虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

勉強が好きになるまでのプロセス 続きの続き

2018-06-24 19:47:25 | 日々思うこと 雑感

前回の記事の続きを書く前に、虹色教室のことについて、少し触れさせてください。

虹色教室の特徴は、ひとりひとりの子と長い期間関わることが多いことです。

1,2歳の頃出会って、それから10年あまりの年月、見守り続けることもめずらしくありません。

もうひとつの大きな特徴は、子どもとの関わり方が多岐にわたっていることです。

工作したり、実験したり、ゲームをしたり、ブロック遊びをしたり、ごっこに興じたり、

算数を学んだり、お泊まりのレッスンに行ったり、それぞれの子のその時期の興味やニーズにそった

活動をしたりしています。

 

 そんな風に、幼い頃から大人のような口をきくようになる頃まで、

その子がどんな風に成長していくのか見守りながら年月を重ねるうちに、

子どもというものやそれぞれの子の個性、

子どもの育ちというものに対して、

深い信頼感や安心感や自然を前にして感じるような敬虔な気持ちを抱くようになりました。

 というのも、どんなに今、目の前の子の問題行動が目立っていても、できないことばかりが目についても、

子どもは成長の過程でそれを取り戻すかのような劇的な成長の時期が訪れたり、

個性の力で、不利な条件を利用して、他の子らが真似できないような面を大きく伸ばしたりする

姿を何度も目にしてきたからです。

 

戸塚滝登著の『子どもの脳が学ぶとき』に、数学者のシーモア・パパートの

『パパートの原理』がの一部が紹介されています。

 

「子どもの脳は単に知識を詰め込まれるだけでは

発達できず、その知識を使うための知識

(より良い方法を見つけたり、発展させたりする体験などの知識)を与えられない限り、

うまく成長することはできない」という考えのことです。

 

子どもの脳は単に新しいスキルや知識を身に付けるだけでは成長できない。

「知識を使いこなすための知識」

「知識についての知識」を学ぶことも、

子どもの脳の発達にとってかけがえのないステップになる。


               『子どもの脳が学ぶとき』戸塚滝登著

 

この著書には、脳神経科学者、ジュディス・ラポポートとジェイ・ジードの脳スキャナーを

使った脳発達の研究の話題も取り上げられています。

ララポート博士が、普通のIQの子どもたち、ややIQが高い子どもたち、最もIQが高い子ども

たちの3つのグループに分けて子どもの脳発達と知能指数との関係を追跡したところ、

もっとIQが高い子どもたちにだけ、奇妙な現象が見つかりました。

それは、

IQの高い子どもたちの脳ほどスロースペースで成長し、思春期がやってくるまで

成長をやめなかったということです。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

虹色教室では、先に書いたように長い期間、多岐にわたる活動を通して

子どもたちとかかわるため、

知識を使うための知識、つまり知恵を獲得していく場面にしょっちゅう遭遇します。

また、教室では、子どもがよりよい方法を見つけたり、オリジナルアイデアをひらめいたり、問題の解決法に気づいたり、

それらを繰り返しによって洗練させ、より高度なものへと発展させていけるように

環境を整え、私自身や親のスキルアップに努めてもいます。

 

 

最近、10年以上続けてきたそうした活動が実を結び、思った以上の成果を得るようになったのを肌で感じています。

その一方で、新たな問題に頭を悩ませてもいます。

「教室での子どもたちとの関わり」という現場の仕事について経験知が上がるにつれて、

ブログを読む不特定多数の人々に伝えることがより難しくなってきたのです。

 

子どもの成長のスイッチはいつどんな時、どのような条件で入るのか、

子どもとの関わりでどんな点に気をつけていけばいいのか、現場の子どもとのやり取りのなかでは正確に

把握できても、それを言葉でさらっと説明すると、どうしても言葉足らずになってしまうのです。

 

虹色教室通信は、そうした 現場での気づきを日誌のようにつづっているものです。忙しい日は日誌というより

メモの状態でアップしています。

 

