レトロスペクティブ2023 5日目

2023-07-25 01:11:00 | 映画
「ドッグヴィル」を観てきました。

「ドッグヴィル」の上映日程が出たときに、関西では、京都も大阪も同日1回限りの上映で、しかも仕事がある日だったので、

ラース特集なのにメインの「ドッグヴィル」が観れないなんて!!

今年は間接的ニコールイヤーなのに、突然降って湧いたラース特集でラース×ニコール作品を観れないなんて!!!

と、悔しさと喪失感でラース熱が冷めてきてたんですが、有り難いことに19時以降の上映だったので、神様ありがとう!の思いで仕事終わりに観ることができました。

東京でご覧になられた方のTwitterを読ませてもらってすこぶる評判がよく、そりゃそうやん!ニコール史上最高傑作やで!皆さんお目が高い!と全くの部外者なのに鼻高々になっていたのですが…。

初見映画館、DVDで4回は観ていたはずなのに、映像記憶も取りこぼしはなかったはずなのに、

やはり映画館で観ると感じ方が異なるのか、

年を取ったからか、

ラース作品ばかり観て思考がおかしくなったのか…、

後味がめちゃくちゃ悪かった。

テンションダダ下がりした。

「奇跡の海」でテンションダダ上がりしたのに、翌日「ドッグヴィル」でまさかのテンションが落ちるなるなんて思ってもみなかった。

2004年(日本公開)の初見時は、ラストでめちゃくちゃスッキリした爽快感を味わい、ニコール史上最高傑作!とDVDコンプリート版を購入し、blogのアイコンもドッグヴィルのニコールにしているくらい大好きな作品だったのに、

今回改めて観たら、アイコン変えようかな?と思ってしまったくらい後味がめちゃくちゃ悪い作品になった。


ラース作品史上最高傑作だと思っていた「メランコリア」もしかり、

名作は、ガンダムやナウシカみたいに何年何十年経っても名作じゃなかったのか???

なんで意識や思考が180度も変わってしまったんだろう???

と自分なりに分析した結果、

分かったのは、

自分に都合よく見て、都合よく理解して、その時の精神状態であったり、単純にニコールが好き!ラースが好き!とそもそも観る視点が当時と異なっていることに気付いた。

「メランコリア」は、地球と惑星メランコリアの愛と死の輪舞曲と思いたかっただけであったり、「ドッグヴィル」はニコールの演技最高!とファン目線でしか観てなかった。

ラース・フォン・トリアーという人間をちゃんと理解しようとしてなかったことに、ラースの過去作品群を観てきて気付かさせられた感じ。

「ドッグヴィル」は、「ダンサー〜」でアメリカに行ったことないのに制作したことを批判され、喧嘩を買う気で制作されたと言われてますが、実際は、9.11同時多発テロ後のイラク戦争で見受けられるように、アメリカの対応を揶揄した作品でもあるんですよ。

初見の時もアメリカを揶揄していることは気付いたけども、ニコールの演技が素晴らしく、またニコール演じるグレース目線だと後味スッキリな展開ではあるけども、ラースがこの作品で伝えたかったこともう一つの側面に全く気づけてなかった。

ぶっちゃけ書くと、アメリカの揶揄だけじゃなくて、特に男性陣も揶揄、批判されている。もちろん男性だけじゃなく一部の女性もね。

めちゃくちゃ人間の醜さが描かれている。ドッグヴィルというアメリカの小さな村の集団心理を描いているだけじゃない。こんな人どこにでもいるよ!アナタも含まれているかもしれませんよ!っくらい人間の裏表や本質をめちゃくちゃリアルに描いている。

ぶっちゃけ胸糞悪く感じることがあって、ポール・ベタニー演じるトムがだんだん自分自身に見えて仕方なかった。それが1番の後味の悪さ。

ラースにめちゃくちゃ見透かされたというか、自分の中にもトムと同じように、自分の弱さを指摘されたことに対してその腹いせに八つ当たりしたり仕返ししている自分がいて、その人間としての醜さをラースに指摘されている感覚に陥ってしまったから。

トムという登場人物がもはや架空の人物でなくリアルな人物として、また私自身を投影しているようにしか見えなかった。

いつも偉そうなこと書いているけど、実行が伴わない言葉だけであったり、人に言う前にお前が思い遣りを持てよ!とか、都合よく返事してんじゃねーよ!人間としての器がちいせぇーんだよ!

