「ブルージャスミン」

2014-05-14 20:01:09 | 映画
いや~、今回もウディの洞察力は冴えてます!!!

ぶっちゃけ、後味めちゃくちゃ悪かったけどね…。

ま、本来、ウディの脚本は後味が悪いのが普通だと思っているから、この後味の悪さは覚悟の上、想定内でした。本当は、笑いを期待していたんですが、私には笑えなかった。

ってくらい、タイトル通り最後まで憂うつなジャスミンでした。

ネタバレフレーズを書いてしまうと、結局は身から出た錆だから仕方ないんだけど、ホント救いのないラストがこっちまで憂うつな気分にさせます。極端な人物描写ではあったけど、それくらいリアリティーがありましたね。

嘘はいつかバレる…

これもこの作品のキーフレーズだと思うので、バカ正直も困りものだけど、それ以上に嘘や虚栄心も身を滅ぼすことも大いにありうると思いました。

これまたぶっちゃけ書くと、ジャスミンの虚栄心はよく分かる。昔の私もそうだったから(汗)身の程知らずのエエカッコしいで自尊心が高かった時代があって、まさに自分中心で地球が回っていると大勘違いしていた時代があったからね。思いもよらぬ、いや予想していたどん底を経験する結果に至っただけに、ジャスミンの気持ちはよく分かる。私の場合は失敗経験から学ぶタイプだから、若い頃はホンマ失敗だらけ…。

自尊心のベールに包まれたら本当に周りが見えなくなるもんね。お金があれば人の心を買えると本気で信じていた時代があったからね。その過去があったからこそ今の自分ではある訳んだけど、ジャスミンまでの精神状態に陥ったら今の自分は間違いなく存在してなかったと思う。一歩間違えたら間違いなくジャスミンみたいに精神状態になっていたと思う。自分の好きなように生きておきながら、結局は自分の首を締める生活。今思えば、あの時、間違った選択をしなくて良かったと思う。さらにどん底に陥ったと思う。

ここでは具体的には書けないけど、私のどん底経験は今思えば大事な経験でしたね。もう1つの道を選んでいたら今頃どんな生活をしていたのか想像するとゾッとする。

ウディが描くジャスミンはまさに、「欲望という名の電車」のブランチそのものでした。っていうか、戯曲で描かれなかったブランチに裏側を描いていたように思った。

ブランチも精神疾患者だけど、なぜそこに至ったかは描かれていない。教師としてしてはいけないことをしてしまった。でも、何故そこまでに至ったかその過程の描写はなかったはず。あくまで結果論的な表現だったはず。実は、ブランチは精神疾患者だったみたいなオチ。

でも、このジャスミンにはちゃんと過程がある。その過程がオチである訳なんだけど、とてもリアリティーがある描写だった。

主人公のジャスミンだけでなく、登場人物や設定もまた「欲望~」を模している部分があって、まさにウディ版「欲望という名の電車」と言っても間違いではないと思う。

間違いなく、ジャスミンもブランチと同じ道へと導かれると予想されるラストだっただけに、こっちまでブルーにさせられる幕切れでした。

ほんと、ブルーなジャスミンを演じたケイト・ブランシェットは、オスカー納得もんの演技でした。セレブ感も精神不安定感もどちらもリアリティーがある演技でした。ケイトも相当な化けもの女優さんやもんな。エリザベス女王の高貴ぶりも圧巻だったけど、「シッピング・ニュース」のビッチぶりもかなり度肝抜かれた。演技力ではダントツでニコールより上ですが、私はニコールの方が好き(笑)

ジャスミンの妹ジンジャー役のサリー・ホーキンスもこれまた素晴らしい演技でした。派手な姉ジャスミンと対照的なザ・地味女性ぶりを見事に体現されてました。まさに「欲望~」の妹と同じ役割を担っている部分があって、やはり、良くも悪くも女の性(さが)を見事に演じられてました。これはホント脚本が素晴らしい。見事な人物描写でした。

登場する男性陣も見事なダメっぷりで素晴らしい存在感でした。まさに「欲望~」に出てくるような男性陣でした。

ジャスミンもそうだけど、ブランチもどうやったら幸せになれるのか…?私なりに考えたけど、結局は戯曲通りしか思いつかない。あそこまで陥ったら自分を取り戻すことなんて出来るんだろうか…?

そういう意味では、自分を見失うな!とウディの警告にも取れる。ありのままの自分を着飾らず、素直に受け入れることの大切さを教えてくれる作品だと思う。

セレブ生活から一転して貧乏生活に陥ったアイロニーたっぷりの作品と見せかけつつ、実は、人間の生態をストレートに表現した作品だと言える。ぶっちゃけ書くと、私にはアイロニーは全く感じなかった。身から出た錆なんだから仕方ないやん的展開でした。

あ、これ、精神を病んでいる方は観ない方がいい。そういう意味では本当にリアリティーありまくだから。

今日のまとめ:これを観たら気分爽快になるかと思ったけど、またモヤモヤが復活したちゅうねん(涙)裏切られ感はないけど、ここ三作品がファンタジー要素たっぷりだっただけに、まさかここにきてこんなシリアスチックな作品を出してくるとはね…。ウディの脚本の振り幅にほんと感心しまくり。恐るべし79歳(今年で…)!