ガラスの動物園

2022-10-01 20:22:53 | 舞台
空席を埋めたい気持ちは分かるけど、SNSで必要以上にべた褒めしすぎちゃうか!?めちゃ期待値上がったやん!?

結果的に、私的には不可でも可でもなくって感じでした。

ただ、フランスと日本では…、と言っていいのか分からないですが、解釈の違いには驚きました。

フランス語だから全く理解出来ないので事前に改めて戯曲を読み直したのですが、印象が全く異なっていたことに驚き。

そもそも、テネシー・ウイリアムズの戯曲って「欲望という名の電車」や「地獄のオルフェウス」に象徴されるように、汗臭くて泥臭く、いかにも労働階級の底辺にいるような貧困層の雰囲気が漂っているイメージがありましたが、今回のフランス来日版は、ぶっちゃけ底辺で生きているような、生きることに切迫感があるようなギリキリの登場人物には見えなかった。

に加えて、だれが主人公なのか分からない曖昧さ、ま、イザベル演じる母親アマンダが主役だと思うが…。と、ある家族の物語を絵空事として俯瞰して見ているような淡々と話が進んでいるような印象を受けました。


もちろん欧米の役者さんなのでジェスチャーや感情の起伏はあるけども、トムが最初から最後までストーリーテラー的役割だったことも個人的には違和感がありました。

私、はるか昔、この戯曲で感想文を書いたことがあるんですよ。書いた内容は忘れたけど…。それくらい好きな戯曲でした。感想文を書くためにたくさんの付箋を貼っていました。

今回改めて読み直した時に、やっぱりいい戯曲やわーと思っていたし、当時トムにめちゃくちゃ感情移入していたことを思い出しました。

自分には夢があるのに母親と姉を養うために好きでもない仕事をしないといけない現実の中で、後ろめたい気持ちを抱えながら家を出ていくトムに、まるで自分の生き写しかのようにめちゃ共感しまくっていたんですよ。という当時の記憶が蘇ってきたんですよ。

今回改めて戯曲を読み直したら、トムだけでなく、母親のアマンダや姉の気持ちもめちゃくちゃリアルに伝わってきて、めちゃ切ない話であるだけでなく、脚本的にも起承転結があってよく出来た内容なので改めて感動してたんですよ。舞台を観るまではね。

実際の舞台はというと、私が抱いた感情が見事に他人の絵空事を見ているような、ネットでニュースを見ているようか、街ですれ違う通行人のような他人感覚になって観ていました。

だからといって面白くなかったわけではなく、単純に前評判が良すぎたことに違和感を感じただけです。

ということで、

来日中止になった時から来日を待ち望み、やっとそれが実現することになり、いち早く抽選に望み、結構良席でイザベル・ユペール率いるフランス人キャストによる来日版を観ることが出来ました!

内容はさておき、生イザベル・ユペールを拝見出来てめちゃくちゃ感動!

イザベル・ユペールといえば、フランスを代表する大女優であり、映画「ピアニスト」でカンヌで女優賞を獲った時から大好きな女優さんなので、やっと来日公演が実現できてめちゃくちゃ嬉しかったです。

運良くめちゃくちゃ舞台に近い席で観ることができたので、オペラを使うことなくイザベルを拝見できただけで十分東京に来た価値がありました。

何度も書いて申し訳ないですが、作品的には前評判ほどではなかったですが、

イザベルがめちゃくちゃキュートにアマンダを演じらるていました。「ピアニスト」のときは年増のイメージが強かったですが、以降の作品では美人さが引き立ってました。「8人の女たち」は除く(笑)m(__)m

ぶっちゃけ、イザベルのアマンダからは貧困層のイメージが全く感じませんでしたが、登場人物4人とも貧困感なし。

俯瞰できたことが良かったのかは分からないし、単純にフランス語と日本語の音の強弱の違いとか感情の起伏の出し方の違いのせいかもしれませんが、同じ台詞(日本語字幕)なのに全然違う作品を観ている感覚でした。

私はトムに感情移入していたので、最後までストーリーテラーに徹したフランスキャスト版に違和感しかなかったし、最後のロウソク云々の台詞がトムの心情を表現する上で大事な台詞だと思っていたのが、あっさり流されたのも違和感しかなかった。

この物語って、姉の初恋相手が家にやってきてハッピーになるかと思ったら呆気なく破断になるオチなのが、本来なら姉に同情する涙オチのはずがブレヒトやウディ・アレンみたいな皮肉オチになっていたのも、よく言えば独特の解釈。私的に言えば違和感しかなかった。

やはり、貧困感がないのが問題だったように感じた。

息子に生活費を頼っている母親と自活できない姉を残して家を出るトムの生き様に、人生観となにがなんでも生きていかなくてはならないという強いメッセージがラストに隠れていると思うんよね…。

また、ローラがジムに角が取れたただの馬になってしまったユニコーンを渡す時も、今までは特別な人だったけども、結局ジムも世間同様俗物に過ぎないということを示唆する象徴的なシーンだと思うので、そこも軽く流されたような印象を受けました。

ここはやはり演出家の意図が知りたいので、早くアフタートークの映像をアップしてもらいたいですね。出来れば初日キャストのもね。

悪口を書いているように思われるかもしれませんが、解釈の違いに驚いただけなので悪しからず。

来日公演ありがとうございます!日本に来てくれてありがとう!という気持ちでスタンディングさせてもらいました。

そうそう、美術的には、あの奥行がある新国立劇場中ホールが完全に奥行と高さをシャットダウンした舞台美術、心霊ちゃうの!?と勘違いしそうなわざと壁に人面(まるで第5の登場人物の如く。)を浮かび上がらせたような模様を描いていたり、壁にクローゼットや戸棚?を隠していたりと工夫されていました。

この作品の見せ場は、やはりガラス細工の動物たちでありユニコーンであるので、いい登場の仕方?でした。

イザベルの喜びの動きがチャーミングであったり、ジムとローラの役者のアクロバティックダンス、語弊がありますが障害者風な動き、部分的に見所がありました。ただ、ジムとローラの暗闇のシーンが長すぎて睡魔が襲いましたが…。

本当に本当に日本に来てくれて、上演してくれてありがとうございます!