ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

「ライオン/25年目のただいま」「キャロル」

2019-03-18 14:24:56 | 映画
(これは2017年12月6日の記事です)


ゴミには「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」の他に、「燃やすしかないゴミ」なんてのもあるようで、私も「燃やすしかないゴミ」が大量にあるので早いとこ処分しないとヤバイよなあと思っています。

それにしても、
いろんなことが億劫になって来ていて、断捨離をするのはエルギーがあるうちだと痛感。毎日のゴミ出しですら面倒な今日この頃。
ゴミ出し以上に億劫なのがブログなわけですが、まだ辞める決心もつかないので、このままダラダラと間欠泉みたいに時々書きちらしてみようかと思っております。

最近見た映画で面白かったのが、

「ライオン/25年目のただいま」
ガース・デイビス監督作品。2017年公開

インドの少年サルーは5歳の時に出先で兄と離れ離れになり、たまたま空の電車に乗ってしまい、そのまま1500キロも離れた街に運ばれます。警察に保護され、オーストラリアの里親のもとに引き取られるのですが、成人した後、自分のアイデンティティーを求めて故郷を探し当て、母親と再会するという驚くべきストーリー。これ、実話に基づいた話というからすごい。

グーグルアースが故郷を探し当てるのに役立ったという、いかにも現代の物語ですが、人間、自分のアイデンティティーが定かでないと、こうも不安定になるものかと思いました。

自分のルーツって大事なんだなあ。

それにしても、ニコール・キッドマン演じるところのオーストラリアの夫婦が、世界には子どもがあふれている。これ以上子どもを作るより、恵まれない子どもを助けたい、といってサルーたちを養育するその姿勢は確かに見上げたものですが、でもそれって、どうなの?? と疑問符をいっぱいつけたい私でした。



もう一本は、「キャロル」



トッドヘインズ監督作品。原作がパトリシア・ハイスミスの小説。2015年公開。


前から見たかった映画で、ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラという豪華な出演で、映像が綺麗。

前半はすごくいい雰囲気で、何となく悲劇の幕開けといった雰囲気もあり期待したのですが、後半が少々退屈。

ケイト・ブランシェットといえば、「インディー・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」に登場するドイツの女性将校の強烈な役柄が頭にこびりついているもので、観るたびに彼女がドイツの女性将校に見えてしまったのが残念。

とはいえ、これも私好みのゲイ映画で、まだ女性のレズビアンなんて認められなかった困難な時代を生きる二人の女性を描いていて、秀逸な映画です。

冒頭のシーンが最後のシーンと重なるのは映画「逢びき」(1945年)へのオマージュか。「逢びき」は全編にラフマニノフのピアノ協奏曲第二番が流れていて素敵。すごく古い映画だけどちょっと忘れがたい恋愛映画です。

「キャロル」の最後、二人が見つめあうシーンで、これはもうハッピーエンドなのね、という感じでしたが、私的には悲劇のほうがよかったかなあ、などと(勝手に)思ったのでした。

ケイト・ブランシェットはすごい女優だなあと改めて思いました。
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ハクソー・リッジ

2019-03-13 13:46:34 | 映画

(これは2018年1月9日の記事です)

先日の「ダンケルク」に続いて「ハクソー・リッジ」を見ました。戦争映画です。しかも沖縄戦。しかも実話に基づく話。

戦闘シーンの迫力はすさまじく、「ダンケルク」とはくらべものにならない現実感を帯びています。

戦争というのはかくも激しくすさまじく人を殺しあうことなのかと実感できます。実際にアメリカ兵の中には発狂する人たちもいたとか。無事生きて帰ったとしても廃人同様になった人も多いだろうと想像がつきます。

主人公のデズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は良心的兵役拒否者ですが、どうしても戦争に参加したくなり入隊しますが、銃を持つことを拒否します。

兵士が銃を持たないということは、ありえない。そのため軍法会議にかけられ危うく囚人として刑務所に収監されそうになり、すんでのところで衛生兵として参戦を許可されます。

デズモンドがなぜ銃を拒否したかは映画の前半で丁寧に描かれます。

全部で2時間19分という長い映画ですが前半の一時間は彼の生い立ちから家族関係を丁寧に描いています。

デズモンドはいいます。聖書に「汝殺すなかれ」と書いてあるじゃないかと。
そして、実際に、彼は人を殺すことなく、戦場で傷ついた大勢の兵士たち(日本兵も含め75名の兵士たち)を助けます。デズモンドは決して臆病者などではなく、本当の英雄であり、これこそ愛国者ではないかと映画は訴えるのですが、

愛国心て何だろうか?

