このろくでもない世界で 

2024-08-06 20:12:48 | 映画
まさに〇〇ノアールという表現がピッタリなくらい、今の日本でコンプライアンス等で映像化出来ないだろね、とことん不条理な出来事しか描かれていない。

地味にグロいシーンもあり。最初、ペンチで何をしているのか分からなかった…。

最後までストーリーの軸が見えてこない、いや、単純に私が置いてけぼりを食らってるだけだが…、何を描こうとしているのかさっぱり分からなかった。

一体どんなラストになるのかも想像がつかない。いや、主人公は自〇するしかないくらい、主人公に覆い被さってくる不条理さにただひたすらゲンナリするのみ。

ラストは救いなのか否か?私にはどちらとも判断が付きにくかった。それくらい主人公が背負った無秩序さが本当にいたたまれない。

でも、作品全体として、監督が伝えようとするメッセージは、

大人は、ホンマ、自己中な生きモンやな!

社会、マジ腐りきっとんな!

子どもはペットちゃうぞ!

いや、まだペットなら愛がある。

ゴキブリやないんやぞ!

リモコンで動くロボットちゃうねんぞ!

虐待するなら、金出して一人暮らしさせたれや!

虐待を見て見ぬふりするのも同罪やぞ!

自分の子供も守れないなら、さっさと離婚せーや!

なんでも金や暴力で思い通りになると思ったら大間違いやぞ!

汚れた金で政治家にさせるな!

韓国だからではなく、日本も同じや!

主人公も、なんで家に帰ってくるねん!?

虐待されるために帰ってきとるのと同じやんけ!

なんで同じこと繰り返すねん!

主人公を取り巻く環境もなんでやねん!?やけど、

主人公に対しても、なんでやねん!?とツッコミたくなるくらい、自ら負のスパイラルに何度も足を踏み入れる。

最後まで、不条理な出来事がたたみかけてくる。

だからといって、ここで描かれているのは、ただの不条理だけではない。

不条理の裏に潜む愛の渇望が描かれている。

どうしようもない親やけど、子どもにとっては、やっぱり自分の親やねん。たとえ理解して貰えなくても、それでも子どもは好きやねん。息子は息子で。娘は娘で。

それに引き換え大人は…。

大人は大人で、金と暴力で物を言わせ、不都合なものは排除。

子どもは、いつも大人に振り回されっぱなし。

そんなに権力が欲しいんか?

人を支配したいんか?

マジで、これでもか!ってくらい醜い社会を容赦なく見せてくる。

ぶっちゃけ、底辺に住む人間の、裏社会でしか生きられない人物達の、ごく一部を切り取った物語だとは思わない。

これぞ、社会の現実であり、世界情勢だと思う。

逃げようにも逃げ方が分からない。そもそも、逃げるという発想も思いつかない精神状態なのかもしれない。

悪いことだと分かっていても、自分を守るためには長いものに巻かれるしか術がない。

だれも自ら弱者になる選択はしない。

自ら進んで、好んで虐められたいと思う者はいない。

弱者にならないための方策しか考えないものだ。

それでホンマにええんか!?

そんなんで、大事な人を守れるんか? 

という監督の問いかけが私には伝わってきた。

本当に本当に辛い内容だったが、見終えたあとジワジワ余韻が棚引く作品だった。

ということで、本来全く観る予定になかったのですが、去年たくさん映画を観たのでポイントが貯まり、今年はあまり観ていなかったため、有効期限が近づいてきたので、無駄に消滅させる前に観てきました。

他に観たい作品がなかったので、予告編を観てこれに決めました。

〇〇ノアールというか、不条理ドラマを書く脚本家として有名な野島伸司さんの1990年代のドラマ群がフラッシュバックされた。

「家なき子」もそうだけど、「高校教師」とか「未成年」も不条理モノやん。

ま、一番フラッシュバックされたのは三上博史さんと鈴木保奈美さんの「この世のはて」でしたが…。

あ、恋愛ものではありません。世界観が「この世のはて」に近かっただけ。

もう誰も救われない!報われない!

それにしても、ソン・ジュンギ、めちゃくちゃイケメンやな!

と対照的な主役のホン・サンギ。イラッとさせるくらいリアルな存在感だった。でも、ウルッとくる演技もあった。

まさしく、「女殺油地獄」の与兵衛を彷彿させるシーンがあって、めちゃくちゃリアルで怖かった。

人間は、一瞬で人格を(見)失うことがある。これぞ、魔が差すの真意だと思った。

それを踏まえても、映像は抵抗があると思うが、たくさんの大人に観て欲しいと思った。政治家もね。

ま、近くに座っていたオジサンは、退屈そうにしていたから、響かない人には響かないだろうね…。