とダイレクトに指摘された感じ。

まさかこんか思いするとは思わなかったよ。

「ドッグヴィル」以降、ラースからニコールに作品出演オファーがありましたが、

「マンダレイ」も「ニンフォマニアック」も降板して正解!断ってくれてありがとう!と言いたくなったよ。

ほら、人間が小さいね。


ここまでは、鑑賞後数日経って書いた文章です。

普段は数日後に感想を書くことはないのですが、この作品に関しては、アップするの躊躇するくらいブルーな気持ちになり、自分自身頭の整理が必要だと気付いたので数日後に感じたことや想いを、あくまで自分のキロクとして書きました。

ここからは、「ドッグヴィル」鑑賞直後に感じたことを書きます。

結局のところ、この作品って、目には目を歯には歯を、傲慢には傲慢を、といった復讐法でしか世の中はよくならないって言いたかったと思うんよね。

グレースだって分かってるんだよ、自分がドッグヴィルで生まれ育っていたら彼らと同じことをするってことを。

このまま何もせず、何もなかったように立ち去ったところで、また誰か部外者が来たら、ドッグヴィルの住民はまた同じことをするねん。

話し合いをしたところで、自分たちは最大の権力の前では無力であり、従うしかないってことを自ら選択するんよ。保身に走るんだよ。

結局さ、武力を抑えるには武力で、戦争を終わらせるには戦争でしか解決できないんだよ。軍事産業のお金儲け云々関係なく。

個人因子、環境因子と原因追求したとこで、イジメも戦争も終わらないんよ。

こんなこと思いたくなかったけど、地球が邪悪なら惑星メランコリアをぶつけるしかないだよ。

過去を清算して1から始めるって本当に大変。実は、何もないゼロから出発の方が早かったりする。

話し合いだけで解決することは、実は、大した問題じゃないんだよ。結局は、見返りやお金が和解には効果的だし、それだけでは納得いかないなら裁判とかetc…そうするしかないのかもしれない。

もはや、和解というより妥協だよね。何処まで妥協できるかが焦点となり、

妥協沸点が低いから、簡単にキレたり喧嘩したり売ったりするんだよ。

「君たちは〜」と同じで、結局はどう生きていくかは個人問題ってことやね。

自分の無力さとかいい加減さをまざまざと突き付けてくる作品だった。

マジ、テンションダダ下がりだよ!

「ドッグヴィル」を観て改めて感じたのは、

ラースは女優さんに対してはサディストぶりを発揮して素晴らしい演技を引き出しているけど、めちゃくちゃフェミニストであることを証明してたね。

今までは、ラースとフェミニストは全く結びつかなかったけど、ラース作品を観続けたら、ラースは間違いなくフェミニストです。手法は異なるけど。

ストーリー上では男性の方がめちゃくちゃ蔑まれている。男性の方が悪者に描かれているよ。よく考えたらどの作品においても共通してた。だから映画館に意外と女性ファンが多いのは、ラースがフェミニストだと知っていたからかもしれないね。

ポール・ベタニーなんて…、トムの表現が完璧過ぎて私なら間違いなく病む。いくら主演女優の相手役の位置であってもトム役は嫌やな。ポール・ベタニー、良く頑張ったと思う。ま、どの役も嫌だけど。

やはり、ニコールのグレース役は、美しいニコールじゃないと説得力がなかったね。あの美しさは、ドッグヴィルの町では違和感でしかない。

あと、ニコールの重し付き首輪。改めて見ると、おぞましかった。悪趣味!そりゃ「アンチクライスト」誕生するわさ。

続編の「マンダレイ」は脚本の妙を感じたが、「ドッグヴィル」は、よう、こんな脚本思いつくなーと尊敬と軽蔑が入り混じる。

めちゃくちゃ複雑な心境…。


最後に、「ドッグヴィル」とは全く関係ないのですが、後日書いたとしてもちゃんと感想をアップしようと思わせてくれたきっかけを書きます。

たまたまYou Tubeで(結構好きで見てる)、島田秀平さんのお怪談巡りに比企理恵さんがゲストに出られている回を見、比企さんの霊体験を聞いて我に返りました。

テンションがフラットに戻りました。

ヤバい、ラースの悪口を書き続けるとこだった。っていうか、深い闇に陥りかけた。

やっぱさ、ラースは、フェミニストであると同時に、人間の深層心理や本質を見抜く天才。これだけは間違いない。

ラース、自分を見つめ直すきっかけをくれてありがとう!

私も感謝が足りなくて憑かれとこだった。

ちなみに、比企理恵さんといえば、やはり「不良少女と呼ばれて」の麻里役。麻里が亡くなるシーンはもう大号泣だった。あのシーンが1番好き!まさか、舞台に出るために急遽亡くなる設定になったとはね!まじビックリ!

今さ、伊藤かずえさんもYou Tubeされていて、かずえさんも「不良〜」では、モナリザ。カミソリマコも格好良かった!嫌な役だったけど(汗)かずえさんのYou Tubeに松村雄基さんも比企理恵さん等等…も出られていて、大映ドラマエピソードを楽しく聞かせてもらっていました。

なかでも、比企さんの怪談トークがめちゃくちゃいい。何がいいって、心霊体験の中に学びがあるから。あれを見た、これを見ただけで終わるのではなく、そこに必ず学びがあるのがいい。その経験と学びは、同じ悩みを抱えた方の助けになる!

世の中には病名だけでは解決できないことがあるんです!

感謝が足りないから霊に憑かれる。その通りだと思う。人のせいにしたり、当たり前のことを当たり前としか思ってなかったりするから、余計なモノが憑いて疲れ(憑かれ)るんだよ。

ありがとう!は最強の言葉。

比企さんと島田さんの会話で私の心もさっきより軽くなった!

ありがとうございます!

比企さんの幽体離脱話が大好きなので、

比企さん、絶対You Tubeすべきです!