竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

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★グリム童話ミニ講義5★初版では白雪姫は継母でなく実母に殺されかけたってホント?

2012年03月26日 | 日記
ホントなんです。グリム童話初版では白雪姫はなんと実母に殺されかけたんです。

みなさんがよくご存じの「白雪姫」(第2版以降)では、

継母が「鏡よ、鏡。この国で一番美しいのはだれ?」と尋ねると、
鏡は「お妃さま、あなたはここではなるほどいちばん美しい。
でも、白雪姫は、あなたより千倍も美しい」と答えたので、
継母は、狩人に命じて、白雪姫を森に連れ出し、殺して、その証拠に
肺と肝臓を持って返るように言っていますよね。

ところが、初版では実母になっているのです。
実母でさえ娘の美しさに嫉妬をして、殺そうとするなんて、
白雪姫はどんなに美しかったのでしょうか?


ルードヴィッヒ・リヒターの挿絵より

「7歳になると、白雪姫は明るい昼ひなかのように美しくなりました。」(第2版以降)と
あります。

グリムさんは、「蛙の王さま」でも、「お姫さまはお日さまのように美しい」と言っています。

どんな容姿をしていたかは述べません。きっと輝くほどの美しさだったのでしょうね。

グリムさんは、美しさの中味は、述べないので
かえって読者はいろいろ想像の翼をひろげ、理想的な美しさを思い描くでしょうね。
グリムさんってさすが知恵ものですね。

実母が娘の美しさを妬んで、殺そうとするのは、さすが問題だと思ったのか
第2版以降では継母に変更されています。

ところで、なぜ初版では実母になっているのでしょうか?
心理学的によく考えてみるなら、ある面で実母であることの意味が納得できるのです。
どうゆうことか説明しましょう!

母親は、娘がお年頃になると、自分の若いときとそっくりに美しくなっているのにハットする。
夫が娘をみる目にもなにか熱いものを感じる。ひょっとして夫と娘の間でなにか過ちをおこさないだろうか?
そんな不安がよぎる。そこで母親は、あえて娘を夫から遠ざけるため、森に娘を捨てる決断をする。

まあ、そんな心理学的な解釈からみると、実母が娘を森に捨てようとするのも、あながちわからないわけでもない。

1997年に白水社から『初版グリム童話』が出て、「白雪姫は実母に殺されかけた」と
一般に知られるようになった頃、タイミングよく1998年に
桐生操の『本当は恐ろしいグリム童話』が出て、ベストセラーになったのです。

このグリム童話のパロディーでは、白雪姫は母親の心配した通り、父親と密通してしまう筋書きに
なっています。その頃は高校生の援助交際が話題になり、時代の気分とマッチして
グリム童話のパロディー物が流行し、それがグリム童話と誤解され、
私などはとても憤慨したものでした。

今日の★グリム童話ミニ講座★は少し脱線してしまいました。次回こそお楽しみに!