「星ノ数ホド」

2014-12-27 21:50:43 | うらけん
う~ん、どう書けばいいのか?言葉の選択に悩む…。

ということで、今年の観劇の見納めに兵芸に行ってまいりました。

蜷川さんのミューズ的存在の鈴木杏ちゃんと浦井氏の二人舞台。なんといっても、新国立の舞台作品の関西上演今年第二段(多分…)。過去にも関西上演はあったと思いますが、ここ5年ははなかったように思う。

は、いいとして、作品はというと、ぶっちゃけ書くと…、

よく分からなかった…。

かといって全くつまらなかったわけではなく、これまたぶっちゃけ書くと、「昔の日々」「ブレス・オブ・ライフ」よりは見応えはありました。約90分の上演がめちゃくちゃ早く感じたくらい二人の演技に魅入った。

ストーリー的には、泣くほどの感動はなかったけど、見終えた後、電車の中で振り返ると、観てる最中よりいろいろ言葉が湧いてきた。

で、思いついたまま感じたままを書きます。場違い&勘違い発言も含まれるので、それらはお許し下さい。

見終えた直後の感想は、まさに小田さんの♪ラブストーリーは突然に♪の歌詞通り、

“あの日 あの時 あの場所で 君に会えなかったら 僕等は いつまでも 見知らぬ二人のまま”

的なラストが良かった。

間違いなく東京公演をご覧になられた方だと思いますが、途中からすすり泣きの声がしたので、てっきりラストは悲しい結末で終わるんだと想像していたら、全く逆だったので、あの終わり方で良かった。

人生は、星の数だけの選択肢があり生き方がある。

あの時、あれを選択しておけば今ごろ…、といった後悔先に立たずといった物語ではなく、むしろ、人生は一秒一秒一瞬一瞬常に選択を伴って時間が過ぎていくんだと改めて思い知られた内容だった。

もちろん、後悔先に立たずもメッセージとしてはあると思うけど、私的解釈をすると、無意識に生きていくんじゃなく、意識して生きていくことの大切さを描いていたように思う。もちろん、一秒一秒一瞬一瞬意識して生きていたら気が変になってしまうけど、無駄に時間が過ぎていくと、それこそ後悔先に立たずになると思う。誤った選択をしないことも大切だけど、何が正しい選択かなんて実際にはその瞬間には分からないことも多いし、後になって分かることの方が多いから、とりあえず意識して生きていくことの方が大事だと思う。なんか意味不明でごめんなさいm(__)m

プロット自体は原作者のニック・ペインもパンフレットに書いているように、至って単純で、バーベキューでの初めての出会い、偶然の再会、交際、浮気の告白、プロポーズ、(結婚)、マリアンの病気発覚、そして今後の選択。

それぞれのターニングポイントを、パラレルワールドとしてあらゆるパターン&違う可能性として、あたかもピカソの立体主義を二次元の絵で表現するかのように、繰り返し演じて観せていく脚本演出は斬新だと思った。最初は、漫才コンビの笑い飯みたいなネタで笑えたりするけど、それが段々シリアスな展開になる様がまさに演劇だと思った。

演じる側は本当に大変だと思う。それぞれのパターンのバックグラウンドを瞬時にイメージチェンジしながら演じなきゃいけないから、私ならめんどくさいから勝手に演技パターンを作る。それだとリアルな演技にならないし、会話にも対話にもならないから、杏ちゃんも浦井氏も本当に大変だったと思う。この二人はちゃんとそのめんどくさいことをやってのけたから、努力の天才だね。

浦井氏のお蔭で、実は今回初めて、杏ちゃんの演技と噂の小川絵梨子さんの演出を観させもらう機会を得ました。

浦井氏に関しては、五年間観させてもらってますが、またもや新しい浦井氏発見がありました。黒髪が非常に新鮮で、一瞬「宝塚BOYS」の金蔵がフラッシュバックされましたが、当たり前だけど金蔵とは違う演技に魅せられました。いろんなパターンで、猫背を意識した演技も良かったし、そうでないのも良かったし、ラジオで聴いた三枚目ぶりと違う等身大の二枚目ぶりを自然に演じられていて驚きました(笑)m(__)m改めて、まだまだ浦井氏で見飽きることがない、まだまだ化ける要素があることを再認識しました(笑)今年の浦井氏は大躍進の年だったと思う。同じ色と同じ顔がなくて良かった。来年も色が違う役ばかりやから期待大やな。

杏ちゃんは、やはり蜷川さんに選ばれた人だけあって、まず第一に発声が素晴らしい。ちゃんと腹から声が出ていて聞き取りやすい。どこにでもいそうな女性なんだけど、ちゃんと物理学者な感じが出ていて上手かった。その点、浦井氏の養蜂家は雰囲気なかったねm(__)mっていうか、これは演出に対してだけど、養蜂家が蜂の生態に詳しくいのは不自然じゃないかい???は、いいとして、

杏ちゃんが、少しずつ、心と体が分離していく様はとても素晴らしかった。脳が病気に冒されて吃音にる様や、気持ちを言葉で表したいのに手話でしか表現できない苛立ちも上手かったし、なんせ手加減を分かっているのがお見事でした。感情的になりすぎず、客観的にもなりすぎず、それでいてちゃんと説得力もあって本当に素晴らしかったです。ぶっちゃけ、蜷川さん演出下の杏ちゃんの演技が観たくなった。知的化けモノ要素を感じました。

