「少女仮面」

2013-10-07 01:32:25 | 舞台
後半は面白かった!そうそう、いくら段差があるとはいえども桟敷形式は腰が痛いよ~。もう歳だから勘弁して~(涙)

今月のシフトが決まって何か公演がないか検索をしていた時に、なんと大好きな演劇評論家の扇田昭彦さんがトークゲストに来られるという情報を得て、たまたま今日が仕事休みだったので、即行チケットを購入し観てきました。

ずっとテレビで見ていたあの扇田さんが関西に来られるなんて滅多にあることではないので、今日はめちゃくちゃ嬉しかったです!

しかもこの「少女仮面」って宝塚の故春日野先生をモデルにしたというか、役名がそのまま“春日野”という人物が出て来るんですよ。以前からタイトルは知っていましたが、内容は全然知らなかったので、まさかあの唐さんが宝塚をモチーフに作品を作っていたなんて全然知りませんでした。

この作品は、元々唐さんが早稲田小劇場時代の鈴木忠志さんのために書いた作品で、寺山さんもそうだし、清水邦夫さんもそうだけど、当時のアングラ全盛期の時代にこぞって宝塚を題材にした作品を作っていることにある意味感動してます。ついつい、男にとって宝塚とは何ぞや?って考えてしまいますね。

アフタートークでも話題になってましたが、この作品が岸田國士戯曲賞を獲った時は大問題だったそうです。それを聞いてぶっちゃけ納得してしまいました。私も、なんでこれが!?って思った(笑)

後半は確かに作品として面白かった。それは脚本としてというより、演出&演技がに見応えがあって良かったです。

唐さんの戯曲だから当然の如く意味不明な内容ではあるんだけど、やはり宝塚を題材にしているだけあって、生活そのものが男役として生きている主人公がある出来事をきっかけに女性に戻る瞬間や、その主人公に憧れているファンの女の子が逆に男役のように振る舞う姿や、そして、その主人公がかつて満州で恋に落ちた甘粕大尉を女性が演じた点は、観ていてとても面白かった。

てっきり、本当に春日野先生の人生を描いているんだと思ってしまうくらい、リアルな人物描写に驚いてます。これ、途中で春日野先生本人ではない別の人というのが分かる展開だから許されるけど、そうでなかったら、脚本が超すみれコード引っ掛かりまくってます(笑)

この作品、絶対宝塚関係者も観ている(いた)はずだから、せめて役名だけでも変更の申し立てしなかったのかな…?なんて思ったほど。

ぶっちゃけ書いてしまうと、「嵐が丘」のヒースクリフとしてそのままなりきっている“春日野”という男装の麗人は実は精神疾患者だったというオチ(?)なんですよ。だから人物描写的には全く春日野先生とは関係ないんですが、それまでがリアルでした。

満州での甘粕大尉と恋。中絶の経験。結婚歴…等々。ね、完璧すみれコードに引っ掛かっているでしょ?“春日野”役に関しては演出も女優さんも、これは脚本も良かった。この“春日野”が自分探し、というか、自分の肉体探しで狂気に陥る演技はかなり見応えがありました。

で、気付いたこと:以前、私の前世は嫉妬魔かもしれないと書いたけど訂正します。わたくし、ただ単に狂気の役や演技が好きだということ。やはり、化けものや妖怪は大好き!(笑)前世関係ない。

アフタートークで分かったことなんですが、この作品は、唐さんの演劇論だったそうです。役者とはどうあるべきか?というのがテーマだったらしく、宝塚の女性が男性を演じる特異性としての演技ではなく、役者が役を演じるということはどういうことなのかを追求た作品だそうです。

確かに、この作品の初演を飾った鈴木さんには演技メソッドがありますからね。唐さんは、唐さんなりに演劇論を書いていたんだと分かったら、タイトルの“少女仮面”の意味が良くわかる。この作品には頻繁に“仮面”なる単語は出てこないんですよ。ラストに仮面を被ったファンの女の子たちが登場します。演劇論だと分かったら、肉体探しの意味が少し理解できるし、まさに“ガラスの仮面”のその真意と重なりますよね。

アフタートークで、決して宝塚を小馬鹿にした作品ではないと分かったら、戯曲賞はアリだと頷けました。

これもアフタートークで分かったことですが、今回演出を担当した深津篤史さんは微妙に唐さんが書いた脚本のト書きを変えたそうです。腹話術の人形は人間が演じたり、暗転がなかったり、最後の面は春日野先生でなく昭和天皇であったりと変更したそうです。甘粕役も男でなく女性が演じたことも、深津さんのアイデアだそうです。ぶっちゃけ、深津演出プランは良いと思いました。宝塚らしさもあり、微妙に反戦も訴えかけていることも分かったので、ラストの昭和天皇はめちゃ納得しました。

もはや、当時の演劇論の解釈より、もう一つの側面であるこの作品が上演された時代背景こそが、今まさにこの時代に上演する意味があると思えたので、深津さんのアイデアは正しいと思いました。

宝塚も来年で100周年を迎えるし、戦後68年が経とうとする今だからこそ必要なメッセージを感じました。この作品が書かれた1969年はまさに安保闘争で戦争反対で若者が奮起していた時代です。終戦後から水しか飲んでないという登場人物もしかり、“春日野”という役もまた、あたかも「ミス・サイゴン」の新演出版であるベトナム戦争後のPTSD精神疾患者に共通するものを感じたので、アフタートークでは語られていませんでしたが、もし“反戦”がテーマであったのであればそれはそれで素晴らしい演出だと思いました。

アフタートークでも語られてましたが、確かに、唐さんの戯曲にしては分かりやすい作品の部類に入るのかもしれませんね。

アフタートークで、あの物腰の柔らかいイメージの扇田さんが、当時唐さんや鈴木さんと交流が深かったことや、旅公演について行ったなんて想像がつきませんでした。アングラ関係者って喧嘩早いってイメージがあるからね。扇田さんと結びつかない。でも、当時の唐さんにまつわる話は大変貴重でした。

唐さんのことをモーツァルトのように天才だと称えられてましたが、う~ん、私にはまだ分からん。確かに複雑な思考回路を持っているのは確か。

そうそう、この作品の台詞の中に、“ゲーテ”“二都物語”が出てきた時ははめちゃ驚いた。今日は、いくら偶然といえども、色んな点で導かれてるわ~と思った。

今日のまとめ:去年からなぜか急に唐さん作品に縁が増えた…、不思議。

そうそう、実は、祐飛さんの「滝の白糸」のチケットまだ取ってません。っていうのも、11月は観たい作品が多すぎて希望休オーバーで、優先順位から外してしまったので休みが取れないんですよ。だから偶然の休みがない限り観れません(涙)どうか休みがあってチケットも取れますように!m(__)m

よりによってなんで11月に限って観たい作品が集中するんや…。



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