【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

春の気配

2015-03-29 07:13:03 | Weblog

 三寒四温という感じで、温度の上下動がはっきりわかるようになりました。
 私の通勤路に並んでいる桜の枝が、少しずつ桜色を帯びて膨らみ始めました。もうすぐ目に見える春が始まります。

【ただいま読書中】『消えた神の顔』光龍 著、 ハヤカワ文庫JA115、1979年、380円

目次「アトランティスは、いま」「飛加藤を斬れ!」「二十年前、新宿で」「ボレロ一九九一」「それでは次の問題」「錆びた雨」「人は情けによって死ぬ」「それは元禄十五年か、それとも十六年か」「同業者」「天の空舟忌期」「不良品」「乗客」「いまひとたびの」「私のUFO」「消えた神の顔」

 本書の発行は昭和五十四年。たしかに昭和の香りがぷんぷんとする作品が並んでいます。でも、今読んでも楽しめますけれど。
 冷戦の影響でしょう、ちょっと陰鬱で滅亡の雰囲気がたちこめた作品が目につきます。「錆びた雨」など、公害によって滅びようとする社会での高校生の凄惨な生活を描いたものですが、こんな作品が学習雑誌(「高二時代」か「高二コース」のどちらかで読んだ記憶があります)に掲載されたのですから、書いた方も載せた方も度胸があったと思えます。
 本書は、アトランティスの戦いで始まり、エレサレムの戦いで幕を閉じます。「歴史」と「SF」の融合という試みに初めて出会ったとき、私は興奮しましたが、現在でもそういった作品は楽しめます。そもそも「歴史」そのものが「イフの物語」として読めるものだと思っていますから。

 本書の巻末のJA文庫出版リストを見ると、懐かしい名前が並んでいます。三冊以上の著者に限定したら……石原藤夫・今日泊亜蘭・栗本薫・小松左京・田中光二・筒井康隆・豊田有恒・半村良・平井和正・福島正実・藤本泉・星新一・眉村卓・光龍・山田正紀…… 懐かしさに私は溺れてしまいそうです。