虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

子育ての迷いや悩みから抜け出すため の あれこれ 8

2014-08-19 12:49:14 | 日々思うこと 雑感

「学校の持ち物の管理がいい加減である」という問題の主役は誰か、といえば、

Bくんです。

そして、管理を怠ったために困っている人物は誰かというと、Bくんです。

 失敗して叱られたり、「ない」ことで困ったり、

なくしたために学校に行くのが憂鬱になったり、友だちに借りたため別の問題に

ぶつかったりして、実際、辟易しているのです。

Bくんは「何があってもどこ吹く風」という様子で、

どーんと大らかに現実を渡り歩くタイプの子ではなく、ちょっとしたことで気を

病みやすく、小さい変化にビクビクする過敏な一面がある典型的な現代っ子。

 

でも、Bくんのお母さんの相談とBくんの姿から、

「物の管理の問題で悩んでいる」のは、Bくんのお母さんだけであることがわかります。

 

「問題解決に取り組んでいる」のもお母さんだけです。

 

ついでに言えば、

「その問題を恥ずかしいと感じている」のも、「どうしようかと考えている」のも、

「起こった出来事を思い出し、状況をシュミレーションしている」のも、お母さんです。

  

 「寝る前に宿題をするまで、嫌なことは一つもなくて、

楽しいことをしていて、その間ずっと楽しい気分だ」というBくんの弁から察するに、

肝心のBくんは、

「物の管理の問題」で、しじゅうお母さんから叱られたり、愚痴を言われたり、

悩みの種にされたりしていることすら、少しも悩んでいないのです。

 

正確には、言語化して悩んでいない、それに意識の焦点をあてていない、

といったことでしょうが。

 

とにかく、主役も、問題に遭遇したのも、

現場で困ったのも子ども本人ではあるけれど、

あくまでそれは身体としてのその子で、問題にぶつかった時点からの感情と思考は、

お母さんにバトンタッチ。

心と頭はお母さんの担当……という子は、Bくんに限ったものではありません。

 

ワークショップ等に参加している幼児や小学生にしても、

ちょっとうまくいかないことがあると「ママー」「せんせー」と助けを呼ぶところ

まではいいとしても、こちらが援助の手を差しのべたとたん、

「うまくいくかな?」「どうしよう?」「ちゃんとできたらいいな」と事の成り行きを

心配そうに……あるいは真剣に見守るのではなく、

その時点ですっかり他人事になって、気もそぞろに新しい何かを探索しはじめる

……という子があまりに多いのです。

 

子ども間のトラブルにしても、当人同士が、嫌な気分を味わったり、

不満をぶつけあう時間もないままに、親なり園の先生なりが割って入って、

「~だよね。ごめんなさいって謝ろう」と、それぞれの子がどういう感情を抱いて、

どういう行動を取ればいいのか示唆してしまうので、そこでも、

主役も、問題に遭遇したのも、現場で困ったのも子ども本人ではあるけれど、

あくまでそれは身体としてのその子で、問題にぶつかった時点からの感情と思考は、

大人にバトンタッチ。

心と頭は大人の担当という流れができています。

とにかく忙しい現代。子どもの感情が興奮してから鎮まるまで待っていられないし、

子どもの考えが自己中心的なものから、より大きな視野で考えられるまで

紆余曲折して成長する時間を考慮していられないのです。

そもそも、問題に遭遇するまでしていた活動が、問題を乗り越えても

やりたいほど『したい』ことだったのかあいまいでもあるのでしょう。

子どもが自分のやりたいことを見つけるまで……

また、やってみたいという気持ちに火がつくまで、

ゆったりとした時間があるほうがめずらしいでしょうから。

 

感情と思考を抜きにした体験から、動物のように、皮膚感覚だけで、

「あれは嫌」「あの子は嫌」「取られたら嫌」といった反射的な反応を

身につけるものの、

日々の体験が、自分なりの価値観を育むものになっていない、ということは、

多かれ少なかれ、どの子にも起こっているのです。

 

だとすると、Bくんのお母さんは、現在の子育ての落とし穴にはまって、

今の時代が抱える問題を悩んでいると言えるのかもしれません。

 


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3 コメント

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Unknown (ふく)
2014-08-19 23:52:55
ちょっと前まで私もBくんのお母さんみたいな感じだったかな、いや、今もまだあるかも…と思いながら読みました。

今日同じ幼稚園の子達と公園で遊んでいたら、トラブル続出でした。ただありがたいことに周囲に他のママがいなかったので、介入せず危険だけないように見ていました。
噴水で年長の子供達がうちの長女(小1)をを水がたくさん出るところに強引に引っ張ったのですが…案の定長女は大泣きでした。

私が長女をヨシヨシしていたら、引っ張った子が何度も謝って、それ以降は他の子らも引っ張る行為がなくなりました。

もし大人が下手に介入していたら、張本人も自発的にやめなかったかもしれないし、周りの子はこれをしたら危ないな、とか面白がる子もいるけど嫌がる子もいるんだな、とか学べないんだろうな~と思いました。

子供達だけでトラブルを乗り越える経験って、どんなささいなことでも少ないのかもしれないですね。

子供達を信頼することが大事だなって改めて思いました。
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Unknown (ゆきうさぎ)
2014-08-20 09:25:14
息子は、私と、対立すると、すぐおばあちゃんの所に行って、味方になってもらい、おばあちゃんに私(母)を怒ってもらう。おばあちゃんは、親が悪いと決め付けてくる。あるいは、おばあちゃんがお菓子、ジュースをあげて問題から気をそらさせる。そして息子はいい気になってる。

子供の味方になってあげるのは、大切でもありこ、ありがたいことなのかもしれない。だけど、問題をおばあちゃんが引き受けてお嫁さんを怒るだけというのは、腑に落ちない。嫁に「文句あるなら出て行け」と言う。
小学生にもなっているのに、パンツ、靴下まではかせてやっているおばあちゃん。
私が子供に「自分でしなさい」と言うと、おばあちゃん「はかせてやって何が悪い」と怒る。
主人から、着替えに手を出さないようにと言ってもらいましたが、世話を焼きたいのは、おばあちゃん自身のためであって、孫のためになってないということは、理解できないようです。
過干渉、過保護。
息子10歳、精神は、幼いです。
まずは、おばあちゃん対応が一番の課題です。




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おはようございます (かりん)
2014-08-20 11:15:11
興味深く記事を読ませていただいています。

現在1歳9ヶ月の息子がいます。

なるべく子どものすることに介入しないように見守っているつもりですが、うまくいかないことがあって「う~~~!!!」とヒステリー??のような状態になったり、「ママ~~(手伝って、やってみせて)」と言われたときに手を貸しています。

最近、「手伝って」といわれても、すぐに母親が動かない方がいいのかな・・・とも思うようになってきました。

というのは、私が手を離せないときに、「自分で解決して」と言ったら、なんとかしているときが多々あるからです。

反面、手伝わないと、もういいや、とそれを放置してしまうこともあり、かといって手を貸すと、それをじっとみて、やろうとするときもありますが、「親に解決してもらって、ハイ終わり!!」な態度であることもあります。

ですから、息子が助けを求めてきたときに、どの程度、どういう風に手を貸したらいいか、今ちょうど悩んでいました。

手伝う、といいましても、息子にお手本を見せる、という感じで手を貸しています。

先生の続きの記事を楽しみにしています。
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