【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

オー・マイ

2014-08-14 07:08:13 | Weblog

 ゴジラはゴリラとクジラから名前が作られた、という話ですが、ハリウッドのガッジーラGodzillaは頭に「god」が入っています。いつの間にそこまで“出世”しました?

【ただいま読書中】『新幹線を航空機に変えた男たち ──超高速化50年の奇跡』前間孝則 著、 さくら舎、2014年、1600円(税別)

 0系新幹線が初めて「夢の超特急」として登場したとき、あの先端部分は「流線型」ともてはやされました。しかしその後JRから様々な“スマートな”新幹線が登場すると、0系は「団子鼻」と呼ばれるようになります。人の感覚というのは面白いものです。
 新幹線の速度が上がると、トンネル突入時に(飛行機が超音速で発生させるような)“衝撃波”(トンネル微気圧波)が生じることがわかりました。また、リニア新幹線は“飛ばない飛行機”のようなものです。そこで大学や三菱重工の航空機部門やJAXAがJRと関係するようになりました。
 もともと0系新幹線のデザインも、飛行機を強く意識していました。「鉄道は斜陽」と言われ、さらにプロペラ機からジェット化される時代に「飛行機に負けるものか」という思いがその形やカラーリングに込められていたのです。ただしそれは「イメージ」の世界のものでした。しかし速度が上がると「航空機の問題」がそのまま新幹線に降りてきたのです。
 そうそう、本当に飛行機を地上すれすれに走らせる「エアロトレイン」という構想も本書には紹介されています。プロペラ機をリニアのように地上すれすれに持ち上げて、地上効果で高速走行させよう、というもので、真剣に開発中だそうです。飛行機と鉄道の間の“垣根”は、私たちが思うよりも低いのかもしれません。
 新幹線には「先頭と最後尾が同じ形」という特殊性があります。つまり、先頭では空気をきれいに切り裂き、途中で生じた乱流を最後尾はきれいに流していかなければならないのです。だから500系の先頭形状は飛行機の最後尾の形にそっくりになっています。さらに言うと、先頭の形状はカワセミのくちばし、空気抵抗を減らすためのパンタグラフの形状にはフクロウの羽の形が応用されているそうです。
 新しい新幹線の開発には、コンピューターシミュレーション、本格的な風洞実験、三次元CAD・CAMなどもどんどん取り入れられました。
 航空技術の鉄道への取り入れは、欧米ではずいぶん早くから行われていました。たとえば1931年には航空機用レシプロエンジンとプロペラを採用した「シーネツェッペリン」が最高速度230kmをたたき出しています。形状は当然流線型でした。当時日本にも「弾丸列車計画」がありましたが、有名な話だし航空機とは無関係なのでここでは省略。
 新幹線という「システム」は、あくまで日本の国土に適したシステムです。それをそのまま外国に輸出しても「良いもの」にはなりません。ただ、鉄道屋がまったく異質の発想をする飛行機屋と組んで素晴らしいデザインとシステムを生み出すことができたように、異国の発想も柔軟に取り入れることができたら「シンカンセン」が世界を席巻する可能性はある、と私は思っています。