【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

次の大言は?

2014-03-24 07:07:57 | Weblog

 「最低でも県外」
 「コンクリートから人」
 「汚染水はコントロールされている」

【ただいま読書中】『星界の戦旗III ──家族の食卓』森岡浩之 著、 早川書房、2001年、560円(税別)

 ジントは自分の“領地”ハイド星系に帰還しました。なぜかラフィールも休暇を取って同行しています。しかし帝国に征服された直後に人類統合体に占領されたハイド星系は、帝国に帰属することに抵抗していました。
 アーヴでは新しい艦種「襲撃艦(重突撃艦のような軽巡察艦のようなもの)」が採用されます。この襲撃艦で編成されるのが「蹂躙戦隊」。なんとも素敵なお名前です。
 自分の領地に上陸できないジントは、第二の故郷デルクトゥーに向かいます。目的は後宮建設、じゃなくて、家臣募集。
 蹂躙戦隊は演習航海に出発します。目的地は、ハイド星系。訓練と同時に帝国には反乱の芽を摘もうという狙いがあるようです。
 そして、ジントとラフィールの宇宙船が、ジントの故郷である惑星マーティンから攻撃を受けます。
 まったく、どうしてジントとラフィールが行く先々で、常に戦雲が立ちこめるのでしょう?
 本書では、ジントが「自分の故郷」を(宇宙から)客観的に理解していく過程も描かれます。それは、ジント個人の成長の記録でもあります。そして、地上世界を知らないラフィールにとっては、ジントを「モニター」として未知の世界を覗き学ぶ過程でもありました。青年たちは、成長しています。しかしそれは“苦い経験”でもありました。これまでの「危機」は、二人にとっては「自分たちの生命の危機」であり、「自分たちの乗務する艦の危機」でした。しかし今回は「星一つの住民全部の生命の危機」なのです。それを背負うことは、個人にとってはあまりに重すぎます。しかし、二人はその重さから逃げようとはしません。ラフィールが逃げないのは、アーヴという種族の特性と自分が皇族であるゆえ、と言えそうですが、ジントはなぜ逃げないのでしょうか。おそらくラフィールを自分の“鏡”としてそこにうつる自分の姿を見ているからでしょう。『星界の戰旗I~II』では文体が軽やか(というか、軽口だらけ)でしたが、本書では文体が“成長”しているように感じられます。主人公たちと一緒に、著者も変容しているのかもしれません。人間だったら当然のこと、かもしれませんが。