金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

プロポーズ小作戦4

2009-03-22 11:53:23 | コードギアス
プロポーズ小作戦4

神楽耶の依頼は簡単だった。天子様をお慰めして楽しませてあげてほしい。
さっそく天子に会いに行くと、なにやら書類を抱えて難しい顔をしている。
まだ、本当に重要な用件や急を要する仕事はしていないが、政務になれるために少しずつ政策に携わっている。
以前ならこの時間帯には星刻が来て、書類の書き方から内容の説明まであの涼やかな声で語ってくれたのだが、もう1ヶ月もそれすら無い。天子は書類を抱きしめて右に見て左に見て、うーんと唸っている。
理解できないのだ。内容的にはそんなに難しくないが過去のデータを持っていない天子には判断基準がない。とうとう書類を裏返してすかして見始める。そのまじめな顔と行動のかわいらしさにジノは噴出した。
いきなり振ってきた明るい笑い声に天子はびっくりして書類を落っことした。
「ふゃ-」
子猫みたいな声を出してパチパチ瞬きする。
落っこちてきた書類をジノは受け止めた。
「やぁ、久しぶりだね。姫天子ちゃん」
黒の騎士団時代に覚えた愛称で呼びかける。
「三つ編みのお兄ちゃん」
天子の声がぴょんと飛び上がった。


プロポーズ小作戦3

2009-03-22 11:16:52 | コードギアス
プロポーズ小作戦3

公平に見て、神楽耶の目からも星刻はいい男だ。
100人1000人10000人の女がそれを認めるだろう。
運動機能は死んだ従弟のスザクと並び、頭脳は亡き夫2代目のゼロに匹敵する。
その上にあの涼やかな瞳、戦闘時の苛烈さをかけらも見せぬ穏やかな心遣い。
女ならあの男をいっときでも横に置けるなら、全てを捨ててもいいという気持ちを起こさせる。
それでいて、星刻は女に何も捨てさせない。ただ、捧げるのみだ。愛を保護を権力を安全を、星刻はただ一人の女に捧げる。
女としてこれほどの相手が他に望めようか。
しかし、その男ゆえに天子は泣く。その男を横に置けないたった一人の女。主従の鎖が彼女を縛る。しかもその鎖を天子にかけるのは、全てを捧げてくれる当の男。
天子は男のかけた鎖につながれて、男の横に立つことはできない。
それなら、男が動くべきと神楽耶は「目的 プロポーズ」と入力した。


ジノは世界中をふらふら飛び回っているが、捕まえるのは簡単である。1日おきぐらいに元同僚のアーニャにたくさんの写真や動画付のメールを送る。それをアーニャがアップする。あっという間に探検家ジノのファンが増え、いまやアクセスランキング上位である。そのブログを見た読者から、次はうちの街へ国へ来ませんかとコールがかかる。なにしろジノはあの悪逆皇帝の走狗、裏切りの代名詞スザクをカレンとともに倒した英雄である。あの目立つ容姿と明るさも併せてどこに行っても人気者だ。
英雄、平和の聖騎士、人気者、そういう言葉をジノは貴族の鷹揚と若さ明るさで受け止めている。
ゼロ・レクイエムの真実と仮面の真実を知る彼が心底楽しんでいるのか、あるいは道化に徹し世界に明るさを振りまく事が自分の役と思っているのか、神楽耶は呼び出したジノに答えを求めなかった。


「天子様の護衛?」
アーニャのブログを介して呼ばれたジノは、ずらりと並べられた中華の美味珍味を猛烈な勢いで平らげている。なにせ、数時間前までアフリカの奥地にいて、ろくなものを食べていない。
「いいけど、あれがいるだろ」
あれが何か問うまでもない。
「そのあれが天子様を泣かしておりますの」
「お、ようやくかぁ」
ジノは料理の飾りである朱雀にかぶりつく。
繊細なレースのように作られた鳥は、たちまちジノの腹に消えた。
「お好きですね、朱雀が。前にお会いしたときもお一人で食べていましたね」
それにジノは返答しない。口の中がデザートの菓子でいっぱいだったからだ。