。)

 

1年生と2年生の★くん、☆くん。

文章題を図やイラストで整理しながら解く練習の真っ最中です。

 

☆くんは、苦手をたくさん持っている子でしたが

遊びの体験の豊かさとこれまでの努力のおかげで

かなり難しい問題も図に整理しながら解くことができるようになっています。

 

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5人が1れつに ならんでいます。 その男の子と男の子の間に、女の子が一人ずつ

入って ならびました。

そのあとで 大人の 人が 子どもたち 一人一人の

間に 3人ずつ 入って ならびました。大人の人は合わせて何人ですか

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たて3センチ、よこ5センチのシールを 下のように 黒板にはりつけていきます。

たてに7まい、よこに9まいはります。

シールと黒板、シール同士はたてでは4センチずつ、よこでは6センチずつすきま

をあけます。

たての黒板の長さとよこの黒板の長さを答えなさい。

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                     (どちらも最レべ小学2年生より引用)

という問題を、絵や図にして考え中。

 

↑こんな感じの図になりました。

★くんは、文章を読解して考える力はあるのですが、

図やイラストに描いて整理するのが苦手なので、

暗算しては間違えたり、文章を読み落としては間違えたりしています。

 

子どもが一れつにならんでいます。こういちくんは まえから16ばんめで

うしろから13ばんめです。ならんでいる子どもは みんなで何人ですか。


という問題で、16+13で計算して涼しい顔をしているので、

 

写真のように6体の人形を並べて、「この子は、前から2番目で後ろから5番目だね」と黄色い服の子を

指してから、「全部で人形はいくつ?」とたずねると、

「5たす2だから7!」と答えてから、目の前の人形をチラチラ見ながら

複雑な顔をしています。

少しして、「いや、6……。」と認めたので、

「でもこの子は、前から2番目と後ろから5番目だよね。それは2たす5でいいの?」と

たずねると、「うーん」と考え込んでから、「わからないなぁ」と

言葉にするのが難しいようでした。

 

次に、★くん、わたし、★くんのお母さん、☆くんの4人のうち、★くんは

右から何番目で、左から何番目なのか……という話をしたとたん、

「なあんだ、同じ人を2回数えているから数がおかしくなるんだ」と言ったかと思うと

式と答えを書きなおしていました。

 

★くんが挑戦したのは次の問題です。

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えりこさんは、おちばを 11まい ひろいました。

まゆみさんは えりこさんよりも4まい おおく、ひさおくんはまゆみくんとえりこさんを

あわせたかずよりも 6まい すくなく ひろいました。3人が

ひろった おちばを あわせると ぜんぶで なんまいに なりますか。

                  (最レベ1年生より引用)

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★くんは、問題文の意味をよく理解していたのですが、

いちいち書いて整理していくのをめんどくさがって

いきなり式を書いていったので、暗算でミスしてしまいました。

 

このくらい長い文章の問題だと、

しっかり間違える機会があるので、

「いちいち絵なんて描かなくてもいいよ」

「問題を整理するなんてめんどくさい」と言っていた子も

しぶしぶながらも手を動かして解いていく大切さに気づいてくれるので

助かります。

 

★くんは、

 

まゆみさん

えりこさん

ひさおくん

 

と名前を書き出して、順番に数字を書き込んで解いてみると、

正しい答えが出せていました。