金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

両王手16

2009-03-05 09:44:26 | コードギアス
両王手16
実のところもう書くことはあまり無い。

正式の調印式の間には各国代表とそして英雄ゼロがいる。侵略皇帝シャルルを打ち倒し世界を平和にした英雄。
その英雄はこの部屋に入ってから一言も話さない。まったく動かない。
まるで人形のようだった。ドイツ領の代表は個人の手記にそう書いている。

かろうじて音声だけがつながった通信に天子が叫ぶ。
「しんくー帰ってきて!」
神虎と同じ高度まで登れる機体は存在しない。
途中まででも自力で降りてもらうしかない。途中もはや完全にエナジーが尽きたのか、神虎の動きが降下から落下に変わる。すかさずせいいっぱいの高度まで登っていた藤堂機と千葉機が支える。
予測どおり、星刻は半ば凍死しかけていた。すぐさまブリタニアが誇る医療チームが総動員された。治療の過程で星刻の命を食いつぶしていた病巣が発見された。
新生ブリタニア王国は国の威信をかけて、全力で治療にあたった。それでもブリタニアの医療だけでは足りない部分があり、王命のもとEUや独立日本の技術者も呼び出された。
期せずして、星刻の治療は世界が戦い以外にできることがある、協力したら不可能も可能になると伝えた。

1年後、中華に戻った星刻は望まない間に世界の協力と融和の象徴になっていた。
「私は軍人なのだが」
平和の象徴などと呼ばれて、とまどう星刻に洪古が豪快に答える。
「お前の軍籍は1年前に天子様の勅令で消されているぞ」
星刻がいない一年の間に、すっかり君主らしく立派に同時にきれいになった天子が星刻を迎える。
「無理は駄目よ。ゆっくり休んでね」
微笑みとともに渡された天子の言葉に、(もう私は必要ない)と星刻が鬱になったり、あいまいだった国境線の線引きで小規模な戦いがあったりもしたが、ともかくも世界は明日に向けてよたつきながらも歩き始めた。