官邸上空をドローンに侵入されないためには「規制する」と言うだけではダメで、何らかの実効的な手段が必要です。対空砲火は剣呑ですから、操縦の妨害電波という手もありますが、これは自律的なドローンには効かないでしょうし……
そうそう、ドローンを使って大量殺戮をするテロを一つ思いついてしまったのですが、あまりに容易で現実的なので誰にも言わないことにします。
ところで、基地周辺の人たちは「ドローンを規制するのなら、オスプレイも規制してくれ」と言いたかったりして。
【ただいま読書中】『中間層消滅』駒村康平 著、 角川新書、2015年、820円(税別)
イギリスの囲い込み運動で農地から追われた貧困農民は、都会(主にロンドン)に流入しましたが、産業革命前のロンドンにはそれを受け入れる工場などありません。結果は浮浪者の増加です。「浮浪者取締法」ではすべてに対応することは困難でした。そこで17世紀に「エリザベス救貧法」が施行されました。「福祉」ではなくて、浮浪者を取り締まって強制労働をさせる社会的な施策です。フランスでは貧困と重税にあえぐ民衆の怒りが爆発してフランス革命が起きました。その“恐怖”が国内に侵入することを恐れたイギリス政府は、救貧法の規制緩和を行いました。そこには社会福祉の萌芽が見えます。しかしナポレオン戦争が終わり情勢が落ちつくとまた厳しい救貧法を求める声が高まります(現在の日本の「生活保護批判」とそっくりの主張が並んでいます)。施行された新救貧法がどのようなものだったかは『オリバー・ツイスト』にしっかり描かれています。
最近の「日本の変化」は、日本だけの変化ではありません。グローバル化が日本の社会経済システムに影響して企業のガバナンス(金融システム)を変化させ、日本型雇用慣行(雇用システム)に影響を与えた、と考えることができます。グローバル化によって国内の労働者は海外の賃金の安い労働者との競争にさらされます。さらに日本型雇用慣行(終身雇用制)の破壊によって日本の労働環境は一挙に劣悪になりました。そうそう、ここで著者は「少子化対策を本当にしたいのなら、非正規雇用でも家庭が持てる給与」を提案しています。なるほど、一理あります。というか、理の当然ですね。だけどそれでは(人件費の節約のために)せっかく終身雇用を破壊した意味が失われてしまいます。だから著者の提案は絶対に採用されないでしょう。その結果は、職場の疲弊、生産性の低下、離職率の上昇、です。
「ジニ係数」「プレストン効果」などどこかで聞いたことのある言葉が次々登場します。そして浮かび上がるのが「運」「不運」の問題。どのような国、どのような家に生まれたか、によってその人の人生は大きく左右されてしまうのです。しかし、手厚い社会制度(福祉、教育、医療など)で、どのような家に生まれようと“チャンス”の平等を保証するためには、コストがずいぶんかかります。「小さな政府」「市場原理」を信奉する人には嫌われるやり方です。
そして「2025年問題」。団塊の世代が全員75歳に到達する年です。政府は「家庭で介護を」と方針を立てています。それに従うと「離職して親の介護に専念(生活費は親の年金)」という人が発生する恐れがあります、というか、すでにこれは現実となっています。限界集落の問題もあります。今さら「一億総中流」の社会には戻れません。ではどうするのか。このまま手をこまぬいて“自然”に任せるか、それとも格差を少しでも小さくするように何か施策を始めるのか……少なくとも「金持ちをもっと金持ちにしたら、その内に“下”にも分けてもらえるようになる」と期待している場合ではない、と私は思います。「簡単には他人に分けない」からこそ金持ちは金持ちになったのですから。