【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

読んで字の如し〈門ー8〉「閑」

2013-07-23 06:54:45 | Weblog

「閑却する」……閑を却下する
「安閑」……安い閑
「忙中閑あり」……その気になれば見つけられる
「小人閑居して不善を為す」……忙しい大人は善を為す、とは限らない
「等閑事」……平等に閑なこと
「閑古鳥」……古くから閑な鳥
「有閑マダム」……バーが閑
「閑職」……天下りの高給取りのお偉いさん

【ただいま読書中】『錯覚の科学』クリストファー・チャブリス、ダニエル・シモンズ 著、 木村博江 訳、 文藝春秋、2011年、1571円(税別)

 有名な「バスケットボールとゴリラ」実験(「selective attention test - YouTube」)を行った人たちが書いた本です。
 「目を向けている」ことと「見ている」ことは同じではない、つまり「目撃者が現場に目を向けている」状況でも何か大切なものを平気で見落とすことがある、という事実の指摘から本書は始まります。
 特に人が見落とすのは「予想していないもの」です。「ゴリラ」もそうですが、実話として「潜望鏡の中のえひめ丸」「滑走路の中にいる別の飛行機」「交差点でのオートバイ」などが例としてあげられています。視覚だけではなくて聴覚での実験もあります。非常に有名な名バイオリニストに協力を仰いで、ワシントンの地下鉄駅で大道芸人の真似をしてもらったのですが、群衆は見事に彼のことを無視したのです(となると、ストリートで名を上げるアマチュア・ミュージシャンはとんでもない腕、ということになるのでしょうか)。
 記憶力にも限界があります。たとえば短期記憶は大体7つのものを覚えたらパンクします。では長期記憶に取り込めたらOKかと言えばそう簡単には安心できません。人は「正しく記憶すること」はできないし、たとえ「正しく記憶」したとしてもそれが変容することがいくらでもあるのです。
 「自己評価の錯覚」にはぎょっとします。人は大体自分のことを過大評価しがちなのでですが、ランクが上の人はそこそこの過大評価なのに対して、ランクが下の人は過剰に過大評価をする傾向があったのです。さらに、そういった自信過剰の人は「自信たっぷりの態度」を取ります。すると他人はその「態度」からその人を信用してしまうことがあるのです。(ついでですが、自信がない態度を取る割合が多いのは、能力がある人のグループです。おそらく自分の能力の限界が見えるからでしょう)
 「知識の錯覚」もあります。「自分が知っている」という「自信」から「無知の知」を失ってしまって犯すミスは、専門家には多く見られるのです。
 「予防接種で自閉症になる」「モーツアルトを聴かせると頭が良くなる」「サブリミナル効果」といった“迷信”についても、明確に分析されています。それにしても、人は直感的に「錯覚」に頼り、迷信を信じ、一度信じるとそこから抜け出せにくくなることが、よ~くわかります。ちょっと憮然としたくなる気分ですが。
 著者が使う武器は「科学的思考(論理)」「証拠(実証実験、統計とメタ解析)」です。私にはなじみがあるものですが、残念ながら世間一般にはあまり人気がない方法のようです。だけど、たとえば自分の能力を開発したかったら、「ちょっとモーツアルトを聴く」程度のあまりにお手軽すぎる手段は無意味だ、とは言えるでしょう。本書には「彼ら(チェスのグランドマスター)は音楽を聴き自己啓発本を読んでチェスのグランドマスターになったわけではない。集中した学習と訓練を少なくとも十年続けて、それをなしとげた。脳の可能性は巨大であり、あなたはそれを開発することができるが、実現には時間と努力が必要なのだ」と“苦い”真実が書いてあります。これはたとえば「自分探し」だけではなくて「ダイエット」などにも同じことが言えるのでしょうね。



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