【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

大自然

2014-03-22 07:11:45 | Weblog

 小自然は、どこ?

【ただいま読書中】『コールドチェーン』森隆行・石田信博・横見宗樹 著、 晃洋書房、2013年、2200円(税別)

 小学生の時だったかな、「マグロの冷凍技術が進歩して、冷凍中に魚肉が“焼けて”しまう現象が解決した」というのがでかでかと新聞に載っていたのを私は覚えています。マグロは家庭ではおなじみではなかったので「そんなもんか」と思っただけでした。もっと身近にクール宅急便が登場したときには吃驚しましたが、今ではそれがあるのが当たり前、という状況に慣れてしまいました。ところで「低温輸送」のサプライチェーンを「コールドチェーン」と言うのですが、食品以外にも様々なもの(医薬品・化学品・電子部品(特に熱に弱いもの)・生花など)がそのチェーンを利用しているのだそうです。文明はどんどん進歩しています。
 「コールドチェーン」は、生産者から消費者まで、所定の低温で流通させる仕組みです。特に食品でこのチェーンを自ら構築しているのは、スーパーマーケット・食品メーカー・加工貿易型企業・卸売企業・物流企業…… もちろん既存のチェーンを利用する“ユーザー”も多種多様です。
 外食産業ではセントラルキッチンが多く採用されていますが、これもコールドチェーンを利用することで成立しています。その先駆者は「ロイヤル」です。1952年にロイヤルベーカリーを創業した江頭は62年に傘下のレストランに冷凍した料理配送を始めました。これがセントラルキッチンの始まりだそうです。それが一挙に普及するきっかけとなったのが70年の大阪万博。江頭は米国ゾーンに出店したレストランに福岡から冷凍食品を配送しました。現在の学校給食も、セントラルキッチンとコールドチェーンがなければ成立しません。
 ちなみに、冷凍食品が日本で普及するようになったのは、東京オリンピックが契機だそうです。選手村の食事に冷凍食品が多用され、それが好評だったことからオイルショックまで毎年30%以上の成長を続けたそうです。
 コールドチェーンは海外にも伸びています。その一例として本書では、タイからの鶏肉輸送が紹介されています。しかしタイから年間20万トンも鶏肉を輸入していたとは知りませんでした(鳥インフルエンザ騒動で生肉は輸入禁止となっていて、加熱したものだけタイからは輸入されているそうです。でも……鶏肉からインフルエンザがうつるんでしたっけ?)。
 コールドチェーンでの最近の流行語は「トレーサビリティ」だそうです。消費者が「自分はどこの何を食っているのか」が追跡可能になること。また、環境問題への取り組みも重要です。ゴミの発生や輸送段階でのCO2発生をいかに抑えるか。新しい動きとしては、個配やネットスーパーの拡大があります。おそらくこれからは、買い物難民の動向がコールドチェーンにも影響を与えることになるでしょう。こうなると、各企業がばらばらに対応するよりも、地域ごとにまとめてでかい冷蔵倉庫や冷凍倉庫を建てて、それを共同利用する方が効率的になるんじゃないでしょうか。消費者としては「誰が配達するか」よりも「何がどのような状態で配達されるか」の方が重要なのですから。