これ、メル・ギブソン監督作品です。あの「ブレイブ・ハート」「パトリオット」のメル・ギブソン。彼が描くのはここでも「愛国心」であり、信仰に厚いキリスト教徒です。

一方で、この映画は沖縄戦であるにも関わらず、沖縄のことは一切触れられません。沖縄のどこで、どんな状況下で戦闘が行われたのか。地元の人たちに犠牲者は出なかったのか。そうしたことは一切語られません。

日本人である私には、そこが今ひとつ納得できない。

沖縄戦を日本の側から見たとき、そこには多大な犠牲が見えてきます。
これはハクソー・リッジの戦いがあった浦添市のHPです。映画について書かれているので、ぜひ開いてみてください。

http://www.city.urasoe.lg.jp/docs/2017050200104/

ハリウッド映画を楽しみながら見ている分にはいいのですが、ひとたびそれが日本人、あるいは私たち自身に関わる問題に触れたとき、そこには必ず違和感が見えてきます。

これはアメリカ人が作ったアメリカ人のための映画なのだと、しっかり肝に銘じて鑑賞する必要があるでしょう。こういう映画を見るたびにそう思います。

戦争映画として、実にすさまじく、おぞましいまでに戦場の現実が描かれているという点で、秀逸な映画だと思います。
こんな場所にいたら、発狂するよね普通、と思った。

人間て、何してるんだろ。
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津波の霊たち 3.11死と生の物語

2019-03-11 19:02:08 | 映画



これは2018年6月28日の記事です


今日は映画ではなく、最近読んだ本を紹介します。

「津波の霊たち 3.11死と生の物語」
リチャード・ロイド・パリー著 早川書房
"Ghosts of the Tsunami/ Death and Life in Japan's Disaster Zone”

3.11東日本大震災で、石巻市の大川小学校の児童74名が津波にのまれて亡くなった痛ましい事件を記憶している人も多いでしょう。
この本は主に、大川小学校で何が起きたのかを追ったノンフィクションです。

まずは、ノンフィクションでここまで表現できるのかと驚き感心し、惹き込まれてあっという間に読了していました。

私も数年前に大川小学校を訪ねたことがあるので、あそこで起きた悲劇については無関心ではいられません。
特に小学校の校庭から続く裏山、すぐそこに逃げ場があったのに、なぜあれほど多くの小学生が亡くならなくてはいけなかったのか・・

3.11当日、大川小学校で起きたことを著者は克明に追っていきます。
人々はどう動いたのか、その結果どうなったのか。子どもを亡くした親たちのその後の行動はどうだったのか。
そしてまた、大川小学校の話ばかりでなく、津波にあった人たちの霊を鎮めるために除霊をし追悼行脚する金田住職の話も登場します。

著者のリチャード・ロイド・パリーは、イギリスの「ザ・タイムズ」紙のアジア編集局長および東京支局長で、20年以上日本に住んでいるイギリス人です。

外国人だからこそ、しかも日本に20年以上滞在し日本人のことをよく知っている外国人だからこそ描ける、非常事態に際しての日本人の姿や行動、それが実に冷静かつ客観的に、そして俯瞰的に描かれます。

大川小学校で子どもを亡くした親たちは、やがて学校と石巻市を相手に訴訟を起こします。
なぜなら、当日不在だった校長は自己保身に走り、ただ一人の生き残りである遠藤教諭の証言も真実ではなく、やがて彼は行方をくらましてしまうからです。

親たちは言います。
お金が欲しいのではない、あの日、大川小学校で何が起きたのか知りたいのだと。
どんな空だったのか? どんな風が吹いていたのか? どんな雰囲気だったのか? 子どもたちはさむがっていたのか? 家に帰りたがっていたのか? あの子に最後に話しかけた人は? 逃げたとき誰のそばにいたのか? 誰かと手をつないでいたのか?
そこで起きたすべてのことを知りたいのだ、と。

