虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

「質のいい保育は、子どもの人生を変える」という言葉 3

2017-10-20 21:10:22 | 幼児教育の基本

(↑小2のAくんが作ったビーバーの巣です)

 

保育の質の研究で、

 

授業や課題活動の中で

保育者から与えられた知識から学ぶ「授業中心」カリキュラムと、

 

遊びの中での人とのかかわりの中で子ども自身が学ぶ

「遊び中心」カリキュラム



の研究では、授業中心のカリキュラムで社会性の発達に

多くの問題がみられました。

知的な発達についての両者のカリキュラムの差はまったくなくて、

暴力や万引き・薬物使用など反社会的行動の回数は

「授業中心」カリキュラムの子どもたちが、他の二倍以上と

非常に多かったのです。

 

社会性の発達にそれほど大きな差が出た理由は、

授業中心のカリキュラムでは、保育者から、

人との関わりを学ぶうえで必要な援助をあたえていないため、

そうした対人関係能力が獲得できななかったのではないか、

あるいは、「授業」中心保育では

「子どもが大人から指示を受け続け、子どもの自発性の発揮が

いたずらや失敗として扱われることが多くなり、

自己の自発的な能力発揮についての罪悪感」をもたらし、

自ら積極的にかかわろうとする意欲や好奇心が育たなかった

のではないかと述べられています。

 

『保育の質を高める』で取りあげられていた、

ガーランドとホワイトのロンドンの保育園の運営と実践の比較と

分析によると、

保育園によって保育者と子どもとの会話の基本的な

スタイルが異なっていたそうです。

園によって、まったく対照的な会話が日々繰り返されるので、

その中で展開される子どもの充実感、積極性、他者への基本的な

信頼感などに大きなちがいがでることが予想される、とありました。

 

ガーランドらは、保育園を単位として、

保育者と子どもの関係を

「肯定的な関係」「否定的な関係」と名付けて、

基本的な子どもの見方や子どもの行動理解の仕方をもったものと結論しています。

 ガーランドらによると、保育者と子どもの関係の性質が、

子どもの発達に決定的な重要性をもっている、とのことです。

 

★ 活動を開始・選択するのは誰?

 <肯定的な保育者と子どもの関係>

子どもたちは、何を、いつ、どのように誰と遊ぶかを自分で選んで、

一日の大半を過ごしている。


<否定的な保育者と子どもの関係>

一日の大半の時間は、大人が決定した活動で構成され、

大人が活動を開始し、コントロールしている。

 

★ 子どもの製作物の展示方法

<肯定的な保育者と子どもの関係>

子どもの作品は自己表現として評価されており、

そのためたくさんの作品が壁に飾ってある。


<否定的な保育者と子どもの関係>

子どもの作品は、おとなの基準にどれだけ近づいたかで

評価されており、そのための少数の「模範」が飾ってある。

 

 

★ 子どもの問題行動の保育者によるコントロール方法

<肯定的な保育者と子どもの関係>

子どものもつ内的な自己統制力を信頼した対話型のスタイル。

(対話と合意にもとづいて、個別的に、大人への注意と変わらない口調で

話をする)

 

<否定的な保育者と子どもの関係>

子どもの内的自己と自己統制力に信をおかず、子どもへの

命令・避難・物理的強制など外的な手段に訴える対決型の

スタイル(大きな声で、はじめからトラブルを予想したイライラした口調)


 

★ おしゃべりや悪口への対応 

<肯定的な保育者と子どもの関係>

クラスの中での子どもたちの会話が多く、うるさい。対立や敵意の

感情の表現が許されている。

 

<否定的な保育者と子どもの関係>

静かにさせようとする保育者の試みが

頻繁になされる。子どもの間の敵意の表現が

ただちに抑えられる。

 

 

★ おしゃべりや悪口への対応

<肯定的な保育者と子どもの関係>

身のまわりの世話をするとき以外にも、大人から子どもへの(愛情

表現や慰めの)身体的なふれあい行動がみられる。

 

<否定的な保育者と子どもの関係>

身の回りの世話以外には、身体的なふれあい行動はほとんど見られない。

 

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保育の質は、子どもの発達にこれほど大きな影響を及ぼすもの

であることが指摘されているのに、日本では

保育園の側も保護者の側も

保育の質について真剣に話し合われることがほとんどありません。

 

 『保育の質を高める』の中で、大宮勇雄先生は、

保育の質とは、「プロセスの質」(子どもたちの日々の

保育園生活の中での経験の質)のことであり、

あくまでも、「顧客満足度」によって評価されるものではない

と強調しています。

 

でも、日本の保育の現場は、顧客・消費者にとっても

「満足度」が重要で、サービス提供者にとって購入意欲を左右する

「人気」や「満足度」ばかりが注目されているようです。

 

大宮勇雄先生は、

保育の質を顧客満足度で測ることの

最大の問題点は、

社会全体の利益としての「すべての子どもたちの発達」保障という

課題意識ははるか後景に退かざるえない点にある

と述べています。


市場主義は、「子どもの発達への権利」という視点を
欠落させたものといえます。
 
 

 



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