【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

万食

2014-03-19 08:35:50 | Weblog

 1年で私は千食ちょっとを食べています。すると10年で一万食ちょっと。
 さて、私はあと何万食食べることができるのかな?

【ただいま読書中】『万の文反古』井原西鶴 著、 東明雅 校注、明治書院、1968年(91年9刷)、1068円(税別)

 タイトルは「よろづのふみほうぐ」と読みます。元禄時代の浮世草子です。捨てられた文(手紙)の反古を集めて見ました、という体裁で描かれた、浮き世を立体的に描写する手法の本です。手紙の後に著者のわざとピントをずらしたような短い解題が添えられて、ふんわりとした味付けとなっています。
 最初は「世帯の大事は正月仕舞」。なんだかちまちまとした銭勘定の話が出てきて、商家の内証は大変なんだな、と思わされます。ところが次の手紙「栄花の引込所」では、百両単位というとんでもない大散財をする若旦那に我慢ならない手代たちが「鎌倉の隠居所に引っ込んでおとなしくしていろ」という異見の手紙です。こんな手紙が反古になっているということは、若旦那は読んでくしゃくしゃっと捨てた、という設定なんですかね。ちまちまの手紙の後にこんなスケールのでかい大散財の手紙を持ってくるとは、著者は楽しんでいます。
 その次は、長々と書いてありますが結局兄に銀十匁(か銭壱貫)の無心をするお手紙です。なんだか哀れを催し可哀想になってくる文面です。
 敵討ちを狙う武家や僧の書状も混じっていますが、基本的に本書に登場するのは「町人の手紙」です。様々な生活模様がうかがえて退屈しませんが、江戸時代の読者はどんな読み方(楽しみ方)をしていたのでしょう。そちらを想像するのもまた楽しいものです。ちなみに、私がなぜ本書を読む気になったのかは……忘れました。たぶん図書館の検索でひっかけたはずですが、どんなキーワードを使ったのやら謎です。