「春琴」

2013-07-27 23:52:33 | 舞台
究極のSM、かつ究極の純愛の物語、ここに馳せ参じたりにけり!

とても外国の方だとは思えないくらい日本人の演出家より繊細な演出に感動してます!

日本人が忘れている心がきめ細かく描かれていたと思います。

宝塚の男役が創りだす男性像、しいてはニューハーフのホンモノ以上の女性らしさ同様、日本の詫びさびや繊細さってもはや存在しないのかなと思う演出でもありました。

小道具の使い方が野田さんみたいに変幻自在に想像を掻き立てる演出になっていて、演出家のサイモン・マクバーニーは日本人以上に日本の文化に詳しいと思いました。

大道具がなくてもちゃんと一室を創りあげる演出力は、野田さんといいとこ勝負だったと思います。

文楽をモチーフにしつつも、ガラカメワールドもあって、演劇ファン必見の作品だと思います。

深っちゃんとか皆関西弁を使っていて、関西が舞台の谷崎作品をどうして今まで関西で上演してくれなかったのか!?という思いと同時に、関西では観ることないんだと思っていた作品を三度目にして上演してくれたことに感謝してます。

ということで、今日1日限りの上演なので、しかも非常に安く観れるので急遽マチソワ観劇しました(笑)

谷崎潤一郎の「春琴抄」は読んだことないですが、映画はATGアーカイブ版を観たことあります。宝塚でもやってましたね。観たことないですが…。

映画はエロティックでしたが、舞台は本当に繊細で、本当に外国の方が演出したとは思えないくらい和のテイストがふんだんにちりばめられていて、しかもガラカメワールド全開だったので、本当に想像力が掻き立てられました。

最初に書きましたが、究極のSM。春琴と佐助の関係があまりにも和風SM過ぎて、自虐の対語にあたる嗜虐という単語があることを初めて知りました(笑)春琴はまさに嗜虐的なSの存在で、佐助はまさに春琴の嗜虐行為に喜びを見出だす典型的なMの存在で描かれてはいましたが、確かにエロスは感じるけどまったくもってやらしさは感じませんでした。

確かに、人形を使っての男女の交わりがあったり、人形だと思ったら本当の女性が裸になるシーンはあったけども、本当にやらしくなかったです。

この表現はタブーですが、片輪の美学、不完全なる美学があって、目が見えないことがより他の美しきものを引き立てる要素となっていること。暗闇だからこそ分かる美しき心。それらが光を陰で対象的に描かれている点が素晴らしいと思いました。照明の使い方がとても上手かったです。

マチネ観劇の時に疑問に思ったことがあって、目が見えない春琴の性欲、火傷を負わされたときの自分の顔が醜いと思う気持ちって、不自然な感情だと思っていました。いくらわがままなお嬢様であってもあまりにも淫らな感情に見えたし、失明しているのに醜いと分かる心理も非常に違和感を感じました。

ソワレ観劇で、春琴って非常に頭が良い娘であるが分かったし、目が見えない分、耳は鋭い感覚を持っているから、昔は今と違って情報が少ない分、地獄耳で世情に詳しかったんだと想像ができました。性の感情って、私は突然湧いてくるものじゃなくて周りの情報から芽生えてくるもんだと思うんでね…。

醜いと思う気持ちは、ずっと自分は美しいと言われてきたから分かることだとは思うけど、醜い姿というのは、心が醜いと違って、実際に見ないと分からないことだと思うから、きっと春琴は、見ないけども、例えば、歌舞伎の「かさね」や「四谷怪談」の内容を知っていて、醜い顔は怖がられるという認識があったんじゃないかな…?と想像が働いた。それくらい、本当に春琴は世情に詳しかったんだと思った。

片輪の美学って、春琴に関しては、見た目の美しさだけでなく知的なオーラも兼ね備えていたからじゃないのかなと思ったら、全てが腑に落ちた。

究極のSMだけで、究極の純愛ものと書いたのも、結婚はしていなくても、特殊な恋愛関係であっても春琴も佐助もお互いが初めての相手で最後まで寄り添っていた点はまさに純愛ものだと思うんですよ。

まさにそれを強調するかのように、立石涼子さん演じるナレーターが特異な恋愛をされているんですよね。

恋愛の形は様々でいいと思うんですよ。犯罪にならなければ…。歳の差も同性愛も全然いいと思うんですよ。お互いが好き同士なら。

立石さんの最後の台詞のように過去には戻れないんだから、出会う前には戻れないんだから卑屈にならず前向きに歩くしかないと思うので、何度も書くけど、幸せになるための恋愛をして欲しいと思った。苦しい恋愛は、そもそもどこか歯車が噛み合ってないと思うよね。人を好きになって苦しいのは、勝手にあなたがわざわざ苦しみを選択しているんだと言いたい。

って思った作品でした(笑)

深っちゃんの声には透明感があって、声音の使い方も表現も上手く、まさか深っちゃんが人形を操作するとは思ってなかったので、その人形の扱い方も、人形がホンモノの子供に見えるくらいリアルな動きを見せてくれていて、他の女優さんとの共同作業ではありましたが、見応えがありました。

最後はホンモノの春琴に変わるんですが、声がとても魅力的でした。

逆に人形を演じられた女優さんさんもマジ人形でした!裸になるときにホンモノだと分かるんですが、それ以前もそれ以降もリアル人形として存在していて、歌舞伎以外でリアル「ガラスの仮面」が観れて感動してます!

佐助を演じた青年時代の成河君、中年時代の高田恵篤さん、晩年を演じた笈田ヨシさんも統一感があってとても良かったです。成河君の笑顔はとても癒し系だと思います。私は昔、なーちゃんが客演した演劇集団万有引力のお芝居「レミング」を観たことあるので、高田さんが非常に懐かしかったです。まさかここで高田さんの話を書く日がくるとは思ってもみませんでした(笑)

この作品、非常にチームワークもよく、演出も細かいので、久々にTHE・演劇を観た感覚があります。大道具がなくても小道具だけでこれだけ上手く空間を使って魅せる演出力に本当に感動してます。東京に行かずに関西で観れて本当にラッキーでした!

そうそう、立石さんが桃井かおりさんに見えたのは私だけ…?(笑)声も演技もとても素晴らしかったです!

今日のまとめ:日本の演出には繊細さは欠けていると思うけど、まだまた佇まいや所作には繊細さは残っていると訂正します。今日の演者の皆さんとても素晴らしかったから。