虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

愛情をかけて可愛がって育てているのに困った言動が増えてくる時 (ユースホステルのレッスンから) 1

2016-11-12 20:44:35 | 日々思うこと 雑感

親御さんはいつも優しく根気よく愛情をたっぷり注いで育てているのに、子どもの困ったちゃんぶりが日増しに強くなっていく場合があります。

前回のユースホステルのレッスンでも、今回のユースホステルのレッスンでも、そんなわが子の態度に戸惑う親御さんの姿がありました。

 

親御さんからの承諾を得て、5歳の★くんのケースを紹介します。

★くんはユースホステルの異年齢のレッスンにはじめて参加してくれました。

目がクリッとした茶目っ気のある男の子です。

運動神経がよくて活発な明るい子です。

 

発達面で気がかりなことはなさそうなのですが、わかっていても大人の声かけを無視することがたびたびあって、危険なことをしている時に注意しても知らんふりしていて制止がきかない様子は気になりました。

 

また本人に十分できるレベルの課題もいやがってやろうとしなかったり、質問を聞こうとしなかったりしました。

ちょっと考えなくてはならないような、知的な課題全般に耳を傾けることさえ拒否するような意欲のなさが目立ちました。

 

「聞く」こと自体を拒絶して、憎まれ口をたたいて逃げてしまうので、語彙の量や語彙の理解力などに問題がないか、お泊りレッスンの間、★くんの言葉に注意を傾けていました。

また「見る」作業中、たちまち落ち着きなく視線が泳ぎだすようだったので、見る力についても、何か問題が感じられないか注意していました。

 

★くんは人が好きな快活な子で、誰とでもすぐに仲良くなれる一方で、年上の力のありそうな子を足で蹴ってちょっかいをだしたり、友だちが集中して何かしていると邪魔したり、

理由もなくお母さんを叩いたりする、人との関わり方の幼さがありました。

 

★くんのお母さんもお父さんも温和で常識的で落ち着いた方々で、★くんにたっぷり愛情を注いで育てています。

 

次回に続きます。

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記事の内容とは関係がないのですが、ついでに今回のユースホステルでのレッスンの様子を紹介します。

 

↑1枚の紙に切り込みを入れるだけで立体があらわれる様子に4~6歳の子らはため息を漏らして感動していました。

さっそく見よう見真似で創り出す5歳の◎ちゃん。

 

↑◎ちゃんのお絵かき作品も素敵ですね。

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教室外の子どもたちと接する機会があると、発達障害などのハンディーキャップがないにもかかわらず、★くんのような気になる態度を示す5、6歳の子とたくさん出会います。

 

「どうしてそうした困った態度を身につけてしまうのか」のもとをたどると、2、3歳という自我が生じはじめて、自己統制力が育っていく過程で

周囲の接し方がまずかったり、環境に少し問題があったんじゃないかな、と思われることが多々あります。

 

過去の原因探しばかりしていても仕方がないのですが、これからどのようにして気になる行動を克服していくといいのかを話題にする前に、

2、3歳児を育てている親御さんたちに学んでいただくためにも、そうした困った態度が生じてくる仕組みについて説明させてくださいね。

 

山梨大学の加藤繁美先生は、次のようにおっしゃっています。

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「自己チュー児」などと呼ばれる「超わがままタイプ」の子どもは、「しつけ」ができていないというよりも、自分の言葉を聴き取られ、自分の思いを受け止めてもらう心地よさを知らない子どもが、「荒れ」た行動をとっているのである。

その理由は、子どもの自己統制力が育っていく道筋が、実はそうした構造をもっているからにほかならない。

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子どもは最初に、大人と親密なコミュケーションの過程で、愛されることの心地よさを獲得していきます。

加藤繁美先生によると、一口に「愛されることの心地よさ」と言うけれど、実は乳児期に体験する大人・子どもコミュニケーションの質は、その後の子どもの育ちを規定するくらい大きな意味を持つものなのだそうです。

 

大人たちは子どもが自分でも自覚していない要求を読みとり、ていねいに「意味づけ」し続けます。

子どもはそうやって繰り返されるコミュニケーションを通して、自分の要求と音声が対応していくことを知っていきます。

 

そうして乳児期に獲得した「愛されることの心地よさ」をベースに、音声で表現できることを知った要求世界を自分の興味・関心にひきずられるようにして、どんどん表現するようになります。

それが「自我」の誕生と呼ばれるものです。

要求を主体として成長していくこの時期に、大人が子どもの発するものを受け止め、同時に方向づけるという対応を辛抱強くていねいに続けていくことで、

子どもは言葉で表現するようになった世界を大人と共有することに幸福を感じるようになるそうです。

 

そして2歳半を過ぎる頃から、大人と共有した価値の世界がはっきりしてきて、知性として形成される「第二の自我」の芽となるのだとか。

第二の自我とは、「社会的存在としての自分がどう行動すべきか」という形で知性として認識される「規範的自我」「理想的自我」である点を特徴としているそうです。

 

 3、4歳とは、身体が求める要求世界としての「自我」の世界と、知性として育てた「第二の自我」の世界の間に生じる矛盾と葛藤を生きている時期で、

やがて4歳半を過ぎる頃から、「自己内対話」をしながら生きていくようになります。

現在は、「自己内対話能力」がうまく育っていかない子が急速に増えていると言われています。

5,6歳という幼児後期になっても「自我」の世界だけは出し続けるけど、「第二の自我」が育っていかないという困ったちゃんが増えているのです。

 

5歳の★くんにしても、自分の要求はいくらでも出すのですが、「社会的存在として自分がどう行動すべきか」に気づいて、自分の内面でそれと折り合いをつけて行動に移すことができません。

「欲しい」とか「したい」とか、自分から要求を出すこと以外に無関心で、外からの要求には無視するか、憎まれ口をきいて相手もやりこめるかのどちらかで対応しているのです。

 

↑ ユースホステルのレッスンで。

回転すると模様がどのように変化するのか確かめています。



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