花組「フィレンツェに燃える」「Fashionable Empire」@ホクト文化ホール

2022-10-27 01:11:00 | TAKARAZUKA
ほーほー、これが柴田先生版「白痴」なんやね。

確かに白痴の要素満載あり。柴田先生の初期作品だけあって、ここから「琥珀色の雨にぬれて」「哀しみのコルドバ」「炎のボレロ」「仮面のロマネスク」に繋がるその原点を観させてもらった感覚です。

ぶっちゃけ書くと、みんな間で芝居をしている上に、前半は照明が暗いから正直めちゃ睡魔が襲った。隣に座ってた女性は10分足らずで寝入ってたよ。

後半のカーニバルを挟んで物語が進む演出で脳が覚醒されました。あの見せ方好き。

逆にショーが明るいしパワフルだから良いものの、お芝居はぶっちゃけ全ツ向きではなかったとは思うが、温故知新、古き良き宝塚作品のリバイバル上演は全ツでしか上演出来ないからこればかりは仕方ないね。

ということで長野に来ました!

そして、長野で上演してくれてありがとう!私の地元ではないけど(笑)

以前、柴田先生もドストエフスキーの「白痴」を上演したかったという記事を読んだことがあったので、あまりのシンパシーさに柴田先生ロスに陥ったワタクシではありましたので、今作はなにがなんでも観たかった!評判はいかんせん。

実は、ワタクシ、花組の当時トップだったオサさんにムイシュキン公爵を演じて頂きたく、歌劇団に勝手に脚本を送り付けて返却された苦い経験がございます(笑)

それくらい、ワタクシの大好きな「白痴」の柴田先生版ということで、なにがなんでも観たかった!

実際は、梅芸のチケット取れず、たまたま休みの日の長野公演の戻りチケットを運良くゲット出来たので長野までやってきたわけでございます。

イタリアを舞台に、しっかり「白痴」の世界観を描かれていて、めちゃくちゃ良かったとは言い難いが長野まで来た甲斐があった作品でした。

真実の愛とは違う愛の二面性。

これは、主題歌の歌詞通り狂おしい恋をしないと理解出来ない内容でしたね。

人間は娼婦になるために、人殺しをするために生まれてきたわけでない。出会った人、育った環境によって人格が形成されていく。生まれながらにして悪人なんていない。

そして、人格は白か黒か一面性だけでなく、いろんな側面を持った多面性があるのが普通。

世の中、完全に善人、完全に悪人は存在しないと私は思っている。

レイちゃん演じるアントニオとマイティー演じるレオナルド兄弟は正反対の性格。

アントニオとまどかちゃん演じるパメラには、誰にも理解しがたい惹きつけ合うものがある。

レオナルドとパメラには似たような血が流れている。

パメラはどんな男をも虜にしてしまう魔性の女であると言いたいわけではなく、

パメラの中にある二面性が男を惹きつけるのである。

ラストの、レオナルドの目を見てパメラが死んだことに悟ったアントニオの台詞にあるように、

パメラの中に純粋な側面とそうでない側面があり、それぞれに人を惹きつけるのである。

アントニオとパメラにしか分からない惹きつけ合う力。社会の物差しや社会レベルならば、不釣り合いな関係ではあるが、魂のレベルでは同等。

社会レベルでは不釣り合いのために離れ離れにならなくてはならないことは、世間一般的でもよくあること。

狂おしいまでに愛しているのに、魂レベルでは愛し合っているのに、この偽善に満ちた社会で生きていくために諦めなくてはならないことは多々ある。

魂レベルで結びついているから離れるのは命を削るくらい苦しいのである。

この世の中、魂レベルで惹きつけ合った者がこの社会で生きていくことは大変難しい。既に結婚していたり、社会的地位があったり、住む場所、人間関係など、社会のしがらみが二人を隔てる。

You Tubeを観ていると魂レベルで結ばれたカップル動画をよく目にするが、それはほんの一部に過ぎないと言えよう。

本来ならば、既婚していると、離婚して結ばれるのが理想だが、そう簡単に「ハイ、離婚しよう」なんていかない。魂レベルで結ばれるカップルには何某の犠牲と覚悟が必要になってくる。しかも、傍から見たらワガママ自分勝手な行動と思われるのがオチ。

自分の人生なのだから自由意思で生きていくことが1番の幸せなことなのであるが、社会のしがらみの中で生きていくには乗り越えないといけない障害が山とある。それが魂レベルで結ばれた試練なのである。

パメラは、社会レベルでの相手の幸せを願うことで真実の愛より強い宇宙の愛を学ぶことができた。それはそれは辛い覚悟なのである。

というのが、ドストエフスキーの「白痴」なんですよ。また、柴田先生の「フィレンツェに燃える」なんですよ。

そこから、上記に挙げた作品に繋がると思うと、めちゃくちゃ柴田先生ロスに陥った。あー、柴田先生にもう一度お会いしたい!

なので、このご時世、どういう経緯でこの作品が選ばれたのかは分かりませんが、柴田先生の魂に触れられてめちゃくちゃ嬉しいです!

