レトロスペクティブ2023 3日目

2023-07-22 00:48:00 | 映画
ラース熱が冷めつつありましたが、やっぱさ、ラース作品を観続けると鬱ぽくなってしまうから要注意やね、

「君たちは〜」を観て気分がリセットされたので、ラース作品鑑賞再開し、「ヨーロッパ」と「アンチクライスト」を観てきました。


「ヨーロッパ」は、ぶっちゃけ難しかった。そもそも “人狼” の意味を知らなかったから、意味を探りながら観てたので、余計頭がこんがらがってきた。

鑑賞後に人狼を意味調べ、また分かりやすく書かれたあらすじを読んだ上で感じたことを書きます。適当なことばかり書いているのでスルーしてください。

なんとなしに「crime of element」に似た、心療ドクターによるの催眠療法を行っているようなナレーションがあって、最後まで何を意図しているのか分からなかった。

ってうか、とてもラース作品とは思えないくらい、また1991年の作品とも思えないくらい、レトロな映像美があって古き良き時代の白黒映画を観てる感覚だった。音楽のセンスもピカイチ!クラシック調でめちゃくちゃ良い。サントラが欲しくなったくらい。

ちょこっとラースも出演しており、若い頃のラースはイケメン!藁

終戦直後のドイツを舞台に、ドイツを支配する戦勝者連合国のアメリカと、そのアメリカに歯向かうナチスの残党のようなテロ組織 “人狼” との狭間で自分の思想が試される主人公。

主人公は、ドイツ系アメリカ人で、第二次世界大戦で敗戦したドイツの復興のためにドイツの寝台車の車掌として働き始める。

鉄道会社の社長の娘で、元人狼の一員の女性との恋に落ちる。

連合国が推薦するフランクフルト市長の暗殺に知らず知らずのうちに加担していたり、恋人を守るために列車に爆弾を仕掛けたり、いつの間にか人狼に加担している主人公。

元人狼だったはずの恋人(今は妻)はまだ人狼の一員だった。またその彼女から、列車爆破をすんでに止めたことに対して愚弄され、それだけの原因ではないが自暴自棄となって列車を爆破する。車両ごと川に落ちそのまま亡くなって終わり。

ちなみにここで登場する列車は連合国の象徴的存在。人狼にとっては、映像から察するに、連合国に魂を売ったドイツ人やアウシュヴィッツから帰還するユダヤ人が乗っている列車。

ドイツ復興の架け橋になろうとアメリカからきたのに、利用されて、自暴自棄になって、結局何がしたかったのか分からない主人公を描きつつ、ヨーロッパの知られざる実情を伝えたかったのかなと思った。いずれにせよ、よく分かってません。

「アンチクライスト」は、ぶっちゃけ、グロい映像があるのでやめておこうと思っていたのですが、どなたかがTwitterでウィレムの役が受難のキリストを書かれているのを読んで、ホンマや〜とついつい納得してしまい、覚悟してもう一度観ることにしました。

確かにウィレムの彼役は、受難のキリストです。でも、私からしたら、非キリストの受難だった。

彼は妻の彼女の病気を治すために、荒療治で彼女が怖がっている森に行く。荒療治の時点でセラピストとして完全にアウト!

彼のカウンセリングは全く彼女のためになってない。自分が良いと思ったことを行っているだけで、全く彼女の心や意思に寄り添ってない。

彼女が子供に虐待していることに気付き、心が離れかけていたのも事実だし、同じ受難でも聖書のキリストとは雲泥の差がある。

ラストのウィレムを見て、助かって良かった!と思われた方がどれだけいるのか私は知りたい。

その件に関しては、私は全然、良かった!派ではない。

ウィレム演じる彼を通して、歴史を通して、国内海外問わず、男はいかに女性を食い物にしてきたかが窺える内容にしか感じなかった。

ラース作品の中では、一見フェミニズムから遠い作品のように見えるが、私にはこれもフェミニズム作品だと思えてならなかった。

これまで清楚なイメージしかなかったシャーロットの魂を売った演技を改めて見て、やはり、めちゃくちゃ素晴らしかった!

ついついお子さんや旦那さん目線でも見てしまったくらい女優生命を賭けた表現力に脱帽しかない。

ここからニンフォマニアックが誕生したであろうと言っても過言でないくらい表現力の数々に、カンヌ以外でも女優賞を獲ってもたいたかった。

ぶっちゃけさ、この作品を観たら、シャーロット演じる彼女が悪者みたいな感覚に陥るけど、

私からしたら、子供を虐待って、親もまた虐待を受けてきたケースがほとんどだから、親の愛情を受けず育った子供達の未来はまさに大人の彼女だったりするんよね。彼女の彼に対する愛の渇望や依存心はとてもリアルなものを感じた。

(親が)虐待の克服の仕方が分かららないまま育てられた子供が大人になって、虐待の克服の仕方が分かると思うか?ってことですよ。

自分のこと知らな過ぎなんだよ。


ラース作品は、常に極端に表現されているけど、現実問題としても虐待は減らないと思う。みんな愛に飢えた人間の姿をした獣。獣なのか人間なのかは、本人ですら本性は分からない。

虐待は個人だけの問題じゃない。虐待が繰り返されるのは個人因子だけでなく環境因子も原因があるから、個人だけ解決しても全体では減らない。

こういう書き方をすると語弊があるが、一種の社会現象みたいなものだから広い視野で原因究明していく必要がある。イジメも同じで、イジメる個人だけの問題じゃないんだよ。

だから余計な彼のセラピストのやり方が全くいただけない。イライラするだけ。荒療治は1番やったらアカンことやで。ラストの彼の開放感をとても喜ばしく思えない。

これが男の歴史なんだとまざまざと感じる内容だった。

そうそう、ラスト、顔にモザイクがかかった女性たちが山を登るシーン、初見では裸の女性が山から降りてきてたと思ってた。いやー、記憶のすり替えの怖さもまざまざと感じた。

今回、ラストの顔のモザイク以外はまさかのモザイクなしだったので、「ハウス〜」よりもリアルにグロかった。

でも、私も年をとったせいか、モザイクなかったのになぜか初見よりも衝撃度は少なかった。初見は、もう二度と観ない!と思ったからね。