「先生、山さ上がっぺ。
 なんで山に逃げないの?
 ここにいたら、地割れして地面の底に落ちていく。
 俺たちここにいたら死ぬべや」

子どもたちがいくらそう言っても、また、他の親たちが津波が来ることを警告しに来ても、先生たちは彼らを「落ち着く」ようなだめ、ここに留まるよう指示したといいます。

裁判に持ち込むことは日本のムラ社会のなかでは相当の覚悟を必要とします。このことも、著者は日本人以上に理解しています。

最初のうちは互いに励ましあい、協力しあって子どもの遺体を探していた親たちも、やがて、遺体が見つかり葬儀をすませた親と、いつまでたっても子どもの遺体が見つからない親、そして、家族や家をすべて失った人たちと、とりあえず家は大丈夫だった人たちとの間に横たわる齟齬が次第に大きくなっていきます。

その経過を克明に淡々と語っていく筆致は見事としかいいようがありません。
情景描写の美しさも加わり、これはノンフィクションというよりもはや文学作品といってもいいのではないかと思います。

大川小学校で子どもを亡くした親たちの中で、平塚なおみさん、紫桃さよみさんという対照的な二人が何度も登場してきます。

二人とも子どもを大事に育ててきた普通の日本のお母さんたちですが、状況のちょっとした違いから次第に諍いや反目に発展していく様子も、こうした事態に限らずどこでも起こり得ることだと思いました。

鎮魂の行脚を続けてきた金田住職が、大事なのは死を受容することだと著者にいいますが、それに対して著者はこう書いています。

「私としては日本人の受容の精神にはもううんざりだった。過剰なまでの我慢にも飽き飽きしていた・・」
そしてこう続けます。

「そんな日本に今必要なのは、紫桃さん夫妻、只野さん親子、鈴木さん夫妻のような人たち(訴訟を起こした人たち)だ。怒りに満ち、批判的で、決然とした人たち・・闘う人たちだ」

あれから7年という時間が経過し、当時の出来事は風化し始めています。
だからこそ、もう一度当時を振り返り、いつなんどきまた同じ事態が起きるかわからない日本列島に住む者として、様々なことを肝に銘じたいと思いました。

(残念ながら、誤解を招きかねないタイトルと表紙ですが、この本は、幽霊譚じゃない!全然違います!)


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カメラを止めるな

2019-03-10 21:19:36 | 映画




(これは2019年1月9日の記事です)


話題になってる映画「カメラを止めるな」がamazonプライムに登場したので見てみました。

「カメラを止めるな」
以下、Wikipediaから引用します。
「監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールの《シネマプロジェクト》第7弾作品。2017年11月に先行公開。その後、国内及び海外の映画賞を数々受賞。監督・上田慎一郎にとっては初の劇場長編作品・・」

以下ネタバレで進めますので、まだ見てない人は見てから来てね。

これ、けっこう面白かった。でも、すごく面白かったかというとビミョー。

映画学校の学生たちが作った手作り感満載の映画で、最初から最後まで素人っぽいところが魅力の映画という感じかな。

面白いのは、映画の前半と後半とでストーリーが全く違うところ。

前半は、売れない映画監督がゾンビ映画を撮影しているところへ、本物のゾンビが襲ってきて、主人公の少女を除く全員がゾンビ化してしまうというストーリー。
ストーリー自体はありふれており、また、出演している人たちが素人っぽくて、いかにも映画学校の自主制作映画という雰囲気がある。

で、始まって37分が経過したところでゾンビ映画は終了し、後半はネタ晴らしになるというわけ。

映画撮影の現場で様々なハプニングが起きて、撮影がスムーズにいかなくなる、それを何とかワンカットの映画に仕上げるために、スタッフがあらゆる工夫を凝らして何とか最後まで映画を仕上げる、というドタバタコメディです。

つまり、映画の後半は映画制作の裏話的なお話。
映画ってこういう風に作るのね、というのがよくわかり、笑いも散りばめられていて、これはこれで面白い。
しかも監督の妻と娘もたまたま映画に関わることになり、この家族がなかなかユニークで楽しい。
前半で謎だった部分(演技のぎこちなさや、なぜここで急にこれが? といったナゾのストーリー展開等)が後半できっちり回収されるなど、よく計算された映画でもあります。
でも、この手の映画は他にもあって、目新しくはないです。

