聞き分けのいいおりこうさん……と思いきや、突然、噛んだり、物を投げたり、突き飛ばしたり……
と態度が急変する2歳児というのはけっこういます。
2歳だから、そんなもの……ともいえるのですが、
接し方を少し変えると、
気になる行動が激減するかもしれません。
天使から小悪魔に、態度が急変する子というのは、
自分の気持ちを表現する前に
言葉で大人に指示を与えられて、
何だかすっきりしない気分のまま動かされている子が多いです。
子どもの表情には、いきいきとその子の心の変化が浮かんでいます。
でも、子どもを目に入れても痛くないほど可愛がっている親御さんなのに、
可愛いから余計なのか、
子どもの気持ちの変化を読み取るより先に、
あれこれ指示を与えてしまう方がたくさんあるのです。
指示といっても「あれしなさい」「これしなさい」と命令しているわけではありません。
たとえば、2歳になったばかりの○くんがわたしの方におもちゃの電車を持って近づいてきて、
何か訴えようとしているとします。
その表情には、先生に電車を「はいどうぞ」ってしようかな?
「先生、電車でいっしょに遊ぼうよ」ってしようかな? と
その子なりのそれまでの経験した働きかけのなかから何を選んで仕掛けようかと迷いつつ、
「こちらに何かを働きかけたい!」といういきいきとした気持ちの高まりが感じられるシーンで、
いきなり、「先生に、電車をはいどうぞは?」とか「先生、いっしょにあーそーぼーでしょ」と
先に子どものアウトプットを限定してしまう方がいるのです。
お友だちとの遊びやおもちゃで遊ぶシーンでも同様のことが
たびたび見られます。
子どもが、こういうことかああいうことをしそうだな……
という予感は見えているけれど、まだ何の行動もしていないし、自分の気持ちも表現していないのに、
先に親の望む形の子どもの行動を口にしてしまうのです。
そうして先にすることを指示されてしまうと、それまでいきいきと輝いていた子どもの表情には、
一瞬、とまどったような混乱した無表情が現れて、
次には、機械のように大人の指示通り動こうとする態度が続きます。
そうした対応を親からしょっちゅう受けている子は、
良い子過ぎるほど良い子でいたかと思うと、
突然、態度が急変して、噛んだり、物を投げたり、突き飛ばしたり、ひっくりかえって親を困らせることばかりしたり、
冷淡な表情で意地悪をしてみたりします。
2歳前後の子はわがままで自己中心的なのが普通ですから、
それほど心配することはないのですが、
年齢の割に聞き分けが良過ぎたり、礼儀正し過ぎたり、素直過ぎる態度から、
ワルワルモード全開に態度が急変する子というのは、
その子の自然な感情の体験や自然な自分の意志で動く体験が
大人の声かけでたびたびゆがめられているケースが多いです。
目と目を合わせて、
気持ちをやりとりさせるような「おふざけや遊びのやりとり」の体験が少ないようで、
人とのやりとりのレパートリーが限られています。
「おふざけや遊びのやりとり」というのは、
お母さんとふたりで、「どーうーぞ」「ありがとう、パクパク」「はいどーうーぞ」とごっこ
遊びのように物を行き来させたり、
「あげようかな?どうしようかな?はいあげる、やっぱりやーめた」といった
じらしたり、相手の出方をうかがったり、親切にするのを楽しんだり、すぐに得したりといった
うそっこの物のやりとりをすることです。
行動に遊びが少なくて、良い子と悪い子の両極端にぶれる子は、
いきなり大きな子たちの現実の世界のように、
「けちんぼしないの。はい、どうぞしなさい」という
子どもの心がショックを受けるような本番の体験しかしたことがないという子が多いです。
幼い子たちというのは、ごっこ遊びのような夢の世界に半分足を突っ込んで
暮らしている人種ですから、
いきなり大人の世界のルールをつきつけられてばかりいると
心がぎすぎすして、乱暴になってきます。
犬にしつけるように
これはマル、これはバツと、正誤を教え込んでいくのではなくて、
子どもが表現するものをしっかり受け止めて、
優しい子どもの身の丈に合った対応で返していると、
幼くてもちゃんと、その時々の場面にふさわしい態度をまねっこしていきます。
どうしたらいいのかな?どこから10円を入れるのかな?
と考え込んでいる2歳少し前と2歳になったばかりの男の子。
ブロックのお片付けも、本人の気持ちの流れを少しだけ待ってあげると、
自分からはりきって片付けはじめました。
↑椅子の脚を折り曲げたいけれど、ぐっと手に力を入れて握るところが
難しいのです。でも、何がどんな風にしたいのか、子どもの気持ちをしっかりと聞いて、
手順をゆっくり見せてあげて、それでもできないかどうかの見極めは本人の
判断に任せていると、
すっきりと納得しました。