  <補足>

断片的な日々の話題なので、もしもう少しまとまった形で読みたいという方は、

 PHP研究所で、『子どもの考える力をぐっと引き出すお母さんの話し方』という本にこれまでの気づきをまとめていただいたので、

手に取ってみてください。

 

「前回までの内容について、具体的な例をあげて、くわしく説明を……。」という心づもりはあるのですが……。

これから書こうと思うことは、あらかじめ子どもとの関わりの土台部分を共有しておかないと、

「読めば読むほど、何のことやらわからなくなった」となりがちな内容なのです。

 

 

そこで、子どもとの関わりの土台となるものをわかりやすい言葉で

解説しておられる他のブログの記事を引用させていただくことにしました。

 

(先に書いた「相手と自分の気持ちが強烈に迫る状態」の話は、この土台について

十分理解していただいた上でのより繊細な対応を扱っているため、後ほど書かせていただくことにします)

 

人気ブログ 『保育士おとーちゃんの子育て』に、

大人は「結果」をつくりだしたくなる というテーマで書かれた一連の記事があります。

 

大人は「結果」を作り出したくなる

 『大人は「結果」を作り出したくなる』のお話からふたつのこと 

『大人は「結果」を作り出したくなる』のお話からふたつのこと  vol.2 

『大人は「結果」を作り出したくなる』のお話からふたつのこと  vol.3 

 

 『保育士おとーちゃんの子育て』のブログにある一連の記事は、

子どもの勉強について書かれたものではありません。

 

でもここに書かれている

 

★  「できるようにしないこと」が子供を「できるようにしてくれる」


★ 「教えない・させない」でも子供は伸びていく


という保育の本質に触れる言葉は、そのまま子どもの学びを支える上での本質を言い当ててもいます。

 

直接的に子供の姿をこねくり回すことで、大人の望む「結果」を子供に短絡的に持たせる関わりが、

子どもが自主的に主体的に自分で考えていこうとする姿を奪ってしまうことは、

保育の現場だけで起こっている問題ではありません。

教育現場でも、まだ十分に準備のできていない子に大人の望む結果を即座に求めるあまり、

自分の頭で考えようとせずに、言われるままに丸暗記していく姿や

ただ作業として習ったことをなぞっていくだけの姿につながっているのです。

 

大人の管理や支配は、教育現場から、

自分のアイデア、疑問、知への感動、より高度な内容に踏み込んだ質問などを

発信していく姿、自分の思考の筋道を苦労しながら表現していこうとする意欲を根こそぎ奪ってしまいます。

 

 「なにが必要かを伝え、子供にどうすべきかを考えさせ、そして実行させる。

それでもうまくいかなかったり、失敗したら、そこにサポートをする。
それでもできなければそこから大人が手を貸すのでも遅くはありません。」

という保育士おとーちゃんの言葉は、

子どもの学びを支える際にも通じる言葉なのです。

 

 

勉強が好きになるまでのプロセス 1

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

子どもが「習ってない!くんタイプ」だった場合、

次にとおるべきプロセスは、間違っていてもいいからやる気があふれだしている状態で、

それを存分にやりつくしてから、次の

「理解した上で答えを導きだす」「慎重に忍耐強く考え抜いていく」「考えるための技能を身につけて解く」

というプロセスへと移っていくといいのかな……と考えています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

間違っていてもいいからやる気があふれだしている状態とは、

ある意味、学びを支えている大人に対する信頼感がある状態とも言えます。

 

間違っていても、待ってもらえる、

間違っても、大人は自分の思考の筋道を信頼してくれていると安心している、

間違っていても、それは終わりではない。間違っても、できなかったと烙印を押されるわけではない。

なぜ間違ったのか考えたり、

もう一度チャレンジしなおせば、リベンジできる、

 

ということを体験的に知っている状態と言えるのです。

 

また、学んでいる自分自身に対する信頼感が十分ある証拠でもあります。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。