たとえば
「アメリ」で有名なオドレイ・トトゥ主演の「愛してる、愛してない」なんかは、後半でストーリーが逆転します。前半で描かれたことが全てひっくり返されるというのが後半の仕掛け。
そして、有名な「ユージュアル・サスペクツ」も同様で、後半の種明かしのシーンでは誰もが唖然とすることでしょう。
どんでん返し系の映画にはこうした手法を使っているものがけっこう多い気がします。

むしろ、なぜこの映画がこれほどヒットしたのか、ということの方がミステリーじゃないかしら。
本来なら、せいぜいインディーズの映画としてよく出来ているので映画ファンが秘かに見て楽しむ、といった感じの映画じゃないの?

SNSや口コミで評判が広がって流れができて、普段映画をあまり見ない人たちが映画館に押し寄せて、おお、すげえ、こんな映画があったのか!と驚く、といった現象なのかもね。

でも、これで興行成績30憶突破とかありえないでしょ。
しかも、盗作疑惑まで出てきて・・
ここまで来ると、オリジナルとは何か、著作権とは何か、というあたりに焦点が絞られることになりますが、それはまた別の機会に。

映画を作りたいと思っている人、映画大好きな人は見て損はありませんが、
とくに映画制作に興味がない人は、お金出してまで見ることはないと思います。

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人生は小説よりも奇なり

2019-03-09 17:08:22 | 映画


amazonプライムで見つけた素敵な映画を紹介します。

「人生は小説よりも奇なり」(アイラ・サックス監督 2014年)

これ、ゲイの老カップルの話です。
同じ世代の人たちには身につまされること必至。

かくいう私も、白内障の手術の後、全く見えなかった右眼の視力も少しずつ回復してきていますが、まだ活字は読めません。
PCだと拡大できるので片目でも何とか見えるのでありがたい。
最近のテクノロジーはすごいね。

視力を奪われることがどれほどしんどいか身をもって知りました。
ま、これも人生経験の一つ。
得難い経験ではあるけれど、まだ見たいもの読みたい本がたくさんあるので、何とか回復する道をさぐろうと思っています。

ともあれ、歳を取るといろんなことが起きてきます。
でも、愛する人がそばにいてくれればどんな困難も乗り越えることができるはず。
(残念ながら私にはおらんが)

39年も一緒にいたゲイの老カップルが結婚式をあげた直後に、ゲイであることを理由に職場と家を追われます。
二人は別れ別れになって知人宅に身を寄せることになりますが、それぞれの家族と共存することが難しい。
受け入れる家族の側にも葛藤があります。

老境に入った二人が遠慮しながら別々の知人宅に居候させてもらうのはどんなに肩身が狭いだろう。
時おり逃げ出して相手のところに駆け込み、抱き合って泣いたりします。

以前書いたアン・リー監督作品「推手」と少し似てますね。
ここでは異文化というより、同じアメリカ人の中でも、よく知らない家族との同居はやはり難しい。そして、そうであるからこそ、互いに相手を思いやり愛情を深めていく様子が描かれます。

これね、とても地味な映画なのですが、しみじみといいのです!
大上段に差別を訴えることなく、すべてが静かに進行し、心に響きます。

ゲイだからではなく「愛」というのは人類共通の優れた資質なのだということがよくわかります。

原題は「Love is strange」(愛って奇妙なもの)
日本のタイトルはひどすぎる。

二人の老カップルがいいのよ。
一人は音楽教師、もう一人は絵描き。
二人とも静かで穏やかで、決して人を責めたり声を荒げたりすることなく、困難を受け入れます。

背景に流れるショパンのピアノ曲を初めクラシック音楽がいい。
そして、NYの風景がまたいい。NYってなんだか雑然として汚いイメージだったのですが、こんなに美しい通りや住宅街もあったのですね。
ますますNYに行ってみたくなりました。

最後のシーンもいい、思いがけないことが起きて別れを告げることになるのですが、泣けます。老境にさしかかったすべての人(予備軍も含め)必見の映画です!
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