虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

現在の子育て、幼児教育の盲点 (間違った幼児教育が意欲と考える力が弱い子を量産している)5

2015-09-23 15:07:15 | 初めてお越しの方

現在の子育て、幼児教育の盲点 (間違った幼児教育が意欲と考える力が弱い子を量産している)4

 

前回の記事で、年少グループの子たち(ひとりだけ年長)がかばん作りのあとで、

ドールハウスを作り始めたことを書きました。

 

子どもたちは、「模倣することや教わること」と

「自分のアイデアを活かすことや自分で考えること」を

バランスよく取り入れていました。

 

みんなと同じ手順でお家を作っていたCちゃん。

ふいに作っていたお家の壁を倒したかと思うと、

「先生、これお布団みたいね」と言いました。

「本当ね。お布団そっくり。お布団を作る? 作るのはお家じゃなくっても

構わないのよ」と答えると、Cちゃんは大きくこっくりして、

布団だと言っていた部分にカーブをつけてから、大発見でもしたようなはしゃぎ様で、

「なおみ先生、こんなおうちあるね。これおうちだね」と言いました。

見ると、お布団だと言っていたものは、テントのような洞穴のようなものに

変形されていました。「面白いお家。素敵なお家ね。屋根が虹の形ね」と言うと、

「わたしやっぱりお家を作る。これを貼るとおしゃれでしょう?」とCちゃんは

屋根にリボンをデコレーションし始めました。

 

 一方、Bちゃんは他の子らにベージュの色紙を配り終えてから、

茶色い床の中央に貼っていました。

それから見つけてきた小さいタイルを床のあちこちに貼っていました。

 

「先生、きらきらの折り紙使ってもいい?」とたずねてきたAちゃんに、

「いいわよ」と答えると、

Aちゃんは壁一面にダイナミックに金色の折り紙を貼りだしました。

その際、Aちゃんは驚くような模倣する力を発揮していました。

わたしはBちゃんのお家を使って、「折り紙の床のはみ出している部分の両端を折って

立てた画用紙と主直になるようにテープでつけることで平面の壁が立つように

なることを実演して見せました。

 

といっても年少さんたちには難しいので、順にわたしがしてあげる予定でした。

ところが、Aちゃんの色紙の貼り方は左に寄っていたので

両端を折ることができなくなっていました。

 

わたしがほかの子らの様子を見て回ってからAちゃんのところに戻ると、

Aちゃんは自分で気づいて床の紙を正しい位置に貼り直して、両端を折って

テープで壁が垂直に立つようにしていました。

Aちゃんの模倣する技術は、ただ真似るのではなくて、

「どうしてそのようにしているのか」という意味を察して真似るレベルにまで

達しているのだな、と感じました。

 

このように模倣ひとつとっても、さまざまな形やレベルがあって、

「見なさい。聞きなさい」と言われても、心ここにあらずで応じる子と

「見なさい。聞きなさい」と言われて初めて、

ようやく他の人のしていることに注意を向ける子と

「見なさい。聞きなさい」と言われなくても、

先生からも友だちからもそこに置いてある見本からも学び取り、

模倣でありながらそれがどんな理由でそうしているのか気づく力がついている子とでは、

物事を習得する量も質もずいぶんちがってきます。

 

そのように学ぶ力そのものを高めるには、

子どもが学びたいと思っていること、つまり子どもが関心を抱いているその子にとって

意味のあることに身近な大人が共感を寄せ、

不確実で未知の可能性に満ちた時間と自由を十分保障した環境で……

つまり「何をどのようにする」とか「こういう目標に向かう」といった決められた

レールに乗って活動するのではなく、子ども自身が気づいて考えて行動できる

余白のある活動の場で……

より高い技術を持った大人がそれに関わり、子どものチャレンジを支えてあげる

必要があると実感しています。

そうした場では、子どもたちが自ら、自分の新しい行動のレパートリーを増やし、

できることを洗練させていきます。

 

Aちゃんの年長のお姉ちゃんのDちゃんは、

折り紙を4枚正方形に貼り合わせ、ぐるりを壁で覆って、

大きな家を作っていました。壁にはドアや窓がついて、

カーテン等の飾り付けもされていました。

 

その後、画用紙をコの字型に折ったものをいくつか用意して

立体パズルでも組み合わせるように何かを作っていました。

「お部屋かな?」「トイレかな?」と周囲の関心が集まる中、

黙々と作り続けて、できあがったのは……?

 

ストローの水道がついたシンクでした。

 

シンクの下の扉を開けると、排水管が。

水量を調整する蛇口の位置が少し上下にずれているのは、

最近、家で水道を止めなくてはならない時があって、

どこに調節ネジがついているのか目にしたからなのだそうです。

年長のDちゃんともなると、模倣も高い観察力と結びついたものになっているんだな、

と感心しました。

 

帰り際にDちゃんが、「先生、この家はちゃんと折りたたみ式になっているのよ」と

言って、実演してくれました。

折り紙の作品を作る時のように斜めの線を利用して下りたためるようにしていました。

 

Cちゃんは、Dちゃんのすることが気になって仕方がないようで、

Dちゃんがドアを作ると、すぐさま、「わたしも玄関を作りたい」と言いつつ、

曲面の屋根だけでできているお家にどうやってドアをつけたらよいのか悩んでいました。

「折り紙でドアを作って、ここに貼ることもできるわよ」と教えると、

「そうする」と言っていたのですが、少しして見にいくと、

屋根でもあり壁でもある曲面にDちゃんと同じような切り込みを入れて

ドアを作っていました。

真似ること、考えること、問題を解決すること、選ぶこと、決断すること……

Cちゃんの頭の中でさまざまなことが同時に起こっていたのでしょうね。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。