噂の小川絵梨子さんの演出は、美術の使い方が良かった。

舞台の中心に木があり、その周りに欄干があり、まさに、パラレルワールドと四次元の空間を意識した演出が良かった。

木は、人生・命の象徴。枝が人生の選択肢のイメージ。どんな人生の選択をしても、私は私、的な感じがした。

まるで時計をイメージしたかのようなあの欄干上での微妙に違う演技の繰り返しが、四次元空間で過去と未来を行き来しているように見えてまさにパラレルワールドでした。

これは杏ちゃんの演技に関してですが、様々なターニングポイントで、杏ちゃんの演技に魅せられて思わずオペラが上がるんですが、すぐ暗転になってしまうんですよ。で、その暗転直前の演技がどれも魅せられた。本当に良かった。これが小川さんの狙いかな?と思った。最終選択の決断を下して次のターニングポイントへ移行…みたいな感じだった。

尊厳死…。はっきりした意識があるうちは尊厳死も安楽死も、私はあり得ないと思ってる。植物人間になった時は別だと思う。まさかそんなテーマが隠れていたなんてパンフレット読むまでは分からなかった。てっきりマリアンの最後の選択はホスピスに行くことだと思ってた。

人生、あの時別の選択をしていたら…と思うときは誰にでもあると思う。私もある。あの時、親を説得して北九州の大学に行っていたら…と思うことは多々あった。

でも、今、確信して言えることは、どっちを選択しても今に至ってたと思う。ただ遅いか早いかの違いくらい。

だって精神年齢がそのままだったら、何も変わらないと思うから。あの頃は嫌なことから逃げていたから、常に同じ壁にぶつかっては逃げてた。場所は違うのに不思議なことに似た人間や問題に遭遇する。

そのうち逃げても常に追いかけてくるし、何も変わらないから、立ち向かうしかないと気付く。いざ立ち向かって解決策を見つけると、もうその壁はなくなった。すると今度は新しい壁が行く手を阻む。そしてまた逃げて同じ壁にぶつかる。また立ち向かうしかない。乗り越えられたらまた新しい壁にぶつかる。の繰り返しの人生。

何が言いたいかというと、人生にはステップアップのための階段と順番がある。その階段を上るためには障壁がある。どんな道を選択をしても次の課題となる障壁は同じということ。

あの時あれをしておけば良かったのに…という現実回避の後悔は本当に結果論にすぎない。そもそも経験しないと後悔はない。経験が結果を生み、結果から学びを得る。これが人生のステップアップ。

どっちを選択しても何を選択してもその経験する運命にあるんだよ。だから逃げても同じ。与えられた試練や課題はちゃんと受け入れて乗り越えるしかないのが私の持論。同じ過ちを繰り返さないことで、経験と学びを得ていくことが私の人生で、大概の人も同じパターンだと思っている。

ニック・ペインのように、幾通りのパラレルワールドは存在するかも知れない。っていうか、この舞台を観て、パラレルワールドは本当に存在する、いや、しているんじゃないのかなと思った。それは違う顔の、例えば、貴方が私のもう一つの人生を生きているんじゃないのか?とふと思った。

ローランドが語る蜜蜂の生態から推察すると、人間って肌の色は違っても、人間は人間やん。当たり前だけど。ということは、蜜蜂だって世界中にいるけど、見た目は似てても、きっと国や地域によって微妙に違いがあるかもしれないやん。

宇宙単位で人間を観察したら、きっとどれも同じ顔だと思うから、同じ顔の私が違う次元にいるじゃなくて、実は違う顔の私が同じ次元にいてもおかしくないとふと思った。だって、どっちにしたって他次元の私とコンタクトは取れないし、未来を知る余地はないなわけやん。それが本来のパラレルワールドの発想だと思うし。これも死なないと分からないことだと思う。

ぶっちゃけ、パラレルワールドも私にとってはどうでもいい。いずれにせよ、これからも、昔からもずっと、それが誰かが敷いたレールであっても、その上を歩くか歩かないかも私の選択なんだから。その選択が未来を決めることには変わりない。

この舞台を観てもう一つ思ったことが、パラレルワールドって翻訳の作業そのものだということ。

ニック・ペインが伝えたいことは、翻訳家さんの解釈次第で変わる可能性は大いにある。翻訳する時点で既に英語と日本語の二つの世界が生まれてるわけだから、翻訳家が違えばまた違う世界が増える。絵画もそうだけど二次元の世界ではパラレルワールドは存在してるね。

三次元ではきっと貴方ですよ(笑)

なんか、パラレルワールドなんてまさにスピの世界なのに、それを物理学と生物学でアプローチするなんて面白いね。魂は分子?素粒子?だと思う説には賛成!(笑)

今日のまとめ:映画も含め今日で鑑賞納めです。なんか、毎年、兵芸で観劇納めしてる機会が増えてるな。好きな劇場だからいいいけど…。っていうか、まさか浦井氏の舞台で観劇納めする日が来るなんて思ってなかった(笑)

今年のまとめは今年中に書きます。