レイちゃんは静、マイティーは動。私の中では、本来のイメージ通りの役が回ってきた印象です。

ヒゲを付けたレイちゃんは、まるでバトラーそのもの。めちゃ似合ってる!全然出来るよ!

マイティーは、動というより明、または朗。決して悪い人間ではない。貴族社会に疑問を持った先見の明がある人物。

兄アントニオのためにパメラと引き裂こうとして逆にパメラに堕ちる役どころ。「白痴」のロゴージンと同じ。

どちらかというと、マイティーとヒトコちゃんでロゴージンを二分した感じだったけどね。

まどかちゃんのパメラはめちゃくちゃ難しい役どころ。ベルばらのポリニャック夫人みたいに貴族と結婚することで地位を築いてきた。しかも4度目。そして、死別した前夫公爵殺害の疑惑がもられている。

舞台上では、パメラはただの成り上がり者で殺人者なのかは結局のところ分からない。まどかちゃんがどう役作りするかで観客の印象が異なる。

私が感じるかぎりでは、まどかパメラはどの夫も真剣に愛したいたと思う。ときには、ヒトコちゃん演じるオテロのような男と行きずりの恋愛もしていたかもしれない。

この作品の大事なメッセージは、どんな過去を背負っていても今が大事だということ。いろんな過去があって学びを得て生まれ変わって今があるなら、過去はそのためのお勉強にすぎない。過ちを繰り返すならまだまだお勉強が足りないとしか言えないないね。

白痴のナスターシャは、ムイシュキン公爵に出会ってピュアな心を取り戻すが、どんなに魂で惹かれ合っていても、結局社会の自分に対するイメージや自分の立ち位置から逃れることができなかった。

パメラもまた同じことが言える。なので、まどかちゃんの役作りはめちゃくちゃ良かった!

魂で結ばれているのに別れないといけない苦しさをとってもリアルに演じられてました。

このレイちゃん、マイティー、まどかちゃんの三角関係に絡んでくるのが星空美咲ちゃん演じるアンジェラ。「白痴」のアグラーヤに相当する役どころ。

アンジェラもまた愛に悩み成長していく重要な役どころ。

よく考えたらめちゃくちゃ「白痴」を踏襲してたわ。アンジェラも三人姉妹だしね。

観てる時は、寝不足もあってついつい眠たいと思ってしまったが、こうやって自分なりに分析解釈すると、柴田先生の偉大さが身に沁みる。

歌劇団の有り難いことは、こうやって常に柴田作品を上演してくれること。

次は、花組で「うたかたの恋」の大劇場公演。私は、シメさんが休演しマリコさんが代役した大劇場版しか観てないですが、オープングから鷲掴み。マリコさんもあやかさんも素晴らしかったのはいうまでもないが、やはり私は、ステファニーを演じたジュンベさんこと洲悠花さんの演技と眼力が忘れられない。

うたかたの恋もそうですが、柴田作品の特徴として、様々な登場人物の恋愛模様を対照的に描いていることが挙げられる。

「フィレンツェに燃える」はその代表やね。

四十年も前の作品をリバイバルして頂き劇団に感謝です。

柴田作品に限らず、温故知新シリーズ続けていって欲しいです!

そして、ショーは、めちゃくちゃパワフルでしたね!

ついこの間、東宝の千秋楽を観たあとだけに、やはりくり寿ちゃんの存在がいかに大きかったかを感じてしまうショーではありました。少人数でもめちゃくちゃパワフルに踊っていて自然に手拍子してました。

中盤のレイちゃんと組子たちが白い服で踊り絡み合うシーンが好き。なぜが涙が溢れたわ。

レイちゃんと組子たちの純粋さが垣間見える大好きなシーン。それ以外は結構激しく踊りまくってるからね。

本当に本当に長野まで来た甲斐がありました。

もう一つ甲斐があったのは、長野駅に着いてすぐに善光寺と東山魁夷館に行ってきました。

善光寺の仁王門めちゃ良い!平日なのに沢山人がいてビックリした。

東山魁夷館では、云十年ぶりに「行く秋」を観ることができて嬉しかった。

ただ、兵庫県美で初めて見たときと印象が違い過ぎて思わず学芸員さんに質問してしまった。

県美で観たときは落ち葉に雨のしずくのような金銀の点々が散りばめられていて、あまりの美しさに涙が出るくらいめちゃくちゃ綺麗なだったんですよ。

今回改めて拝見させてもらったら、その雨のしずくが一切なかったんですよ。なはので学芸員さんにもう一つ作品があるのか聞いてしまった。完成した「行く秋」はこの1点だけとのこと。

県美で見たあの雫はなんだったんだろうか?ま、たしかにミニレプリカを買ったときも雫はなかったからね。

正直ショックではありましたが、北ドイツが取材地だと知ってそれだけで大満足!

花組公演がなかったら観るきっかけがなかったので、長野公演をチョイスしてくれて感謝です。